キサンタンガムとは~基礎から徹底解説

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キサンタンガムは、食品のドレッシングやソースのとろみ付けに使われる増粘剤の一つ。ウェランガムやジェランガムなどと同様に天然発酵によって作られる多糖類「バイオガム」のひとつです。その中でも最も一般的に利用されている多糖類です。

キサンタンガムは、多様な食品に使われる多糖類で、主に冷凍食品やカスタードクリームなどに使用されています。
また、食品の他に化粧品にも活用されおり、クレンジングジェルや、保湿化粧水、乳液、といった化粧品に粘度を出す目的でも活用されています。
今回は食品用途を中心に、キサンタンガムとはどのようなものなのか、特性や他の多糖類との相乗効果について解説します。

キサンタンガムとは

キサンタンガムとは、微生物(Xanthomonas campestris/キサントモナス キャンペストリス)から生産される増粘多糖類です。
ウェランガムやジェランガムなどと同様に天然発酵によって作られる多糖類「バイオガム」のひとつです。その中でも最も一般的に利用されている多糖類です。


キサンタンガムは、とろみをつける目的で使用され、片栗粉の代用として使われることもあります。
例えば、煮物の汁にとろみをつけてあん状にする際、片栗粉を使用すると、熱や時間等の条件によってだれやすくなってしまいます。
そこで、片栗粉の代用としてキサンタンガムなどの増粘多糖類を使うことで、とろみを持続させることができます。
このようにキサンタンガムは、耐熱性が高く、さらに冷凍解凍にも耐性があるため、幅広い場面で活用されている素材です。

グルコースの主鎖にマンノース、グルクロン酸からなる側鎖がついた構造を持っています。主鎖が短く、側鎖が長いのがキサンタンガムの特徴で、この構造であることが安定につながっています。左に構造を示しました。(Zlatica K. et al., Application of hydrocolloids as baking improvers, 2008. クリックして拡大)

キサンタンガムの製造は、キサントモナス キャンペストリスの種菌から発酵させた後、回収し、精製、乾燥、粉砕して行われます。

【調味料・調理食品向け】

キサンタンガムの特徴と
基礎知識
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キサンタンガムの特徴

キサンタンガムは、主な用途として増粘目的とゲル化目的の2種類があります。

増粘目的では、キサンタンガム単体として使われ、ドレッシングやソースのとろみ付けに利用されます。

ゲル化剤目的では、ローカストビーンガムと併用することでゲルを形成する性質を利用します。つまり、キサンタンガムは単独の使用だけでなく、他の素材と組み合わせることで、多くの食品に利用することができます。例えば冷凍食品、カスタードクリームなどで利用されています。

特性

・冷水可溶
キサンタンガムは、温水はもちろん、冷水にも可溶の特性を持ちます。

 ・粘度が高い
キサンタンガムは、少ない添加量で高い粘度をもつことが特徴です。低濃度、低シェア(回転数)では他の多糖類と比べて高粘度です。後述の通り擬塑性流動であるため大きなシェアがかかると粘度は大きく低下する傾向にあります。


・耐熱性・耐酸性・耐塩性・冷凍解凍耐性
キサンタンガムは、耐熱性・耐酸性・耐塩性・冷凍解凍耐性があり、さまざまな条件に対応できる性質を持っています。

 ・擬塑性流動(シェードプラスチック性)
キサンタンガム溶液は、擬塑性流動という流動性を持ちます。擬塑性流動とは、力を加えると粘度が低くなり、力を加えないで置いておいた状態では粘度が高くなる性質のことをいいます。ドレッシングやソースなどで使用する際は粘度が低くなるため、流れやすいので使いやすくなります。一方、静置しておくと保形性、安定性が得られます。例えば、「容器を振ってサラダにかける際には流れやすくなり、サラダにかかった後は流れず野菜にまとわりつく」のような場面で利用されています。

キサンタンガムの相乗効果

キサンタンガムは、グァーガムローカストビーンガムなどの多糖類と併用することで、相乗効果が得られます。それぞれの相乗効果を詳しく解説します。

グァーガムとの相乗効果

このグラフは、キサンタンガムとグァーガムとの総添加量を0.5%として、それぞれの混合比率を変えて調製した溶液の粘度変化を表しています。縦軸が粘度、横軸がグァーガムとキサンタンガムの混合比率です。

キサンタンガムとグァーガムは、「28」の割合の溶液で最大の粘度を示すことがわかります。ゲル形成はしないものの、粘度が大幅に上昇します。

つまり、それぞれ単品で使用するよりも、併用したほうが、飛躍的に高い粘度が得られる、つまり相乗効果が得られます。このグァーガムとキサンタンガムの組み合わせは、非常によく使われる組み合わせです。

ローカストビーンガムとの相乗効果

このグラフは、ローカストビーンガムとキサンタンガムの配合割合と、ゲル強度との関係を示したものです。どちらも単体ではゲル化しませんが、2つを併用する必要があります。そうすることで相乗効果によりゲル化します。

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キサンタンガムの溶かし方・活用例

キサンタンガムは加熱不要で溶解する多糖類ですが、非常に水和しやすい分ダマになりやすいです。以下に、溶かし方のコツを3点紹介しますので、参考にご覧ください。
一度ダマになると溶かすのが困難ですので、溶解時はダマの発生を避けることが重要になります。一般的な溶かし方として、①ハイスピードミキサーなどの高速撹拌機を用いる②砂糖など他の粉末原料とよく混ぜ合わせてから溶かす③アルコールや油に分散させてから溶かすといった方法が用いられます。
また、キサンタンガムにも粒子径や大きいものや顆粒タイプなどダマになりにくいものがありますので条件に応じて使い分けるのが良いでしょう。添加量は求める物性や配合レシピによって異なりますが、0.01-0.2%程度となります。

主な活用例は以下の通りです。

使用用途例、効果
ドレッシング 増粘、乳化安定、固形物や油液の分散
タレ、ソース 増粘、照りツヤ改善、分離防止、固形物分散、食感改良
佃煮類 照りツヤ改善、ダレ防止、離水防止
漬物類 離水防止、乾燥防止、増粘
レトルト食品 増粘、固形物や油脂の分散
冷凍食品 冷凍解凍耐性の向上、増粘、離水防止
インスタント食品 増粘
スープ 増粘、油脂の分散
飲料 増粘、固形物分散、濃厚感付与
ゼリー 離水防止、弾力向上
ホイップクリーム 離水防止、乾燥防止、保形性改善
バタークリーム 保水性向上、乳化安定、ヘラ切れ向上
フラワーペースト 保水性向上、ヘラ切れ向上、デンプンの老化抑制
フィリング 離水防止、ダレ防止、照りツヤ改善
パン、スポンジケーキ 老化防止、保水性向上、食感改良

キサンタンガム豆知識

キサンタンガムは、食品だけではなく化粧品にも活用されます。
粘度を出したい化粧品などに使われており、クレンジングジェルや、保湿化粧水、乳液、美容液、日焼け止めなど様々な商品で活用されています。
また、キサンタンガムは糖から出来ているため、石油系の素材よりも肌に優しい増粘剤と位置付けられています。

まとめ

キサンタンガムは、安定剤・増粘剤として万能的な働きがあることからさまざまな食品に利用されています。また他の多糖類との相乗効果は食感の創造だけでなくコスト削減としても優秀な機能です。食品開発のヒントとしてぜひお役立てください。

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調味料業界の方必見!

調味料・調理食品向け
キサンタンガムの基礎知識

キサンタンガムがドレッシングやソースなどの調味料に
増粘目的で使用されることはご存じかと思います。

しかし、キサンタンガムは塩の影響を受けやすく、
他の素材と組み合わさることでの
相乗効果が大きいという特徴があり、
粘度をコントロールするためには、
その特性を理解する必要があります。

本資料では調味料開発をするなら知っておきたい
キサンタンガムの基礎知識をまとめて
ご紹介していますので、是非ご覧ください。

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