酒類市場で低・ノンアルコール飲料に対する注目が最近高まっています。2018年頃には9%前後の高アルコール飲料がブームとなりましたが、近年ではコロナ禍の影響や健康志向の高まりにより、低・ノンアルコール飲料に対するニーズが高まっています。また「スマートドリンキング」に代表されるような、アルコール飲料の選択肢拡大や適性飲酒の促進といった内容の啓発を、ビールメーカー各社は取り組んでいます。今回はこのような低・ノンアルコール飲料の動向にについて、解説します。
目次
近年、低・ノンアルコール飲料が注目されている要因としてコロナ禍が挙げられます。サントリーノンアルコール飲料レポート2023 1)によると、2021年のノンアルコール飲料市場は4,009万ケース (対前年比 115%)となり、2022年、2023年も同程度の水準となっております。同調査では、ノンアルコール飲料の飲用経験者における自宅内での飲用経験率は、2019年は72.3%に対し、2023年は78.4%と報告しており、自宅でのノンアルコール飲料の摂取機会が増えていることが伺えます。コロナ禍で飲食店の休業があり、それをきっかけに自宅飲みをする方が増えましたが、自宅で飲むからこそ、酔いすぎを避けたい、健康を意識したいという思いも強くなり、そのようなニーズにノンアルコール飲料が受け皿になったと考えられます。
コロナ禍の影響に加えて、従来の飲酒文化の見直しという観点からも低・ノンアルコール飲料に注目を集めています。「ソバ―キュリアス (sober curious)」という考え方が近年広がっています 2)。これは、「sober(しらふ)」と「curious(好奇心旺盛な)の造語であり、イギリスのジャーナリストであるルビー・ウォリントンが2019年に出版した書籍のタイトルに由来します。ソバ―キュリアスは「お酒が飲めないわけではないのにあえて飲まない人や、進んでローアルコールやノンアルコールを選ぶ人のこと」を意味し、自分の飲酒習慣を選んだり、問い直したり、変えたりする選択肢を持つことを指します。ビール大手メーカーであるアサヒグループホールディングスではこの考え方を踏まえ、「スマートドリンキング」を提唱しています 2)。「スマートドリンキング」は「新しい時代の新しいお酒の楽しみ方。飲みたい時、飲めない時、あえて飲まない時、飲む人も飲まない人も一人ひとりが自分の体質や気分に合わせて適切なお酒やノンアルコールドリンクをスマートに選択できる飲み方」を指します。2018年頃には、9%前後の高アルコール飲料がブームとなりましたが、健康志向の高まりや、その飲酒シーンに適したアルコール含量の飲料を選択したいという自己選択の観点からも、低・ノンアルコール飲料には熱い視線が注がれています。アサヒビールは販売するビール類・RTD・ノンアルコールの全販売容量合計のうち、アルコール度数3.5%以下のアルコール商品とノンアルコール商品の割合を20%に高めることなどに取り組んでおり、この取り組みは他の大手ビールメーカーの動向にも大きな影響を与えそうです。
市販されている低・ノンアルコール飲料の中で、目を引く特徴を有するものを3つご紹介します。
アルコール分 0.00%ながら、ワインの本格感を味わえます。甘さが抑えられ、渋みがあり
食事にも合うものとなっています。
カロリーが60%オフとなっている、さわやかな白桃サワーです。グレープフルーツのつぶつも入っており、満足感があります。
100%果汁の水分を飛ばして濃縮し、スピリッツで還元した100%果汁のアルコール飲料となっています。白ぶどう、りんご、ピンクグレープフルーツ、パイナップルとラインナップがあり、果実の濃厚さを味わえる飲み心地となっています。
低・ノンアルコール飲料の動向について追ってきました。ますます、商品開発の加速が予測される中で、次はどのような切り口が出てくるのでしょうか。今後に目が離せません。
参考文献
1) ノンアルコール飲料に関する消費者飲用実態・意識調査 サントリー ノンアルコール飲料レポート2023 (詳細版)https://www.suntory.co.jp/news/article/mt_items/14492-1.pdf
2) 新しい時代の新しいお酒の楽しみ方「スマートドリンキング」
https://www.asahigroup-holdings.com/newsroom/detail/20210407-0301.html
今注目を集めている食品トレンド情報や
食品開発に関する資料を
無料でご提供しています。
是非この機会にご覧ください。
ペクチン、ゼラチン、キサンタンガム、
カラギナンなど
ハイドロコロイドに
ついて徹底解説。
ハイドロコロイドの概要から、
各種の特徴を全75ページにわたって
徹底に解説しています。
是非ご覧ください。
食品の企画・開発に関わる人のための専門メディア「食品開発ラボ」は、ユニテックフーズ株式会社が運営しています。
当社では創業以来独自の素材・製品で新しい食品の価値を創造することをコンセプトに、ペクチンをはじめとするハイドロコロイドの研究や素材を組み合わせたこれまでにない特性を持つ製品の開発、加えてお客様のご要望に応じた当社製品を実際の食品に用いた利用・応用技術の開発を行っています。
商品企画・開発において何かお困りごとがあれば、きっと当社がお役に立てると思います。
是非お気軽にお問い合わせください。