健康的な腸内フローラの維持には食事にプレバイオティクスを取り入れるだけでなく、その素材の選択も考慮する必要があります。低FODMAPとFODMAP食品のバランスを取り、腸に優しい食事を意識することが重要です。
情報化社会の急速な進展は人々の生活を便利にする一方で、新たなストレス源となっていることが問題視されています。ストレスが関連した病気は全般的に増加傾向にありますが、そのひとつに「過敏性腸症候群」があります。腹痛と下痢・便秘などの便通異常が慢性的に持続する場合、それが該当しているかも知れません。過敏性腸症候群は、英名をIrritable Bowel Syndromeと呼び、通常は略して「IBS」の呼称で知られています。IBSの予防にはストレスを軽減する工夫も重要ですが、暴飲暴食などの不規則な生活習慣を避け、健康的な腸内環境の維持も意識する必要があります。
人間の腸管の中にはおよそ1000種類以上、約100兆個もの腸内細菌が存在すると言われ、腸内フローラ(腸内細菌叢)を形成しております。腸内フローラは免疫系と密接に関わっていることが明らかになっており、そのバランスを保つには食物繊維などの善玉菌のエサになるプレバイオティクスを意識的に食事に取り入れることが有効です。食物繊維とは小腸で消化されずに大腸に到達する難消化性糖質に分類されるもので、腸内発酵によって排便を促進する役割があります。一方で、食物繊維に分類される素材には大腸で短時間に発酵が進むものがあり、それらは「FODMAP」(Fermentable/発酵性)(Oligo-saccharides/オリゴ糖)(Disaccharides/二糖類)(Monosaccharides/単糖類)(Polyols/ポリオール)とも呼ばれます。急速な腸内発酵は腸内のガス生産や水の貯蔵が亢進されて、それが便秘、下痢、腹部膨満などのIBS症状を引き起こすことがあります。
アカシア食物繊維とは、野生種のアカシアの樹液を精製粉末化した水溶性の食物繊維で、基原原料は「Gum Arabic」として知られています。食経験の起源は大変古く、紀元前2000以上前の古代エジプト時代に遡ります。精製は極めてシンプルで、水に溶かして異物除去をし、加熱殺菌を経てスプレー乾燥するのが基本工程になります。分子結合を変える化学的な工程を経ない為、その大きな分子量を維持しています。また、野生種である為、農薬の使用や遺伝子組み換えがなく、アレルギー物質を含みません。
上記のグラフは、2種のプレバイオティクスを摂取した場合の腸内発酵をグラフ化したシミュレーター試験です。上行結腸から下行結腸にかけて、青が発酵が行われていない残存するプレバイオティクスを指します。アカシア食物繊維は上行~下行結腸にかけて緩やかにプロバイオティクスが働く(つまり青の部分が段階的に減っている)のに対し、フラクトオリゴ糖は上行結腸で急速に発酵が進み、横行~下行結腸にほとんどプレバイオティクス(青の部分)が残存していないことが分かります。この違いはそれぞれの分子量に大きく関わっております。オリゴ糖の分子量は300~3000程度の範囲であるのに対し、アカシア食物繊維は380,000~850,000の大きな分子量を有します。アカシア食物繊維はその大きな分子量を有するため腸内で急速に発酵できず、緩やかに発酵が進む低FODMAPのお腹に優しいプレバイオティクスであることが分かります。
参考文献
1) 日消誌 2020: 117: 840-855
2) Kathleen Terpend.”Arabinogalactan and fructo-olicosaccharides have a different fermentation profile
in the Simulator of the human intestinal microbial ecosystem(SHIMEⓇ).” Environ Microbiol Rep.2013
3) 順天堂スポーツ健康科学研究 第2巻第4号(通巻58号), 129~138 (2011)
4) Eqbal Dauqan, Aminah Abdullah. “UTILIZATION OF GUM ARABIC FOR INDUSTRIES AND HUMAN HEALTH.” American Journal of Applied Sciences 10(10):1270-1279,2013
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