アメリカの一般的なスーパーマーケットでは、”Frozen Breakfast”という商品カテゴリーがあり、朝食用冷凍食品が充実しています。パンケーキやワッフルなど定番朝食メニューから、最新の植物性メニューまで商品展開が豊富です。この記事では、新型コロナウイルス感染症の影響も踏まえてアメリカの朝食用冷凍食品の市場を解説するとともに、ユニークな市販品をご紹介します。
2020年以降、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、ロックダウンや在宅勤務が当たり前となったことで、アメリカでは消費者の朝食にかける時間が増加しました。また、多くの消費者が朝食用冷凍食品を、手軽に食べられる日中のスナックとして活用するようになりました。現在では子どもは学校に戻り、大人は通勤を再開するようになったものの、パンデミック中に根付いた消費者行動が続いているため朝食用冷凍食品の売上は増え続けています。アメリカ冷凍食品協会(American Frozen Food Institute)によると、2021年4月からの1年間で冷凍食品全体の売上は6.8%増加、なかでも朝食用冷凍食品は11.4%増加しました。そして過去2年間で朝食用冷凍食品の売上は27.4%拡大しています。売上が増える理由にはインフレも挙げられるものの、売上数量自体も増加しているため消費者の需要が拡大していると考えられます。*1
パンケーキ、ワッフル、フレンチトーストはアメリカで人気が高い朝食メニューであり、冷凍商品も豊富な品揃えです。伝統的なオリジナルタイプの商品に加え、マルチグレインから、グルテンフリー、ケトジェニック、高たんぱく質、季節のフレーバー、植物由来の商品まで多岐にわたります。例えば、朝食用冷凍食品メーカーのVan’s Foodは、グルテンフリーの冷凍パンケーキやワッフルを販売しており、これらの商品には小麦粉の代用として、キビや玄米、テフ、ジャガイモでんぷんなどが使用されています。同社の商品の多くが牛乳や卵を使わない植物性タイプであることも特徴です。
また、パンケーキやワッフルは子ども向け商品が充実しているカテゴリーでもあります。大手食品メーカーのKellogg’sはカラフルシュガーをトッピングしたワッフルを販売し、子ども向け冷凍食品メーカーのKidfreshは栄養強化小麦(Enriched Flour)を使用したワッフルを展開しています。
近年日本で話題となっているオートミールは、アメリカでは定番の朝食メニューであり、冷凍商品も販売されています。冷凍食品メーカーのGood Food Made Simpleが手掛けるのがスティールカットタイプの調理済みオートミールで、1食分ずつの個包装タイプです。またスタートアップ企業のGo Oatsは、手軽に食べられる一口サイズのオートミールボールを販売しており、ブルーベリー、ストロベリー、ブラウンシュガーなどのフレーバーで展開しています
ブリトー(Burrito)はメキシコ料理の1つで、小麦粉から作られる薄いトルティーヤ生地に、肉やチーズ、野菜などの具材を巻いて作る料理です。アメリカではブリトーの人気が高く、近年は冷凍食品コーナーでも朝食向けであるブレックファースト・ブリトーが増えています。朝食用は卵やソーセージ、チーズを具材にした商品が主流ですが、豆腐などを使ったビーガン向け商品も見られます。
スムージーも朝食メニューとして人気があります。スプーンで食べる冷凍スムージを手掛けるのがスタートアップ企業のSweet Nothingsです。冷凍スムージーにはフルーツのほかに、カシューバターや、チアシード、フラックスシード、デーツなどが使われ、オーガニックかつ植物由来の商品となっています。フレーバーは1番人気のストロベリーをはじめ、ダークチョコレート、ピーナッツバター、マンゴーなどです。
また、近年はキューブ型の冷凍スムージーも見られます。アメリカとカナダで展開しているEvive Nutritionの商品は、冷凍のスムージーキューブをグラスに入れて水やアーモンドミルクなどの液体を加えて混ぜるとキューブが溶けてスムージーになるというものです。同社の冷凍キューブの原材料には、数種類の果物のほかにピープロテイン(pea protein)やチアプロテイン(chia protein)などの植物性たんぱく質も使われています。
左:Eat JUSTのシート状の調理済み代替卵 右:Eat JUSTの代替エッグバイツ (筆者撮影)
近年、食品業界において「植物性」は大きなトレンドであり、冷凍食品でもパンケーキからワッフル、ソーセージパティまで幅広く植物性の商品が販売されています。植物由来の代替卵を開発するスタートアップ企業のEat JUSTは、主力商品の液状代替卵(冷蔵)に加えて、緑豆を原料とする代替冷凍食品も展開しています。パンに挟みやすいシート状の調理済み卵(写真左)、そして代替エッグバイツ(写真右)です。エッグバイツとは、低温調理されたひと口サイズの卵料理で、アメリカではスターバックス等で人気が出ています。
今回はユニークな商品を紹介しましたが、アメリカの朝食用冷凍食品はまだまだ従来型の商品が多いカテゴリーでもあります。ここ数年で植物性食品の人気が拡大し、動物性原材料を使用しない冷凍商品が多く登場しているように、どのような新しい商品が展開されるか今後も引き続き注目です。
参考資料
*1 https://www.supermarketnews.com/issues-trends/frozen-breakfast-solutions-remain-red-hot
今注目を集めている食品トレンド情報や
食品開発に関する資料を
無料でご提供しています。
是非この機会にご覧ください。
ペクチン、ゼラチン、キサンタンガム、
カラギナンなど
ハイドロコロイドに
ついて徹底解説。
ハイドロコロイドの概要から、
各種の特徴を全75ページにわたって
徹底に解説しています。
是非ご覧ください。
食品の企画・開発に関わる人のための専門メディア「食品開発ラボ」は、ユニテックフーズ株式会社が運営しています。
当社では創業以来独自の素材・製品で新しい食品の価値を創造することをコンセプトに、ペクチンをはじめとするハイドロコロイドの研究や素材を組み合わせたこれまでにない特性を持つ製品の開発、加えてお客様のご要望に応じた当社製品を実際の食品に用いた利用・応用技術の開発を行っています。
商品企画・開発において何かお困りごとがあれば、きっと当社がお役に立てると思います。
是非お気軽にお問い合わせください。