暑い夏をどう乗り切る?近年の熱中症対策食品・飲料について解説します。

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近年、地球温暖化により100年間で全国における夏季(6月から8月)の平均気温は約1.25℃上昇1)、東京における猛暑日(最高気温が35℃以上の日)も増加傾向にあります2)。7月から9月における熱中症患者数は14年間で2.3倍、死亡者数は2.6倍となっており3)、一人一人が熱中症対策を行っていくことの重要性が高まっています。熱中症は「体温上昇」と「発汗に伴う水分・塩分不足」によって引き起こされるとされています4)。そのためコンビニやスーパー、ドラックストアなどでは水分・塩分を手軽に補給できる食品・飲料が多く販売されています。近年では水分・塩分補給に加え、体温を下げることやその他栄養成分にも着目した商品も販売されています。今回はこのような熱中症対策食品・飲料のイマについて解説します。

どんなものが熱中症対策食品・飲料?

日本の夏(6〜8月)平均気温偏差の経年変化(1898〜2023年) 出典 : 気象庁1)

厚生労働省は熱中症の対策において、水分だけでなく発汗によって失われる塩分(ナトリウム)も同時に補給することも重要としています5)。「全国清涼飲料連合会」は正確な情報伝達と市場の混乱防止のため、厚生労働省の熱中症対策に関する見解をもとに以下の「『熱中症対策』表示ガイドライン」を制定しています6)。このガイドラインの基準を満たす商品のみ「熱中症対策」の用語を使用することができます。
「ナトリウム濃度として、少なくとも、飲料100ml あたり40~80mg※1 含有する清涼飲料水。 (※1 この値は、厚生労働省HPのマニュアル記載の値に基づく。食塩相当量として0.1~0.2g。)」
一方、食品に関してガイドラインは設定されていないため、薬機法等に違反しないよう表示には注意が必要です。
塩分(ナトリウム)以外にも、「凍らせて飲むことで体温を下げられる」や「ビタミン、クエン酸、ブドウ糖など熱中症対策に有効な成分を配合している」など多様な訴求が行われています。

熱中症対策食品・飲料市場の推移

飲料の市場については新型コロナウイルスによる外出規制により縮小していたものの、規制の緩和に伴い増加傾向にあります。富士経済が2023年7月に行った調査によると、2022年は2億8670万円、2023年には3,151億円の市場規模になると見込まれています7)
食品の市場については調査されていないものの、塩分チャージタブレッツ(カバヤ食品)は2009年から2019年にかけて売上個数は100倍まで伸びました。これは気温上昇や東日本大震災に伴う計画停電などで熱中症への意識が高まった結果だと考えられます8)
このように熱中症対策への関心は年々高まっており、今後もさらなる市場拡大が期待されます。

熱中症対策食品・飲料にはどんな形態がある?

これまで熱中症対策商品はスポーツドリンクなど飲料が多く販売されていました。しかし近年はゼリーやタブレットなど、より手軽に水分や栄養成分を摂取できるものや、アイススラリーなど体温を下げることに特化した商品も多く販売されています。

飲料

飲料はこれまで経口補水液OS-1(大塚製薬)やポカリスエット(大塚製薬)、アクエリアス(コカ・コーラ)などの水分・塩分補給を訴求するものが主でした。近年は熱中症への関心の高まりから、ソルティライチ(キリン)やグリーンダカラ(サントリー)、健康ミネラル麦茶(伊藤園)など様々な飲料においてガイドラインに適合するものは熱中症対策が訴求されています。

ゼリー

ゼリーは飲料よりも飲みやすく、咀嚼・嚥下が困難な方や小さなお子様にも用いることができます。また飲料と異なりソフトパウチに入っているため、凍らせても容易に飲める点や飲んだ後につぶせる点がメリットとして挙げられます。
飲料としても発売されている経口補水液OS-1(大塚製薬)やポカリスウェット(大塚製薬)のゼリータイプだけでなく、パウチゼリーで多くのシェアを占めるinゼリー(森永製菓)からも熱中症対策商品が発売されています。また熱中塩蒟蒻ゼリー(ジェイファーム)などのように個包装でも販売されているものもあります。

アイススラリー

アイススラリーは液体に細かい氷の粒子が分散した状態の飲料です。飲料やゼリーを凍らせたものよりも流動性が高いことから、より身体の内部を効率よく冷やせるというメリットがあり、近年注目されています。消防などの熱中症の危険性が高い環境下でもその有用性が確認されています9)。
ポカリスエット(大塚製薬)、リポビタンD(大正製薬)、飲む氷Ume(赤城フーズ)など種類は少ないものの、水分・塩分補給と同時に熱を下げられるという優れた熱中症対策商品といえます。


ポカリスエットアイススラリーを出した時の様子
流動性がありつつ保形性も高い物性。シャーベットと異なり、滑らかな食感。

タブレット

タブレットは水分を摂取することなく塩分やその他栄養成分を手軽に摂取することができます。そのため発汗や水分の取りすぎによって血液中のナトリウム濃度が薄くなりすぎる「低ナトリウム血症」10)になった方に適しています。一方、飲料と異なり食品では熱中症に関するガイドラインが策定されていないため表示には注意が必要です。
塩分チャージタブレッツ(カバヤ食品)やinタブレット塩分プラス(森永製菓)など他にも多くのメーカーから販売されています。

まとめ

今回は熱中症対策食品・飲料について紹介しました。近年は水分・塩分補給だけでなく、体温低下やその他栄養成分の訴求をする商品も増えています。商品形態は多岐に渡るため、消費者が自分に合った商品を選択することが重要です。今後も気温上昇に伴って熱中症対策への関心は高まっていくと予想されるため、市場や商品の発展に注目です。

参考文献

1) 日本の夏(6〜8月)平均気温偏差の経年変化(1898〜2023年)
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/sum_jpn.html
2)大都市における猛暑日日数の長期変化傾向
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/himr/himr_tmaxGE35.html
3)令和5年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況
https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/r5/heatstroke_nenpou_r5.pdf
4)熱中症について学ぼう:熱中症のメカニズム
https://www.netsuzero.jp/learning/le12
5)厚生労働省:職場における熱中症の予防について
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei33/
6)「熱中症対策」表示ガイドライン
https://www.j-sda.or.jp/guideline/regulations_and_guidelines/heatstroke-guideline.php
7)清涼飲料市場における健康や嗜好などをキーワードにした注目12品目を調査
https://www.fuji-keizai.co.jp/press/detail.html?cid=23078&la=ja
8)カバヤの「塩分チャージタブレッツ」 10年で販売数100倍に
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/casestudy/00012/00226/
9)“飲める氷”「ポカリスエット アイススラリー」 消防など過酷な環境の熱中症対策にも
https://www.ssnp.co.jp/beverage/173170
10)熱中症予防の意外な落とし穴!「低ナトリウム血症」とは?
https://www.health.ne.jp/library/detail?slug=hcl_5000_w5000599&doorSlug=natsubate

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