ペクチンとは~概要と種類を徹底解説

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飲料やジャムなどに利用されているペクチンは、食品の食感を改良したり、果汁飲料に粘度を付与したりとさまざまな機能があり、広く利用されています。フルーツ由来の食物繊維としてコレステロールのコントロールや整腸作用を期待したサプリメントも見かけるようになりました。今回は、ペクチン概要と種類、物性改良剤としての機能や使い方のコツについて解説します。

ペクチンとは

ペクチンとは、リンゴの搾滓やレモン、グレープフルーツ、ライム、オレンジなどの柑橘類の皮を原料とするもので、1825年にフランスのJ.Bracconotが発見したものです。ギリシャ語の“pectos”(固い、硬直)に由来する言葉から「ペクチン」と命名されました。
植物の細胞壁に存在するペクチンは、水を多量に吸い、細胞をつなぎ合わせるセメントの役目を果たします。

●ペクチンの製造工程
ペクチンはリンゴの搾滓やレモンなどの柑橘類の皮を加水分解して、分離・濃縮し、アルコール沈殿させて洗浄した後、乾燥・粉砕させてHMペクチンを作ります。
その後、脱メチル化、洗浄し、LMペクチンを作ります。

●ペクチンの種類と使い方
ペクチンには、上記の工程にも登場したように、大きく分けてHMペクチンとLMペクチンの2種類があります。一般的にエステル化度(DE)*が50%以上のペクチンをHMペクチン、50%未満のペクチンをLMペクチンといいます。さらにエステル化度の違いや由来原料によってたくさんの種類の商品がありますのでこれらの特徴を良く把握して、アプリケーションに適したペクチン選定する必要があります。

*エステル化度(DE)とは?
ペクチンの分子構造はガラクツロン酸という糖酸が連なった構造をしています。このガラクツロン酸はカルボキシル基がメチルエステル化された「メチルエステル化ガラクツロン酸」としても存在しています。ペクチンの主成分であるガラクツロン酸のうちどの程度がメチルエステル化されているのか割合を示したのがエステル化度です。メチルエステル化されている割合が高いものをHM(ハイメトキシル)ペクチン、割合が低いものをLM(ローメトキシル)ペクチンと呼びます。

●ペクチンの主な用途とメリット

・ジャムのゲル化や増粘
果実のブレの影響を抑え安定した生産が可能になります。また加熱時間を短縮できるためフルーツの風味が際立ちます。

・果実飲料の増粘
フルーツとの相性が良く濃厚な味わいに仕上げることができます。とろっとしながらもぬめりの少ないテクスチャーとなります。

・酸性乳飲料の安定
乳飲料は酸性になると乳タンパクが凝集してしまい分離やざらつき感につながります。ペクチンはこの凝集を防ぐ働きがあるため、品質安定の目的で酸性乳飲料や酸性乳製品デザートに使用されています。またとろっと濃厚な飲み口に仕上げることが可能です。

・ミルクデザートのゲル化
ペクチンとカルシウムの反応性を利用して様々な乳製品に利用されています。代表的なものはデザートベースとよばれる牛乳と混ぜて作るデザートです。他のゲル化剤には出せない独特の食感に仕上げることができます。

・パンの生地改良
ボリュームアップやしっとり感など食感改良に利用されています。また生地の老化遅延効果も知られています。

HMペクチンとは

●HMペクチンの概要
HMペクチンは、酸や糖の存在によりゲル化する性質を持つペクチンでジャムやマーマレード、酸味強めの高糖度ゼリーなどの食品に使用されています。高糖度(Bx55以上)、低pH(pH3.5以下)という条件の下で、水素結合によってゲル化します。また特徴として熱不可逆性のゲルを形成する点があります。ゲル化に必要なBxやpHの条件を満たさない場合には、溶液の状態です。溶液粘度を決める因子としては、添加量や分子量、温度などがあります。

▼HMペクチンのゲル化メカニズム

●HMペクチンの利用例
・ゲル化剤<エステル化度の低いタイプ(DE70以下)>
特性:高糖度・低pHでゲル化、熱不可逆性
例:ジャム(高糖度)、菓子ゼリー

・増粘剤<エステル化度の高いタイプ>
特性:テクスチャーの改良、ボディ感の付与
例:フルーツソース、フルーツ飲料

・安定剤<エステル化度の高いタイプ (DE70以上)>
特性:酸性下における乳タンパクの保護、工程中、保存中の品質安定
例:酸性乳飲料、酸性乳製品デザート

●HMペクチンの使い方
HMペクチンを使用する際には、ゲル化するための要因である酸を製造工程の最後に添加する必要があります。

・ペクチンゼリー、ジャム(Brix65以上)の場合

酸は、できるだけ後の工程で、水溶液として添加します。酸を投入した後にペクチン溶液を入れてしまうと、酸性下にペクチン溶液を投入することになり、投入してすぐにゲルを作ろうとしてしまうことから、小さい粒がたくさんできて(プレゲル化して)しまいます。

LMペクチンとは

●LMペクチンの概要
LMペクチンは、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルでゲル化する性質を持つペクチンでムースやゼリー、上掛けゼリーなどの食品に使用されています。ゲル化に高濃度の糖や酸を必要とせず、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルでゲル化する性質を持ちます。

▼LMペクチンのゲル化メカニズム

●LMペクチンの利用例
・ゲル化剤
特性:カルシウムの存在下でゲル化、カルシウム含量によって特性が変化する(熱可逆性~耐熱性)
例:ジャム(低糖度)、フルーツゼリー、乳製品デザート、デザートベース、上掛けゼリー、ベーカリー用ジャム

・増粘剤
特性:ヨーグルト混合時のポストリアクションの利用(乳のCaと反応)
例:フルーツソース、デザートソース、フルーツプレパレーション

●LMペクチンの使い方

1.LMペクチンの反応性調整カルシウムの選択
カルシウムを添加する場合、カルシウムの反応性は種類によって異なるため、適したものを選択する必要があります。

・乳酸カルシウム、塩化カルシウム…ペクチン溶液と触れた瞬間にゲル化する。
・硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム…ペクチン溶液とゆっくり反応しゲル化する。
・リン酸カルシウム…酸を加えてpHを下げることで、Caイオンを放出し、ゲル化する。

2.緩衝塩の選択
緩衝塩の種類によって、カルシウムの封鎖力とペクチンの反応性が異なるため、適したものを選択する必要があります。

クエン酸Na→酸性ピロリン酸Na→ピロリン酸Na→ポリリン酸Na→メタリン酸Na

Caの封鎖力(酸性条件下)は、左から右に行くにつれて強くなります。
つまりペクチンの反応性は、左から右に行くにつれてゆっくり穏やかになります。

このことから、例えばペクチンの反応性が早く、プレゲル気味になるときは、封鎖力の強い緩衝塩を添加します。

・例)リン酸カルシウム使用したジャムの場合

酸とカルシウムは必ず最後に分けて添加します。混合溶液に酸とCaの混合溶液を加えると、加えた場所からペクチンと反応し、荒れてしまい、不均一なゲルが作られてしまいます。
ポイントは、混合溶液にカルシウムが十分混合された後に酸を加えることです。これにより均一に反応します。

ペクチンに関するよくある質問

Q. ペクチンがダマになってうまく溶けません。

A. ペクチンそのものは非常にダマになりやすい性質があります。
一般的に市販されている「砂糖&ペクチンミックス」のような分散剤が含まれるものであれば溶かしやすいですが、ペクチン含有量が多い商品ではコツをつかむまで難しいですよね。
ペクチンの溶かし方について動画で紹介しておりますのでご参考ください。

 

Q. ペクチンを使っても うまく固まりません。

A. 固まらない主な理由は以下の通りです。

①ペクチンがうまく溶けていない

  • a) 加熱が弱い→通常のペクチンは、水やお湯に入れた後、90℃まで温度を上げないと溶けません。(ミルキーリボンのみ常温水で溶けます。)
  • b) ダマになっている
  • c) カルシウムが多い溶液に、粉のままペクチンを入れてしまった。
    →先にペクチンを溶かしてからカルシウム溶液を加えてください。

②固めるためのゲル化因子が弱い

  • a) HMペクチンの場合:高糖度(Brix60以上)、酸性(pH3.5以下、理想はpH3前後)
  • b) LMペクチンの場合:カルシウム
    (使用量は条件によって異なりますのでお問い合わせください)

③そのほかの理由

  • a) 煮詰めの加熱時間が長くペクチンが壊れてしまっている。
  • b) 酸、糖度が高すぎる。→ペクチン量を調整したり緩衝塩を加える必要があります。
  • c) ペクチン量が少ないor多すぎる。

 

Q. LMペクチンを使って糖度40程度の低糖度ジャムを作っています。
果実の種類を変えたところうまく固まらなくなりました。

A. 使用する果実によっては、カルシウム含量や酸の量が不足している可能性がございます。
果実の種類によってジャムの物性が変化する場合は、状況に応じて次の4点からそれぞれお試しください。

  • ①カルシウム反応性の高いペクチンを使用する
  • ②乳酸カルシウムのような水溶性カルシウムを添加する
  • ③酸の量を増やす
  • ④糖度を上げる
    *カルシウムを添加する場合は湯に溶かしてから製造工程の終わりの方で加えて素早くかき混ぜてください。温度が低い状態で添加するとプリセット(ざらざらとしたゲルで綺麗に固まらない、離水が生じる原因)します。

 

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