近年、日本ではノンアルコール飲料市場が好調で、さまざまなノンアルコールビールやチューハイ、ワインが販売されるようになりました。海外でも数年前から市場が拡大し、特に若い世代でブームとなっています。今回は、海外におけるノンアルコール飲料市場の動向と、実際に販売されているユニークな商品をご紹介します。
アメリカではコロナ禍の少し前からノンアルコールのトレンドが始まり、急速に広がりました。従来のアルコール入り飲料と比較すると市場は小さいものの、ノンアルコール飲料の売上は確実に伸びています。NielsenIQが発表したアメリカの小売データによると、2021年5月から1年間のノンアルコール飲料の売上は、ビールが3億1,600万ドル(21%増)、ワインが5,000万ドル(20%増)、蒸留酒が4,500万ドル(116%増)と大幅な伸びを見せました。一方で従来のアルコール入り飲料の売上は、ビールが4%、ワインが6%、蒸留酒が1%、それぞれ減少しています。1
ノンアルコール市場を牽引するのが若い世代です。アルコールを完全に断つのではなく、「お酒を飲むけれど、適正を保つ」という考えが広がり、アルコールに対する捉え方がシフトしています。この世代は、身体的にも精神的にもアルコールを過剰に摂取した場合の健康に与え得るネガティブな影響について認識するようになっているのです。
欧米では最近、「ソバーキュリアス(sober curious)」という言葉が若い世代で流行しています。これは、お酒は飲めるけれど、あえて飲まない選択肢をするという意味で、「sober(酒に酔っていない状態)」と「curious(好奇心旺盛な)」という英単語を組み合わせた造語です。また、ソバーキュリアス以外にもノンアルコールに関連するキーワードがトレンドになっています。イギリス発の「ドライ・ジャニュアリー(Dry January)」は「1月は禁酒をしましょう」という試み。1,2そして、ノンアルコールのカクテルを意味する「モクテル(mocktail)」は「mock(擬似の)」と「cocktail(カクテル)」を組み合わせた造語で、近年日本でも見受けられるようになっています。
以前はお酒の代わりとしてセルツァー(炭酸水)やソーダ(甘い炭酸飲料)を飲むのが主流でした。しかしノンアルコール飲料に関心を持つ消費者が増えてきたというトレンドを受け、企業は、よりおいしさを追求した商品や、パッケージのデザインにこだわった商品を市場に投入し、ノンアルコール飲料の多様化が進んでいます。ビールだけでなく、ワイン、スピリッツ(蒸留酒)に至るまで幅広く商品のラインナップが展開されています。ここでは海外で販売されている商品を3つご紹介します。
アメリカ・ヴァーモント州を拠点とするTÖST は、ノンアルコールの発泡性ドリンクを展開しています。同社のコンセプトは、「アルコールを飲む人も飲まない人も皆が同じように楽しい時間を過ごせる」ことです。ホワイトティーやジンジャーを使った、すっきりとした辛口のフィニッシュが特徴の微発泡性ドリンクで、オリジナルタイプとロゼタイプの2種類の展開となっています。また、TÖSTのボトルは、ワインボトルのようなデザインになっている点も特徴です。
TOASTは、サステナブルなビール作りに取り組むイギリスに拠点を置く醸造所です。同社は「廃棄予定のパン」をビール作りの原料としています。TOASTによると、イギリスで廃棄が最も多い食品の1つがパンであり、生産されたうち44%が廃棄されているとのことです。同社のビールはアルコール度数5%前後のものが主流ですが、2021年12月から0.5%のラガービールが主力ラインナップに加わりました。シトラスやスパイスを感じられる仕上がりのビールとなります。
2018年にデンマークのコペンハーゲンで設立されたISHは、ノンアルコール飲料を専門に取り扱うブランドです。ジンやラム、テキーラを含むスピリッツ(蒸留酒)、白とロゼのスパークリングワイン、そして缶入りカクテルと幅広くノンアルコール商品を展開しています。従来のアルコールと同じような風味を出すためにナチュラルな材料を使用しており、例えばスピリッツにはナツメグやジュニパーベリーを用いています。ISHの商品は40以上の国際的な賞を受賞し、15ヵ国以上で商品を展開中です。
欧米では新型コロナウィルスに関する規制を撤廃する国も増えてきています。コロナと共存する社会になるにつれ、コロナ禍以前のように他人と飲食を共にする機会が増大することが想定されます。そうした中でも、引き続きノンアルコール市場が好調を維持するのか、あるいは、新たなトレンドが生まれるのか今後の飲料市場の動向にも注目が必要です。
【参考文献】
1https://edition.cnn.com/2022/06/05/business/non-alcoholic-trend/index.html
2https://www.usatoday.com/story/money/food/2022/06/22/delicious-drink-without-buzz-non-alcoholic-beverages-rise/9119514002/
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