アルギン酸は多糖類の一種で、コンブやワカメなどの褐藻類に含まれています。ハイドロコロイドとして、さまざまな食品や医薬品、化粧品、繊維加工などに活用されています。アルギン酸やアルギン酸類の基礎から食品への応用例までご説明します。
目次
アルギン酸とは、コンブやワカメなどの褐藻類に含まれる多糖類です。褐藻類の細胞間にゼリーの形状で存在しています。これを工業的に抽出し、精製することで製造されています。
アルギン酸の構造はβ-D-マンヌロン酸とα-L-グルロン酸の2種類のウロン酸が直鎖状に重合した高分子多糖類です。分岐する側鎖を持ちません。
アルギン酸の構造中では、マンヌロン酸とグルロン酸はランダムに構成されています。この2種類のウロン酸の比率や配列は海藻の部位、種類などによって変わってきます。また、アルギン酸の性質やゲル化の仕方や強さに強く関係します。
原料となる海藻を酸処理して軟化させたのちにアルカリ下で加熱することでアルギン酸塩が抽出されます。これを分離、精製してアルギン酸ナトリウム溶液が得られます。ここに酸を加えて凝固析出したものがアルギン酸です。アルギン酸をアルカリ中和することでアルギン酸塩が得られます。
アルギン酸には、アルギン酸の他にもアルギン酸ナトリウム、アルギン酸エステルなどのアルギン酸類がたくさんあります。そこで各種アルギン酸の機能や特性を解説します。
不溶性です。小麦製品の保水性向上や食感改良に利用されています。
水溶性で冷水でも溶けます。アルギン酸類で最も流通しているのがアルギン酸ナトリウムです。そのためアルギン酸ナトリウムを「アルギン酸」と略して呼ぶことも多くあります。アルギン酸に炭酸ナトリウムなどを加えて製造します。アルギン酸ナトリウムは冷水や温水によく溶けることから、食品に多く活用されています。グレードにより増粘性は異なりますが、なめらかな流動性をもちます。ゲル化剤としては、カルシウムイオンと速やかに反応しゲル化します。果汁のような低pH溶液や乳製品のようなカルシウムが多い食品では不溶性のアルギン酸やアルギン酸カルシウムへ変わってしまうため十分に溶解させることができません。
水溶性で冷水でも溶けます。アルギン酸の構成糖であるウロン酸のカルボキシル基にプロピレングリコールをエステル結合させた誘導体です。水に溶けると酸性の水溶液となります。そのためアルギン酸ナトリウムと異なり酸性の食品でも増粘・安定効果を発揮することができます。一方で高pHではエステルが分解してしまうため適しません。また乳化効果もあることから、ドレッシングなどの乳化安定剤としての機能も持ちます。
水溶性で冷水でも溶けます。アルギン酸ナトリウムとよく似ている性状を持ち、増粘やゲル化用途で使われています。アルギン酸ナトリウムと異なりナトリウム量が少ないため、減塩食品での活用が期待されています。体内のナトリウムイオンを排出することが動物実験で確認されており、生理活性機能の面でも注目されています。
水溶性で冷水でも溶けます。アルギン酸ナトリウムやアルギン酸カリウムと同じように、増粘やゲル化用途で利用できます。ナトリウムやカリウムなど金属イオンが少ないため、灰分やゲル化時の金属塩副産物が少ないことが特徴です。
各種アルギン酸は、どのような食品にどのような使われ方をしているかをみていきましょう。
麺やパンなどの小麦粉製品に対する品質改良材として活用されています。例えば、保水性を適度に保つことから、麺やパンの食感をやわらかくします。
増粘剤、ゲル化剤、安定剤として活用されています。アルギン酸ナトリウムとゲル化因子のカルシウムイオンは瞬時に反応するため、人工イクラやフカヒレ状のゼリー製造への活用が有名です。また、オーバーランの向上や口溶けの改善などアイスクリームの安定剤としても利用されています。
カルシウムの多い食品の増粘剤や安定剤や生地改良剤として活用されています。サラダ用のドレッシングの乳化安定剤、ビールの泡沫安定剤などにも利用されます。特に近年ではパンや麺などの生地改良剤として、ボリュームアップや食感改良用途などで使用されています。
アルギン酸は、さまざまな種類があり、それぞれ特性も異なります。それぞれの特性を踏まえた上で、適した食品に有効活用していきましょう。
ペクチン、ゼラチン、キサンタンガム、
カラギナンなど
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