食品業界でも進む脱炭素化。カーボンニュートラルとは?海外の市販品も紹介

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今や、地球温暖化問題は、食品企業にとって大きな課題です。多くの企業が環境問題への取組みを進めており、なかには、製品のライフサイクルで排出される温室効果ガスの相殺に取り組む企業も見られます。この記事では、今後、食品業界でも重要になると考えられる「カーボンニュートラル」について解説するとともに、カーボンニュートラルを実現した海外食品企業の商品を紹介します。
(調査日:2022年9月)

カーボンニュートラルとは?

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること。つまり、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量をできる限り削減した上で、削減できない分を植林や森林管理などで吸収し、差し引き合計ゼロにするということです。現在までに、日本を含む120以上の国と地域が、2050年までにカーボンニュートラルの達成を宣言しています。*1国際連合によると、世界の温室効果ガス排出量の3割以上が食品生産によるものであり、生産、加工、配送など一連の過程で温室効果ガスが排出されます。*2食品企業にとってもカーボンニュートラルを実現することはこれからの大きな課題になると言えるでしょう。

カーボンニュートラルに向けた大手食品企業の動向

大手食品企業のあいだでは、すでにカーボンニュートラルに向けた動きが始まっています。スイスに本社を置く世界最大の食品・飲料企業であるネスレは、2030年までに温室効果ガス排出量を2018年比で半分に削減し、2050年までに実質ゼロにするための計画を公表済みです。世界的に人気のあるネスレブランドの「キットカット」については、2025年までにカーボンニュートラルを達成することを公約しています。温室効果ガスは、カカオやミルクなど原材料を生産する過程で特に多く発生しており、森林の再生や再生農業の拡大、再生可能な電力への移行を通じ、できるだけ削減される計画です。削減できない排出分に関しては、気候変動対策に基づいたオフセットに投資されます。*3

中国乳業メーカー最大手である伊利集団(Yili Group)は、2022年3月に中国で初めてとなる「ゼロカーボンミルク」の販売を開始しました。現在までに2種類のゼロカーボンミルクが販売されており、製造・配送・使用・廃棄に至るまで製品のライフサイクルにおいてカーボンニュートラルを実現しています。同社は中国食品業界初となるネットゼロ工場も所有しており、策定済みのロードマップに従って2050年までに段階的にカーボンニュートラルを実現させることを発表しています。*4

海外の市販品紹介

TENZINGのエナジードリンク
(写真提供:TENZING)https://tenzingnaturalenergy.com/

2016年創業でイギリスに本社を置くTENZINGは、「植物性」「低カロリー」「ナチュラルな原材料」「環境にやさしい」をコンセプトとするエナジードリンクを手がけています。同社は、積極的に環境問題に取り組み、削減できない温室効果ガスは、ローカルプロジェクトや製品の生産に関連するプロジェクトに投資することで相殺しています。TENZINGによると、同社の製品は世界初の「カーボンネガティブ」なエナジードリンクで、つまり、生産や流通の過程で排出される温室効果ガスよりも、温室効果ガスを吸収するプロジェクトに投資する方が多いというものになります。なお商品は、オリジナルタイプの場合1缶(250ml)あたり、カフェインは80mg、カロリーは48kcal、原材料には、緑茶、アセロラ、ガラナ、グリーンコーヒーなどが使用されています。ラズベリー&柚子、パイナップル&アサイーなどのフレーバーがあります。

FOCUSWATERのビタミンウォーター
(写真提供:FOCUSWATER)https://focuswater.ch/en/

FOCUSWATERは、スイスのビタミンウォーターブランドです。サステナビリティは同社の重要なコンセプトの1つであり、2019年以降、カーボンニュートラルを実現しています。同社の製品に関わる温室効果ガスの算出や、削減できない温室効果ガスを相殺するためのプロジェクトは、企業の気候変動解決プロジェクトを支援するClimate Partner社を通じて実施されています。製品は「低カロリー」「保存料無添加」「スイス製」を特徴とし、現在8種類で展開されています。フレーバーは、オレンジ&レモングラス、パイナップル&マンゴー、オレンジ&ドラゴンフルーツ、ルバーブ&ラズベリーなどがあります。

Jude’sは、イギリスでアイスクリームを中心に展開する食品企業で、すでにカーボンネガティブ(温室効果ガス排出量<吸収量)を実現している企業です。排出している温室効果ガスについては積極的に削減を進めており、同社は、アイスクリーム1リットルあたりの温室効果ガス排出量を2030年までに43%削減することを2020年に公表しましたが、昨年1年間で20%削減に成功しています。これには、流通の見直しや使用するプラスチック量の削減などが含まれます。Jude’sの商品は、現在、全体の28%が植物性です。環境負荷の観点から、今後は植物性商品の取り扱いを増やし、2025年までに小売商品の50%を植物性にすると同社は公表しています。植物性アイスクリームは牛乳の代わりにオーツミルクが使用され、バニラ、ストロベリー、塩キャラメル、チョコレートブラウニーなどのフレーバーで展開されています。
https://www.judes.com/

まとめ

世界的に食品企業のあいだで温室効果ガス削減に向けた取り組みが始まっています。日本も脱炭素社会に向かって動き出しており、今後日本においてもカーボンニュートラルな食品企業が増えていくと考えられます。

【参考資料】
*1https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/chikyu_kankyo/ondanka_wg/pdf/002_03_00.pdf
*2https://news.un.org/en/story/2021/03/1086822
*3https://www.nestle.co.jp/csv/impact/net-zero
*4https://www.yili.com/cms/rest/reception/articles/show?id=2733

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