欧米の焼き菓子市場はどのようになっているのか気になることはありませんか。そこで今回は、弊社が現地視察をし、海外の焼き菓子市場の動向を捉えた上で探り出した、焼き菓子の差別化を図るためのノウハウをご紹介します。
まず基本として、焼き菓子は嗜好品であることから「おいしいこと」が必須です。では、その焼き菓子のおいしさを差別化するにはどうすればいいのでしょうか。様々な方法がありますが、ここでは特に「色沢」「味」「食感」「ボリューム」の4つに注目して解説します。
色沢とは、視覚的なおいしさのことです。おいしいの記憶を導くためにも欠かせない要素です。また味は、菓子であるため甘味がメインではありますが、他にも様々な味があり、組み合わせることで新しい可能性が生まれます。また食感は「サクサク、パリパリ、もちもち、しっとり」など食べた時の感覚、ボリュームは焼き菓子にとって豊かさという魅力を持たせるために欠かせないものです。この4つそれぞれの差別化の方法について詳しく解説していきます。
人がおいしさを感じるとき、視覚は重要な感覚の一つです。色・形によって「おいしい」の記憶を導く大切な役割でもあります。また食品の場合、色は鮮度や品質のよしあしの判断基準にもなります。買う前に食べたくなるためには、色や光沢が最重要とされています。このことから、食欲や購買意欲をかきたてる食料品のパッケージの配色や、栄養とのバランスに至るまで、食べたくなる視覚の演出が必要になります。
例えば、アメリカンスイーツのドーナツやマフィンなどはビビッドなカラーが特徴的で購買意欲をわき起こします。一方、フランス菓子は繊細な色彩が特徴的で、上品な味がイメージされます。
この色沢で群を抜いている例として、FAUCHONの「タルト・オ・ジュンヌ・レギューム」があります。これはタルトの上に緑黄色野菜などがふんだんに敷き詰められているスイーツで、野菜の鮮やかな緑色とスイーツの絶妙なコラボレーションにより、他にはない差別化が図られています。
味は、五味である「甘味・塩味・酸味・苦味・うま味」に分類されます。味は口内で混ざることにより、相乗効果や抑制効果、対比効果などが得られます。
相乗効果は、例えば異なる種類のうま味成分を合わせることで、さらに強いうま味を感じるといったことです。また対比効果は、甘味に少しだけ塩味を加えることで、甘味を強く感じるといったことです。
近年では、焼き菓子でも単に甘いだけでなく塩味・酸味などを取り入れているものも増えており、味で差別化を図る取り組みがみられます。味で差別化をうまく行っている例をご紹介します。
様々な味の相乗効果が得られる例です。バゲットのサンドイッチに似せたエクレアで、ジャスミンの香りをつけたカスタードクリーム、マンゴーの角切りマンゴーゼリー、イチゴの薄切りとイチゴのコンポートがバゲット風の生地に挟まっています。口にすると最初はイチゴの味が優位にきますが、すぐにマンゴーとジャスミンの味や風味が口に広がります。
「香辛料×チョコ×フルーツ」「チョコ×フルーツ」といった甘味に辛味や酸味をプラスする手法です。ピエールエルメのマカロンの中には、ワサビ風味ホワイトチョコレートガナッシュと苺のジュレを使った「マニフィック」というものや、パッションフルーツ風味ガナッシュとショコラオレを使った「モガドール」があります。
近年は野菜を使った焼き菓子も増えていますが、中でもパティスリ・デ・フランドル社の野菜50%入りゴーフレットは注目です。食物繊維が豊富で、10枚でたったの62kcalという売り出し方で、野菜とゴーフレットという焼き菓子の絶妙な組み合わせを実現しています。
日本人は、世界の中でも食感に敏感であるといわれています。それは、食感を表す「食感表現用語(テクスチャー用語)」の種類からもわかります。これは「サクサク、もちもち、つるつる、パリパリ」といった言葉のことです。
各文献によると、日本にはこの食感表現用語が445語にも上るといわれています。しかし食に敏感といわれるフランスでも227語にとどまり、日本のおよそ半数程度しかないことがわかっています。
この日本に食感を表す言葉が多い理由として、和食や洋食、中華、フレンチ、魚、肉、木の実などの食経験が豊富なこと、素材を楽しむ・生のままの食を楽しむ食文化であること、食感に対するこだわりがあること、擬音・擬態語がもともと豊富であることなどがあるといわれています。
食感で差別化を図っている例を3つご紹介します。
しっとり×サクサクのコラボレーションを実現している商品です。クリスピーシリアルとチョコレートフィリングが柔らかいクレープで包まれています。
温めると食感が変わる商品です。カカオ50%のチョコレートとペカンナッツでつくられたブラウニーですが、電子レンジで15秒温めるとブラウニーの食感からウルトラソフトな食感にチェンジします。
日本の各所で販売されているロールケーキ商品には「もち食感」「ふかふか」「新雪のような淡い口どけ」などの表現が付加されており、それぞれ他にはない新鮮な食感がイメージされます。
近年の生活者のニーズは「モノの豊かさから心の豊かさに変わった」といわれるようになりました。モノよりもコトを重視する近年の消費者たちは、モノを買った後に生まれる体験のほうに価値を置くようになっています。このことから、食品でも「おいしい」だけでなく、「体験」「感動」という切り口が重要視されるようになっています。
例えば、感動的なボリュームで差別化している例として、次の2つがあります。
「Red Power レッド・パワー」という商品は、フィナンシェの上にイチゴのババロア、イチゴのクーリ、ライチのシャンティイー(泡立てた生クリーム)がのっており、他にはない贅沢なずっしりとしたリッチ感があります。
近年のパンケーキは「高さ」が追求されてきました。これにより、ボリュームの満足感はもちろん、飲食店で目の前に運ばれてきたときや食べる前のあっと驚くインパクト性も一つのボリュームの価値といえます。
いかがでしたでしょうか。焼き菓子における4つの差別化要素をご紹介してきました。いずれも、焼き菓子市場における差別化には重要なポイントになるものです。ぜひ商品づくりに生かされてみてください。
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