コンビニやスーパーなどで「生」と名の付くスイーツをしばしば目にしませんか。生系スイーツといえば、昨年は生ドーナツがSNSでブームとなりましたね。今回の記事では、生チョコや生キャラメルから始まり現在も人気の絶えない「生」系スイーツについて注目しました。
「生」と聞くと、真っ先に生肉、お刺身など焼いていない状態の食材をイメージするかと思います。ではスイーツにおける「生」とはどのようなものを言うのでしょうか。そこで、現在販売されている商品名に「生」とつくスイーツをいくつか購入してみました。
「生」スイーツの市販品の一覧
商品例を見てわかるとおり、「生」と称する商品には加熱もしくは焼成されたものがほとんどでした。さらに、これらの商品には「生」についての具体的な定義が定められているわけではなく、記載のためのルールもありません。
そこで「生」と記載のある商品に共通点はないか、上の商品の食感比較を行いました。その結果、「生」とつく商品には主に3つの訴求のいずれかが共通して記載されてあることがわかりました。
≪外観や商品訴求に共通する特徴≫
・「しっとり」、「やわらか」の訴求がある
・生クリームが練りこんである
・ホイップが入っている
≪食感からわかった特徴≫
・従来の商品よりも柔らかくしっとりしている。
・生クリームが練りこまれているためか、しっとり且つとくちどけが良くなり、「生」感に寄与している。
・ホイップが入っており生クリームのような濃厚感がある。
以上の市販品評価の結果から、生系スイーツにおける「生」とは、①柔らかくしっとりした食感にすることで、焼成前の水分が多い状態つまり「生」の食感を疑似的に表現している。②生クリームをイメージしやすい商品設計になっている。のいずれかもしくは両方に当てはまるスイーツを「生」と呼んでいると思われます。
これらの定義を踏まえ、次の章では過去の生系スイーツと最近の生系スイーツについてご紹介します。
これまでに、生系スイーツはどのようなものが発売されてきたでしょうか。これまでにブームになったもの、最近ブームになっている代表的な生系スイーツを発売年、店舗とともに下記に示しました。
・生どらやき(1987年、カトーマロニエ)1)
・生チョコレート(1988年、シルスマリア)2)
・生キャラメル(2007年、花畑牧場)3)
・生カヌレ(2020年、LA SOEUR)4)
・生ドーナツ(2023年、I‘m donut?)5)
中でも生チョコレートや生キャラメルはかつて人気を博しました。生どら焼きは、今では多くの銘菓店で販売され続ける人気商品です。生カヌレ、生ドーナツは最近SNSでも話題のスイーツです。
これらの生スイーツの誕生を受け、CVSチェーン店でもPB商品として多くの生系スイーツが発売されています。コンビニスイーツのクオリティさることながら、生系スイーツについても元祖に負けず劣らずSNSで話題となっています。
そこで、過去1年間のCVSにおける生系スイーツの発売品数を表に示してみました。
大手CVSにおける生系スイーツの発売品数6)
表を見ると、三社とも3か月のスパンで少なくとも2商品は生系スイーツを発売しており、多いときは5つもの商品を発売していることがわかります。そして過去1年間でセブンイレブンでは18商品、ファミリーマートでは17商品、ローソンでは13商品もの生系スイーツが発売されていることがわかりました。このデータから、今後も生系スイーツは人気の絶えない商品となるのではないでしょうか。
では、以上の生系スイーツにおける特徴が消費者の興味を引く理由はいったい何なのか、次の章で考察してみたいと思います。
皆さんは「生」という言葉からどんな食感をイメージしますか。実は「生」という言葉自体は、サクサク、とろとろなどのように直接的に食感を表現する言葉ではありません。ですが、日本人であれば「生」という表現から様々な食感の想像がつくと思います。例えば、しっとり、とろける、もっちり、柔らか、などが挙げられます。
実は日本における食感を表す語彙は世界でも多く、445種もあります7)。英語やドイツ語の100語、フランスの227語と比較しても200以上の食感を表すワードが使われており、これは日本人が味の他に食感も重視していることを意味しています。
生という言葉は、上述したような様々な食感がぎゅっと詰まった表現です。「生」という言葉から多様な食感の楽しさが想像されたり、本来と異なる真新しい食感であることが瞬時に想起されたりするため、消費者はついつい買ってしまうのではないでしょうか。
さて、今回は生系スイーツをテーマとして人気の秘訣を考察しました。新商品開発の際は、生とはほど遠いスイーツを生食感にしてみるのも消費者の興味を引くことにつながるかもしれません。今回の記事が、日本のスイーツブームに次なる一手を打つ参考になれば幸いです。
【参考文献】
1) しんきんコネクト
https://shinkin-connect.jp/search2/?mode=disp&key=1947
2) シルスマリア HP
https://www.silsmaria.jp/
3)花畑牧場 HP
http://www.hanabatakebokujo.com/products/caramel.html
4)カヌレ専門店ラ・スール 公式インスタグラム
@lasoeur.02
5) I’m donut? 公式インスタグラム
@i.m.donut
6) コンビニ新商品データベース「SEEDs」
https://www.seeds20.com/
7) 日本家政学会誌 早川文代 現代日本人の食感表現 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhej/60/1/60_1_69/_pdf/-char/ja
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