人類は新しい「肉」を手にした。
①「小麦たんぱく」とは

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「肉でない肉」が主流の時代が来る?

近年、牛・豚・鶏といった本来の肉、つまり「動物性のたんぱく」に替わり、「植物性のたんぱく」が急速に注目を浴びているのはご存じのとおりです。脂質を同時に摂ってしまう、カロリーが高い、と見られがちな「動物性たんぱく」に対し、「植物性たんぱく」は健康的なイメージや安心感があることがその大きな理由でした。
カップ麺の「謎肉」が話題になったのは記憶に新しく、つい先日も著名なフライドチキンのチェーン店が植物由来の「ビヨンド・ミート」を使ったフライドチキンを試験販売するという記事を目にしました。「インポッシブル・バーガー」といった名称で商品化しているハンバーガー店も増えています。
その傾向は、今後ますます強くなることはあっても、後退することはないと思われます。
「肉でない肉」がたんぱく質摂取の主流になる時代が、すぐそこにやってきているのかもしれません。

「肉離れ」の理由

その流れを引き起こしたのは、実は「健康的」という抽象的なイメージだけではありません。もっと具体的に、動物の肉から人間の食生活が遠ざかる原因は生まれていました。

①豚コレラなどの発生
アフリカで生まれたとされる豚コレラは人間にうつる病気ではありませんが、2018年中国東北部で発生が確認され、19年には全土に広がりました。日本でも症例が確認され、畜産業界に大きな衝撃をもたらしました。現在世界的に、安全な豚肉価格は高騰しています。
また食肉牛のBSE(牛海綿状脳症)は、ヒトの「クロイツフェルト・ヤコブ病」発症との関係が疑われ、やはり食肉業界に致命的と言える痛手を与えました。
こうした病気が食肉のイメージを落とし、特に先進国における「肉離れ」の傾向を進ませたことは否定できません。

②宗教上・信念上の理由
イスラム教徒(ムスリム)のハラル対応として、豚肉やその関係成分を一切含まない食を提供することはもはや外食産業では常識になりつつあります。カレーの「CoCo壱番屋」ではいち早くこのトレンドに対応し、ベジタリアンカレーを店舗限定の試験販売から全店販売に拡大しました。ベジタリアンからさらに進んだヴィーガン(動物性の食品を一切受け付けない)の食生活をする人も増えています。「ベジタブル・ミート」という名称の食材も生まれているほどです。

③「蛋白原料の枯渇」危惧
食肉動物の病気などが仮に無かったとしても、世界的な人口増加によって、肉の供給が追いつかなくなる危惧が指摘されています。その結果、実験室から生まれた「培養肉」や、昆虫食といった肉の代用物が注目を浴びている傾向もあります。

「大豆たんぱく」の弱点

さて、そうして世界で広く食されるようになった「植物性たんぱく」の主役と言えば、長いこと「大豆たんぱく」でした。「わが世の春」を謳歌しているように見えた「大豆たんぱく」。けれども、今その常識を変える新しい流れが生まれています。新しい「肉でない肉」の主役は何か――。それは「小麦たんぱく」になる可能性が大きいのです。
その理由は、「大豆たんぱく」に原料である大豆の本質および使用上の「問題」があり、逆に「小麦たんぱく」によりそれが解消されることです。
では、大豆たんぱくの「弱点」となる問題とは、何でしょうか。

①「遺伝子組み換え」に関わる表示の問題(non-GMO)
世界的に遺伝子組み換えに対する規制は厳しくなっており、2023年度からは「遺伝子組み換えでない」(non-GMO)と表示できる原料の範囲が変わる予定です。
これまでは、意図せざる混入が起きる可能性から、「遺伝子組み換えでない」という表示が、「遺伝子組み換えのある原料」の混入率5%までは容認されてきました。これが今後厳格化され、「遺伝子組み換えでない」と表記できるのは、混入率0.01%程度になると見られます。国産大豆を原料とした「大豆たんぱく」に関しては、今後も表記が可能と考えられますが、大きな割合を占める輸入大豆に関しては、別の表示とする必要が生まれるのは確実です。
このことが、食材調達に及ぼす影響は非常に大きいと言わざるを得ません。国産大豆や、non-GMOの海外産大豆を仕入れる価格が急騰することは間違いないからです。
一方小麦に関しては、遺伝子組み換え食品の表示義務のある品目対象外で、海外でも遺伝子組み換え小麦の商業栽培が認可されていないため、流通は実質されていないと言えます。したがってnon-GMOの潮流が進めば進むほど、「小麦たんぱく」に有利な状況が生まれると言えるのです。

②価格の高騰
non-GMOの大豆を求めた場合以外にも、大豆の仕入れ価格を押し上げる要因は指摘されています。それは先に挙げた、動物の病気や食肉資源の枯渇により、大豆の需要が増加することです。またこの『食品開発ラボ』の別なレポート(TOFU THE FUTURE)でも取り上げているように、「豆腐」も世界的にブームになっています。受給バランスの変化によって価格が高騰する傾向はすでに現実になっているのです。

③大豆臭の問題
大豆には独特な香りがあります。料理の中で「風味」ととらえられる程度であればむしろ「強み」になりうるのですが、食品産業の原料として加工する過程では、かなり強烈な「匂い」となって発散されます。工場で働く人々や、周囲への環境負荷となっている例は少なくありません。
これに対して、小麦にはそうした「匂い」がほぼなく、問題は起きないと見られています。

「小麦たんぱく」とは何か

それでは、いよいよ「小麦たんぱく」について見ていきましょう。

小麦は、米、トウモロコシと並び世界の穀物生産高の4分の1を占める主要な穀物です。穀物というと、主食として炭水化物のイメージが強いのですが、実は蛋白質も含まれています。特に小麦は、胚乳の外側に近い部分に蛋白質が豊富で、挽いて小麦粉にした形では10%前後、含まれています。(この含有量によって、6.5~9.0%程度の薄力粉、11.5~13%の強力粉と分けられる基準ともなっているのです。)

(参考)
https://tg-uchi.jp/topics/3824

この小麦に含まれる蛋白質を分離・抽出し、食材料として効率的に活用できるようにしたのが「小麦たんぱく」です。
粒状の「小麦たんぱく」には、60%、蛋白質が含まれています。さらに上で述べたように製造上いやな「匂い」を発生しない、自由な形に成型しやすい、油成分をより多く吸収するなど様々な利点があります。

「大豆たんぱく」に取って替わる?

健康的で経済合理性もあることで注目を浴びる「小麦たんぱく」。「大豆たんぱく」に取って替わり、今後、植物由来蛋白質の主役に躍り出る可能性は十分にあります。ひいては、肉に変わって「蛋白源」そのものの代表格にも――?
次回は、「小麦たんぱく」の実際の食材への活用について、世界の動向とユニテックフーズ(株)の研究・商品開発の取り組みを中心にご紹介していきたいと思います。

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