2015年以降日本でもどんどん拡大している「地理的表示」。その登録品の特徴とメリットとは?
「地理的表示」という言葉を知っていますか?
「あー、フランスのシャンパーニュ地方で作った発泡性ワインしかシャンペンとは呼べない、みたいなことでしょ?」
そう答えた方、正解です。ですが、今では半分正解、としか言えないかもしれません。確かに、スペインの有名な発泡性ワインにはカヴァ(CAVA)があるし、イタリアでは発泡性ワイン全体がスプマンテ(Spumante)と呼ばれます。それ以外に、最近はコンビニでも気軽に買えるスパークリングワインもあり、これらをシャンパンあるいはシャンペンと呼ぶことはできません。
けれども、「地理的表示」は今や日本の法律*で定められている、知的財産制度なのです。
農林水産省が「日本の産物の価値を高め、海外輸出の拡大を図るため」に、ヨーロッパの制度などを参考に作ったしくみです。登録産品につけられるマークは、大きな日の丸、富士山と水面をモチーフに、伝統・格式を感じる金色を使用した、日本らしさを強調したデザインが採用されています。
2015年(平成27年)、第一弾として、あおもりカシス、但馬牛、神戸ビーフ、夕張メロン、八女伝統本玉露、江戸崎かぼちゃ、鹿児島の壺造り黒酢の7品が登録された「地理的表示産品」はその後登録拡大を経て、現在(2018年6月20日時点)では62品目、10倍近くまで増えています**。
この「地理的表示(Geographical Indication=GI)」として登録が認められた産品にはいくつか特徴があります。言い換えれば、それが認められるための条件と言ってもいいでしょう。
まず、単に産地が限られているだけではなく、品質や特性がその地の気候・風土・土壌などの生産地の環境や伝統的な生産方法など人的要素に結びついていることが挙げられます。また、一定期間(概ね25年)継続して生産されていること。そして、単体の業者が生産しているだけでなく、生産者の団体が存在していること。登録の申請もこの団体を通じて行わなくてはなりません。
当初の7品目はすべて食に関するものでしたが、その後は「熊本いぐさ畳表」「伊予生糸」など自然素材に基づく工芸産品も含まれているのも新しい傾向と言えます。
では「地理的表示」に登録されるとどんなメリットがあるのでしょうか。
政府から広報発表されることでブランドとして「お墨付き」を得て、認知度が上がることは当然挙げられます。それよりも大きいのは、そのブランド名を用いて流通する権利が行政から保護されることかもしれません。つまり、その権利を侵害される、たとえば全く別の地の産品がブランド名を不正使用した場合など、行政として取り締まる対象になるため、本来の生産者が訴訟などの手間をかける必要がありません。安心して生産と品質の向上に専念できるというわけです。
保護される「地理的表示」は日本国内に限りません。昨年にはイタリア、エミリア=ロマーニャ州の「プロシュット・ディ・パルマ」(生ハム)が初の海外産品として登録されました。
農水省は、この制度の導入目的について、「生産者の権利保護」だけではなく「需要者の利益」にも役立てるとしています。つまり、おいしいもの、高品質なものを享受し続けられるためのしくみ、とも言えるでしょう。
生産者・生活者ともに利益をもたらす「地理的表示」。今後は、そのメリットが理解されることで品目がさらに拡大していくこと、他国・地域との食文化交流に活かされていくことなどが考えられます。ますます素材がもつ背景(ストーリー)に着目される社会になりそうですね。身の回りにある地名のついた産品について、「これは『地理的表示』として登録されているのかな?」と調べてみるのも面白いかもしれません。
・注釈
*「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」平成26年制定、27年施行
**地理的表示登録産品(農水省ホームページ)
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/register/
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