ペクチンとは?
構造・種類・ゲル化の仕組み・食品への活用まで徹底解説

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ペクチンは、とろみを付けたり甘味のバランスを整えたりするなど、幅広い食品で利用されている成分です。特にりんごなどの果物に多く含まれており、その含有量や性質によってペクチンの用途が異なります。

飲料やジャムなどに利用されているペクチンは、食品の食感を改良したり、果汁飲料に粘度を付与したりとさまざまな機能があり、広く利用されています。フルーツ由来の食物繊維としてコレステロールのコントロールや整腸作用を期待したサプリメントも見かけるようになりました。今回は、ペクチンの概要と種類、物性改良剤としての機能や使い方のコツについて解説します。

本コラムでは、ペクチンの用途や特性に加え、実際の使い方についても詳しく解説していきます。

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ペクチンの基礎知識

ペクチンとは

ペクチンとは、リンゴの搾りかすやレモン、グレープフルーツ、ライム、オレンジなどの柑橘類の皮を原料とするもので、1825年にフランスのJ.Bracconotが発見したものです。ギリシャ語の“pectos”(固い、硬直)に由来する言葉から「ペクチン」と命名されました。
植物の細胞壁に存在するペクチンは、水を多量に吸い、細胞をつなぎ合わせるセメントの役目を果たす天然由来の多糖類です。
食品の食感を改良したり、果汁飲料に粘度を付与したりとさまざまな機能があり、広く利用されています。

主な役割と効果

ペクチンは、食品のテクスチャー(食感)や品質を向上させるだけでなく、栄養面や医療分野でも活躍する多機能で安全性の高い素材です。主な役割と効果は多岐にわたります。

・ジャムのゲル化や増粘

果実のブレの影響を抑え安定した生産が可能になります。また加熱時間を短縮できるためフルーツの風味が際立ちます。

・果実飲料の増粘

フルーツとの相性が良く濃厚な味わいに仕上げることができます。とろっとしながらもぬめりの少ないテクスチャーとなります。

・酸性乳飲料の安定

乳飲料は酸性になると乳タンパクが凝集してしまい分離やざらつき感につながります。ペクチンはこの凝集を防ぐ働きがあるため、品質安定の目的で酸性乳飲料や酸性乳製品デザートに使用されています。またとろっと濃厚な飲み口に仕上げることが可能です。

・ミルクデザートのゲル化

ペクチンとカルシウムの反応性を利用して様々な乳製品に利用されています。代表的なものはデザートベースとよばれる牛乳と混ぜて作るデザートです。他のゲル化剤には出せない独特の食感に仕上げることができます。

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ペクチンが使われている食品

ペクチンは、その優れたゲル化・増粘・分散安定機能により、私たちが日常的に口にする幅広い食品に活用されています。

1. ジャム・フルーツスプレッド

最も代表的な用途です。果実の水分を保持して「ぷるん」とした食感を作るだけでなく、糖度(高糖度・低糖度)に合わせて最適な質感を設計するために使用されます。

2. 酸性乳飲料・デザート

飲むヨーグルトや乳酸菌飲料、植物性ミルクデザートなどで、乳タンパクの沈殿を防ぎ、滑らかな口当たりを維持する「安定剤」として不可欠です。

3. ゼリー菓子・グミ

果汁を固めたフルーツゼリーや、独特の歯切れの良さが求められるグミキャンディに使用されます。ゼラチンとは異なる、ベタつかず弾力のあるテクスチャーを実現します。

4.ベーカリー製品(フィリング・上掛け)

菓子パンの中に入れる耐熱性ジャムや、タルトの表面にツヤを出す「ナパージュ(艶出し用ゼリー)」に使用されます。高温でも溶け出さない形状保持力が重宝されています。

5.ソース・ドレッシング

フルーツソースやサラダドレッシングに適度なとろみ(ボディ感)を付与します。油分と水分の分離を抑え、具材が均一に分散した状態を保つのに役立ちます。

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ペクチンの原料と製造工程

ペクチンの原料

ペクチンの主な原料は、リンゴの搾りかすや、レモン、ライム、オレンジといった柑橘類の皮です。果物によってペクチンの含有量は異なり、例えば新鮮な可食部100gあたり、いちごは0.75g、リンゴやバナナは0.3〜0.7g程度のペクチンを含んでいます。

  • *新鮮物可食部100gに対するペクチン酸カルシウムとしての全ペクチン含有量
  • *川端 晶子,澤山 茂,瓜生 恵子(1974),果実類・果菜類および種実類のペクチン含有量について『栄養学雑誌』 32(1), p9-18より引用
  • *品種や産地によって異なります。

 

ペクチンの製造工程

ペクチンはリンゴの搾りかすやレモンなどの柑橘類の皮を加水分解して、分離・濃縮し、アルコール沈殿させて洗浄した後、乾燥・粉砕させてHMペクチンを作ります。その後、脱メチル化、洗浄し、LMペクチンを作ります。

なお、ペクチンの品質や物性は、原料となる果皮の状態や製造プロセスに強く影響を受けます。そのため、最終製品の特性に応じた最適なペクチンの分類と選定が重要です。糖分との結合によって形成されるゲルは、食感やおいしく食べるための要素としても欠かせない存在です。さらに、食品の物性改良だけでなく、栄養バランスの観点からも注目されており、安全性の高い素材として多くの用途で活用されています。

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HMペクチンとLMペクチンの違いとは?

エステル化度(DE値)とは

ペクチンの分子構造はガラクツロン酸という糖酸が連なった構造をしています。このガラクツロン酸はカルボキシル基がメチルエステル化された「メチルエステル化ガラクツロン酸」としても存在しています。ペクチンの主成分であるガラクツロン酸のうちどの程度がメチルエステル化されているのか割合を示したのがエステル化度です。メチルエステル化されている割合が高いものをHM(ハイメトキシル)ペクチン、割合が低いものをLM(ローメトキシル)ペクチンと呼びます。

HMペクチンとは

HMペクチンは、酸や糖の存在によりゲル化する性質を持つペクチンでジャムやマーマレード、酸味強めの高糖度ゼリーなどの食品に使用されています。高糖度(Bx55以上)、低pH(pH3.5以下)という条件の下で、水素結合によってゲル化します。また特徴として熱不可逆性のゲルを形成する点があります。ゲル化に必要なBxやpHの条件を満たさない場合には、溶液の状態です。溶液粘度を決める因子としては、添加量や分子量、温度などがあります。

▼HMペクチンのゲル化構造

LMペクチンとは

LMペクチンは、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルでゲル化する性質を持つペクチンでムースやゼリー、上掛けゼリーなどの食品に使用されています。ゲル化に高濃度の糖や酸を必要とせず、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルでゲル化する性質を持ちます。ゲルの物性についてはこちらから動画で確認できます。

▼LMペクチンのゲル化メカニズム

LMペクチンとHMペクチン 比較表

HMペクチン LMペクチン
エステル化度
(DE値)
50%以上 50%未満
ゲル化の条件 高糖度(Brix55以上)
かつ酸性(pH3.5以下)
カルシウムやマグネシウムなどのミネラル
ゲルの熱耐性 熱不可逆性 熱可逆性〜耐熱性
(カルシウムの量によって変化)
主な用途例 高糖度ジャム、マーマレード、
酸味強めの高糖度ゼリー、
酸性乳飲料など
低糖度ジャム、ムース、フルーツゼリー、
乳製品デザート、上掛けゼリー、
ベーカリー用ジャムなど
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食品開発におけるペクチンの活用事例

ジャム・フルーツプレパレーション

糖度を抑えたジャムを製造する際、従来のHMペクチンではゲル化が不安定になり、離水が頻繁に発生していました。ここで、カルシウム反応性の高いLMペクチンを活用することで、低糖度(Brix 40%以下)でも安定的な粘度の製造が可能になります。結果として、煮込み時間を短縮できるため、果実本来のフレッシュな色香を損なわず、離水を抑えた高品質な製品を実現しました。

酸性乳飲料(のむヨーグルト等)

飲むヨーグルトや乳酸菌飲料などの酸性乳飲料の開発では、酸性下で乳タンパク質が凝集し、「分離や沈殿」が生じてしまうことが大きな課題でした。この現象は、製品の見た目だけでなく、口当たりのザラつきにも直結します。そこで、乳タンパクの表面を保護する性質を持つ「HMペクチン」を安定剤として活用することで解決を図ります。ペクチンがタンパク質粒子の周りをコーティングし、粒子同士の反発を助けるという強みを発揮した結果、長期間保存しても沈殿が起こらず、滑らかでキレの良い後味を両立した安定的な製造が可能になりました。

グミ・ゼリー

グミやゼリー菓子の開発では、「歯切れの良さと弾力の両立」や、製造ラインでの「型離れの悪さ」が大きな課題でした。特にゼラチンのみでは、夏場の熱によるベタつきや離水が発生しやすくなります。そこで、熱に強く独特の食感を生み出す「HMペクチン」を併用することで解決を図ります。ペクチンが強固なゲルネットワークを形成するという強みを発揮した結果、常温でも型崩れせず、果実味を引き立てる歯切れの良い食感を実現しました。これにより、夏場でも安定した品質の製品供給が可能になります。

ベーカリー・フィリング

パンのセンターイン用ジャムやフィリングの開発では、オーブンでの焼成中に「ジャムが沸騰して流れ出したり、パン生地を汚したりすること」が深刻な課題でした。一般的なジャムでは高温での形状保持が困難です。これに対し、カルシウム反応性を高度に調整した「耐熱性LMペクチン」を活用することで解決します。加熱しても溶けにくい「熱不可逆性」に近いゲルを作るという強みにより、200℃以上の過酷な焼成条件下でも安定した形状保持を実現。その結果、見た目が美しく、生産ロスの少ない効率的なベーカリー製品の製造が可能になりました。

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ペクチンに関するよくある質問

A

ペクチンそのものは非常にダマになりやすい性質があります。

一般的に市販されている「砂糖&ペクチンミックス」のような分散剤が含まれるものであれば溶かしやすいですが、ペクチン含有量が多い商品ではコツをつかむまで難しいですよね。
ペクチンの溶かし方について動画で紹介しておりますのでご参考ください。

A

固まらない主な理由は以下の通りです。

①ペクチンがうまく溶けていない

  • a) 加熱が弱い:通常のペクチンは、水やお湯に入れた後、90℃まで温度を上げないと溶けません。(常温で溶解するペクチンも取りそろえております)
  • b) ダマになっている
  • c) カルシウムが多い溶液に、粉のままペクチンを入れてしまった。
    →先にペクチンを溶かしてからカルシウム溶液を加えてください。

②固めるためのゲル化因子が弱い

  • a) HMペクチンの場合:高糖度(Brix60以上)、酸性(pH3.5以下、理想はpH3前後)
  • b) LMペクチンの場合:カルシウム(使用量は条件によって異なりますのでお問い合わせください)

③そのほかの理由

  • a) 煮詰めの加熱時間が長くペクチンが壊れてしまっている。
  • b) 酸、糖度が高すぎる。→ペクチン量を調整したり緩衝塩を加える必要があります。
  • c) ペクチン量が少ないor多すぎる。
A

使用する果実によっては、カルシウム含量や酸の量が不足している可能性がございます。
果実の種類によってジャムの物性が変化する場合は、状況に応じて次の4点からそれぞれお試しください。

  • ①カルシウム反応性の高いペクチンを使用する
  • ②乳酸カルシウムのような水溶性カルシウムを添加する
  • ③酸の量を増やす
  • ④糖度を上げる

*カルシウムを添加する場合は湯に溶かしてから製造工程の終わりの方で加えて素早くかき混ぜてください。温度が低い状態で添加するとプリセット(ざらざらとしたゲルで綺麗に固まらない、離水が生じる原因)します。

A

考えられる要因は3つあります。

  • 要因1:熱
    ペクチンは熱に弱いので、高温状態で長時間加熱すると徐々に分解されてしまいます。
    例えばジャムを作る場合、ペクチンを加えてから長時間煮詰めてしまうと粘度・ゲル化力が低下します。
    煮詰め作業(Bx調整)をなるべくペクチン投入前に行い、その後の工程時間を短縮することがペクチンの機能を最大限に生かせるコツです。
    ※どうしても長時間高温を避けられない場合は、ペクチンの添加量を増やす(例:1.0%→1.5%)方法があります。
  • 要因2:pH(中性~アルカリ性)
    ペクチンは主に酸性域で安定します。
    HMペクチンはpH3.5以下での使用がおすすめです。
    ミルクジャムやプリン等といった中性の食品へはLMペクチンが利用されます。
  • 要因3:酵素
    生果実に含まれるペクチン分解酵素(ペクチナーゼ)がペクチンを分解してしまうこともあります。
    その場合、ペクチンを加える前に生果汁の酵素を失活させる必要があります。
    ペクチン分解酵素は、80℃以上で30分加熱することで100%失活します。
A

カルシウムの種類によってカルシウム含量が異なるため一概には言えませんが、乳酸カルシウムの場合、ペクチンに対して5%程度が必要となります。

例えば、ジャムを1kg作る場合、ペクチンは10g程度必要なので、乳酸カルシウムを0.5g程度加えることで固まります。
果実にもカルシウムが含まれておりますので、使用する果実のカルシウム含量を調べ、足りない分を乳酸カルシウムなどで補ってください。

A

同じゲル化剤ですが、原料の由来やゲルの特徴が異なります。

ペクチンは主にリンゴやレモンなどの果物から抽出するのに対し、ゼラチンは豚や牛などの皮や骨から抽出します。また、ペクチンのゲルは柔らかく弾力があるのに対し、ゼラチンのゲルは適度に強度があり離水が少ないことが特徴です。

A

実は食物繊維として機能性の研究もされています。

ゲル化剤・増粘剤として活用されているペクチンですが、実は食物繊維として機能性の研究も様々されています。
J J Cerda et al.,(1988)では高コレステロール血症の男女27名 (27-69歳) がグレープフルーツペクチン15g/日を16週間摂取することで、血漿コレステロール値が統計的有意に低下することが報告されています。

工藤 (2018) では弛緩性便秘と判断された14名 (83歳±6) がペクチンを5.4-10.8g/日を4週間摂取することで排便回数と便の質が有意に向上することが報告されています。
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A

ユニテックフーズ社による独自の技術によって非加熱溶解を実現した画期的なLMペクチンです。

即溶解ペクチンの分子は水分子と容易に水和し、簡単な攪拌で分子鎖を広げられることが特徴です。15℃の水の場合は1分間で、ポットのお湯(80℃)の場合は30秒間で100%溶解します。
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A

LMペクチンとカルシウムの反応性の調整で、大きく3つのゲルを作ることができます。

LMペクチンは、ゲル化因子のカルシウムとの反応性を調整したり、ゲル化条件を変えたりすることで、様々な大きさ・食感のゲルを作れます。

  • ①均一なゲル
    ジャムやプリンのように、均一な食感のゲルを作ることができます。
  • ②分子が凝集してできる、小さくてざらざらのゲル
    LMペクチンとカルシウムとの反応性を早めると、LMペクチンのネットワークが締まり、ジャムのように均一なゲルではなく、局所的にLMペクチンがゲル化(プレゲルと呼びます)したゲルを無数に作ることができます。
  • ③ぷっくりとしたゲル
    ②にペクチン以外の増粘剤を加えることで、②よりも大きくやわらかい数mmほどのつぶつぶのゲルを作ることができます。

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A

食品添加物として使用する場合、一般的には用途名と物質名を併記して「増粘剤(ペクチン)」または「ゲル化剤(ペクチン)」、「安定剤(ペクチン)」と記載します。ペクチンはリンゴや柑橘類の搾りかすから抽出される天然由来の多糖類(食物繊維)であるため、合成添加物を避けたい消費者にも受け入れられやすい素材です。製品コンセプトによっては「フルーツ由来の食物繊維」といった文脈で訴求することも可能です。

A

最適なペクチンの選定が不可欠です。ペクチンの品質や物性は、原料となる果肉・果皮の状態や製造プロセスから強い影響を受けるため、製品ごとに特性が異なります。目指す最終製品の食感や保存条件に合わせて、最適な分類のペクチンを厳選することが、品質安定の鍵となります。

A

「最終製品の特性に合致しているか」という点です。ペクチンの物性は原料の状態や抽出プロセスに敏感に反応するため、一概に「ペクチン」といっても多種多様な挙動を示します。ターゲットとする食感や製造ラインの条件に基づき、適切なグレードを分類・選定することで、ペクチン本来の機能を最大限に引き出すことが可能になります。

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まとめ

ペクチンは、果物に含まれる天然由来の多糖類で、食感や粘度の調整だけでなく、糖質バランスの管理や栄養改善にも活用される重要な食品素材です。特にLMペクチンやHMペクチンは、その分類によって使用場面が大きく異なり、各製品の特性や用途に応じて使い分けることが求められます。

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