お米の一人当たりの消費量は1962年をピークにして減少傾向が続き、近年は1962年の半分以下の消費量に落ち込んでいます1)。この状況の打開策として長年期待されているのが米粉です。小麦粉代替として当初注目された米粉ですが、食感などの課題から苦戦した時期がありました。近年では新たにグルテンフリーの観点から注目されています。現在の米粉の状況について、見ていきましょう。
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米粉とは米を細かく砕いて粉状にしたものになります。昔から様々活用されており、だんご、柏餅、草餅、大福餅などが当てはまります 2)。いわゆる、米菓や和菓子といった伝統的な料理での利用が従来の米粉の活用方法でしたが、最近ではパン、ケーキ、麺、唐揚げなどの新たな用途も開拓されています 3)。日本米粉協会では2018年から、料理にあわせて米粉が選ぶことができるように「米粉の用途別基準・用途表記」の運用を開始しています。適合する製品に米粉に協会の推奨マークを付与することによって、消費者が用途に応じた適切な米粉を選択しやすくなる仕組みとなっています 4)。
小麦粉代替としても着目される米粉ですが、様々な素材的特徴を有しています。第一に挙げられるのは、米粉にはたんぱく質であるグルテン (グルニン・グリアジン) が含まれていないことです。グルテンアレルギーの人や、セリアック病の方は小麦粉を摂取することが困難なので、米粉が適しています。加えて、米粉は小麦粉と異なりダマにならないので調理が容易、油の吸収率が小麦粉よりも低いため 5)、揚げ物においてはサクサク感が長く持続する、米と小麦のアミノ酸スコアを比較すると米の方が高いことから 6)、米粉はアミノ酸バランスに優れるという特徴も有します。
米粉用米の生産量・需要量は近年伸びています。2021年度の米粉需要量は4万1000tでしたが、これは、2016年度の2万3000tから78%増となっています 3)。この要因としては、近年の小麦価格の高騰による注目とともに、米粉業界の様々な取り組みが功を奏した側面があります。かつて第1次米粉ブーム (2009年~2012年度) があり、この時は小麦粉代替として米粉が注目されていました 7)。しかしながら、水分を吸って米粉パンが膨らまない という課題が強く、ブームが終了したという背景があります7)。こうした状況を踏まえ、米粉の加工に適した品種の開発も進められました。その中で「笑みたわわ」などのパンのふくらみがよい品種が出てきました。このような加工適性の上昇が、現在の第2次ブームにつながります。
現在の第2次ブームではグルテンフリーを基軸として米粉の国内普及・輸出拡大の取り組みが進められています。世界のグルテンフリー製品の市場規模は、2021年の175億$から2027年には283億$に達すると予測されています 8)。こうした需要を取り込むために、国内では、2018年6月からグルテン含有「1ppm以下」の米粉をノングルテン表示でアピールする「ノングルテン第三者認証制度」が開始されています。これは欧米のグルテンフリー表示の基準である、20ppm未満/20ppm以下よりも厳しいものとなっています。2021年6月には、輸出拡大に向けて「ノングルテン米粉の製造工程管理JAS」の認証が開始され、JAS認証を受けた企業が管理能力の高さを訴求することが可能になりました。
米粉を巡る状況は様々変化しています。かつては小麦粉代替のイメージが強かった米粉ですが、現在はグルテンフリーを強く訴求しており、さらに食感も改良されています。米の消費量の減少、小麦粉価格の高騰、グルテンフリー製品の市場の拡大など、様々な背景から米粉にかかる期待は大きいです。今後の動向にも注目です。
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【参考文献】
1) 農林水産省 食糧需給表 国民1人・1年当たり供給純食料
2) 東海農政局 米粉の種類と用途 https://www.maff.go.jp/tokai/seisan/shinko/komeko/type.html (2023年4月20日閲覧)
3) 農林水産省 米粉をめぐる状況について 令和5年4月 https://www.maff.go.jp/j/seisan/keikaku/komeko/attach/pdf/index-10.pdf
(2023年4月20日閲覧)
4) 日本米粉協会 米粉の用途別基準 https://www.komeko.org/standard/ (2023年4月20日閲覧)
5) F Shih et al., Oil uptake properties of fried batters from rice flour. J Agric Food Chem. 1999 Apr;47(4):1611-5. doi: 10.1021/jf980688n.
6) 食品のたんぱく質とアミノ酸 科学技術庁資源調査所 1986年
https://www.maff.go.jp/j/press-conf/230331.html (2023年4月17日閲覧)
7) 日本農業新聞 「第2次米粉ブーム」真っ盛り 小麦の代替→味評価 加工技術や専用品種、追い風に https://www.agrinews.co.jp/news/index/78372 (2023年4月20日閲覧)
8) IMARC Services Private Limited . Gluten-Free Products Market: Global Industry Trends, Share, Size, Growth, Opportunity and Forecast 2022-2027. 2022
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