ゲル化剤・増粘剤とは?種類や用途・利用事例をご紹介

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ゲル化剤・増粘剤とは、食品に粘度をつけたり固めたりする目的で使用される食品添加物の総称です。今回は、私たちが日常的に口にする食品にも含まれている、ゲル化剤・増粘剤に関する基礎知識や使用用途について解説し、商品開発事例から開発のヒントを導き出します。

ゲル化剤・増粘剤とは

ゲル化剤・増粘剤とは、食品に粘度をつけたり固めたりする目的で使用される食品添加物の総称です。ゲル化剤が主に液体をゼリー状に固める目的であり、増粘剤は文字通り粘りやとろみを増加させるための目的で使用されます。
私たちが日常的に口にする食品にも含まれており、煮物や炒め物、デザート類、ドレッシングやタレなどの調味料などにも使用されているため、意識しないうちに「ゲル化剤」や「増粘剤」を口にしていることでしょう。

ゲル化剤・増粘剤の種類

ゲル化剤・増粘剤は多くの種類が存在し、使用する食品や用途、ゼリー状から液体のような物性、機能性など、特徴は多種多様といえます。
由来原料もさまざまに渡り、植物由来のもの、微生物発酵によって得られるもの、海藻由来のもの、セルロース誘導体由来のものなどが存在します。その中でも代表的なゲル化剤・増粘剤の原料は、でん粉などを発酵させて作られるキサンタンガム、海藻から抽出されるカラギナン、マメ科の植物の種から抽出されるグァーガムなどがあります。そのほとんどは多糖類(糖がたくさんつながったもの)です。
以下の表は代表的なゲル化剤・増粘剤の種類と特徴です。

代表的なゲル化剤・増粘剤
名称 概要
ペクチン リンゴの搾滓やレモン、グレープフルーツ、ライム、オレンジなどの柑橘類の皮を原料とするものです。
食品の食感を改良したり、果汁飲料に粘度を付与したりとさまざまな機能があり、ジャムや飲料に利用されます。
ゼラチン 豚や牛の骨や皮、魚を原料としています。
ゲル化、保水、乳化安定などの機能があり、ゼリー、グミ、ヨーグルト、畜肉製品などで利用されています。
カラギーナン 体色が紅色や紫色をしている藻類「紅藻類」から抽出される多糖類です。
ゲル化、増粘剤、安定剤の機能があり、アイスクリームなどの乳製品デザートや、缶コーヒーなどに利用されています。
キサンタンガム 微生物(Xanthomonas campestris/キサントモナス キャンペストリス)から生産される増粘多糖類です。
粘度や冷凍解凍耐性が高いことが特徴としてあり、食品のドレッシングやソースのとろみ付け、冷凍食品などに利用されています。
寒天 体色が紅色や紫色をしている藻類「紅藻類」を原料としています。
溶解性や離水性があり、羊羹やところてんなどの和菓子、介護食などに使われています。
メチルセルロース・HPMC メチルセルロースは、植物を原料として抽出、処理により製造されます。
熱ゲル化や乳化作用の機能があり、フライ製品のパンク防止や、卵なしのマヨネーズをつくることができます。
グァーガム
タラガム
ローカストビーンガム
(カロブビーンガム)
マメ科の植物から抽出される多糖類です。
溶解性や粘性、安定性といった特徴があり、ゼリーやプリン、調味料などに使われます。
グルコマンナン コンニャクイモの塊茎に約10%含まれる水溶性多糖類で、こんにゃく粉をアルコール精製することによって抽出されます。
優れた保水性やゲル化能、高い粘性など様々な物性を有しているためゼリーやパン、麺類などで利用されています。
アラビアガム マメ科アカシア属の植物の樹から出る樹液の粘質物であり、高分子多糖類です。
乳化香料、気泡安定化、砂糖結晶化防止など、様々な機能があるため、飲料、お菓子、パン、冷凍食品などで利用されています。
ジェランガム グルコースなどを栄養源にスフィンゴモナス・エロディア(Pseudomonas elodea)という微生物を培養することで製造されます。
ゲル化剤、増粘剤、安定剤などの機能性から、ジャムやグミ、マシュマロ、ヨーグルトなどに利用されます。
アルギン酸 コンブやワカメなどの褐藻類に含まれる多糖類です。
保水性を適度に保つ特徴から、麺やパンなどの小麦粉製品に対する品質改良剤として活用されています。

ゲル化剤・増粘剤の主な使用用途

ゲル化剤・増粘剤を使用して粘度を調節することで、以下のような用途で使用されています。

・食感を向上させる
・離水や硬化を防止する
・食材に程よく絡むようにする
・具材を分散させる
・乳化を安定させる
・懸濁安定化させる

ゲル化剤を含む代表的な食材として「ゼリー」「プリン」「ジャム」などが挙げられ、それらは「ペクチン」や「カラギナン」などのゲル化剤を使って製造されることが多いです。ゼリーやプリンのぷるぷるとした食感や、ジャムのとろっとした粘度にはゲル化剤や増粘剤が使用されているのです。

また、とんかつやエビフライなどの衣のサクサク感向上やチーズの伸びを強化するなど、ゲル化剤・増粘剤は食感を向上させるだけでなく、見た目の部分でも美味しさを引き出す大きな役割を果たすこともあります。

ゲル化剤・増粘剤の利用事例

ゲル化剤や増粘剤の利用事例として、デパ地下商品開発時の課題と解決策の実例をご紹介します。

デパ地下の課題

デパ地下のお惣菜商品は包装された市販品のようにパッケージに入っていないため、「見た目」がより重要となってきます。ショーケースの中で商品をいかに綺麗に見せ、お客様に足を止めて頂き購買に繋げるかがカギとなってきます。また、外食とは異なり、中食は消費と購買のタイミングがずれます。そのため、購入した商品を自宅に持ち帰って食べることを想定して商品の規格を構築しなくてはなりません。自宅に持ち帰るまでに商品が温度変化に耐えられるか、持ち帰る際に与えられる振動で商品が荷崩れしないか、など様々なことを想定しなくてはならないのです。

商品開発の実例:「茄子の煮物」の売上回復の秘訣とは?!

これは、実際にデパ地下の総菜店で「茄子の煮物」の商品開発をお手伝いした際の例です。「茄子の煮物」は秋〜冬にかけて、煮物の汁を片栗粉であん状にして販売していました。春になり、気温の上昇に伴い売上が低迷。そこで、片栗粉で汁をあん状にしていたものを、ゲル化剤で汁をジュレにし、商品のリニューアルをかけて再販しました。すると、売上が2倍ほどに伸びました。

何でとろみをつけるか、固めるかが重要

煮物の汁にとろみをつけてあん状にする際、一般的に片栗粉やくずが使用されます。ですが、その調理法ではあんが白濁し、更に熱が加わるとだれやすい性質があります。そのような商品を、春〜夏の気温が高い時期に持ち帰りをすると、家に持ち帰った時にはとろみが無くなり、液状化してしまっているというケースもあります。これはお客様からのクレームに繋がることもあります。そこで、増粘剤を使ってとろみを持続させたり、ゲル化剤を使用して透明感のある透き通ったジュレ状にすることで、買った時と変わらない商品をお客様に召し上がっていただくことができます。
今回は夏場の商品だったのでジュレ状になるゲル化剤で商品に清涼感をもたらし、夏らしい涼味を演出しました。増粘剤やゲル化剤は食感に付加価値をつける役割を果たすだけでなく、見た目の美味しさを引き出す役割もあるのです。

まとめ

ゲル化剤・増粘剤は用途に合わせた数多くの種類が存在し、私たちが日常的に口にする食品にも含まれています。見た目や食感といった味わいを向上させる役割はもちろん、保水やドリップ防止、硬化防止といった劣化を改善・維持する用途でも活躍しています。

事例のような副次的な売上増という結果も生むことから、商品開発時はゲル化剤・増粘剤の導入を検討してみてください。

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