ペクチンで飲料のマスキングと分散安定を実現

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健康志向が進むなか機能性成分を配合した飲料は一大カテゴリに成長しました。青汁や乳酸菌飲料の王道飲料はもちろん、生活習慣病予防や疲労回復訴求の黒酢や肝機能回復を謳ったウコンを配合したドリンクのお世話になった方も多いのではないでしょうか。一方でこのような機能性成分や素材を配合した場合は独特の風味や成分の沈殿が問題となることも多く、美味しさと健康を両立させるような商品開発は難しいものです。
そこで今回は飲料向けペクチンによる嫌味のマスキング効果や不溶解成分の沈殿抑制・再分散性効果について、データとともに紹介します。

ペクチンとは

ペクチンは野菜や果物に細胞壁成分として含まれています。大量の水分を吸収する能力を持ち、植物に柔軟性を与えています。一般的にはりんごの搾りかすや柑橘類の皮から抽出され、食品添加物としてゲル化剤や増粘剤、安定剤といった幅広い用途で用いられています。

ペクチンの効果

ペクチンは、ジャムやゼリーなどのゲル化剤、酸性乳飲料中でのタンパク質の安定剤として利用されることがメジャーな用途ですが、飲料に用いた際のマスキング効果、不溶解成分の沈殿抑制および再分散性効果についてはあまり知られていません。

ペクチンによるマスキング事例〜黒酢飲料・ウコン飲料をもっと飲みやすく〜

各種アミノ酸や、クエン酸、ビタミンやミネラルを多く含む黒酢は生活習慣病予防として人気ですが、そのツンとした酸味を苦手とする人も多くいます。そこでペクチンのマスキング効果を黒酢飲料で検証してみました。
市販の黒酢飲料(5倍希釈タイプ)をもちいて飲料向けペクチン(UNIPECTINE QC 40 TSB)の有無で飲みやすさに違いがあるか官能評価を実施しました。その結果、80%以上の人がペクチン入りの方がツンとした酸味がまろやかになり飲みやすくなったと答えました。

より詳しく検証するべく、電子味覚システム(Alpha M.O.S.社)を用いて測定しました。この機器は、異なる味覚に対応する7種のセンサーを用いて味の数値化をすることができます。 詳細は割愛しますがセンサーの応答値から算出されるユークリッド距離が短いほどマスキング効果があると言えます。通常の黒酢飲料(コントロール区)、ペクチン入り黒酢飲料(テスト区)を比較したところ、ペクチンを添加することで48%のマスキング効果があることが確認できました。
また黒酢飲料同様に、独特の風味がありすっきりと飲むことが難しいウコンエキス、ウコン粉末を配合した飲料においても同様の試験をおこないました。
ペクチンを添加することでユークリッド距離として71%のマスキング効果があることが確認できました。

味覚だけではなく嗅覚でも風味を感じることから、嗅覚へのペクチンのマスキング効果を確認するため、電子嗅覚システム(Alpha M.O.S.社)による測定を行った。 この機器は、高速ガスクロマトグラフィーを備えた電子嗅覚システムで、クロマトグラム全体のパターンの違いを主成分分析から求めたユークリッド距離で表すことによって匂いを数値化することができます。その結果、黒酢飲科・ウコン飲料ともにペクチンは匂いのマスキングには寄与していないことが確認できました。そのため、ペクチンは香料など実際の臭いによるマスキングとは異なり、人の味覚受容体への化学物質の刺激を和らげる効果があると考えられます。ペクチンを加えることで、酸味などのシャープさを丸くすると推測しています。実際にジャムの実験においてペクチンは酸味の鋭さを和らげるという報告があります。

ペクチンによる不溶解成分の沈殿抑制および再分散性効果

ペクチンによる分散安定性を確認するため、ウコン飲料を用いて試験をおこないました。 ペクチン(UNIPECTINE AYD 3110 SB)を配合したもの(テスト区)と通常のもの(コントロール区)を透明のビンに充填し振盪してしばらく置いた後に観察しました。コントロール区においては不溶解成分のウコンが沈殿し、上澄みがやや透明になったのに対し、テスト区では飲料全体が不透明で分散状態の維持が確認できました。

分散安定性をより詳細に検証するためタービスキャン(Formulaction社)を用いて評価しました。タービスキャンは、縦長のサンプル管に上下に光を照射し、時間経過による試料内の不溶解粒子の移動を透過光量の変化によって測定する機器です。不溶解粒子が沈殿すると上澄みの透過光量が増加し、底部の透過光量は減少します。変化量が大きいものほど透過する光量が多くなることから、沈殿量が多いと言えます。
テスト区では、コントロール区に比べ経時的な透過光量の増加が抑えられていることから、ウコン粉末の沈降が遅いことがわかります。

さらに、時間による透過率の変化(横軸に時間、縦軸にサンプルの高さ10~30mmにおける透過光量の平均変化率)をみると、テスト区はコントロール区に比ベ透過光量の増加を低くペクチンの沈殿抑制効果を確認できます。また、沈殿してもペクチンの存在により再分散性が良くなるという結果もあることから、ペクチンによる緩やかなネットワークの存在が不溶解成分と絡んで沈殿を抑制しているものと考えられます。

まとめ

今回はペクチンのマスキング効果、不溶解成分の沈殿抑制および再分散性効果についてデータを交えつつ紹介しました。ペクチンが持つマスキング効果によって、飲みやすい酢入り飲料を提供することができます。また、ウコンのように独特の風味のある不溶解素材入りの飲料も、おいしくすっきり飲みきることができます。ペクチンは他の増粘剤に比べ自然な飲み口でフレーバーリリースが良いことも特徴です。機能性飲料のマスキングや分散安定にはペクチンがおすすめです。

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