近年は物価の上昇が顕著ですが、食品においても様々ものの値上げが話題になっています。特に2024年はお米の品不足と価格上昇が大きく問題になりました。そんな中で、卵の価格も再び高騰しています。2023年前半に高騰した価格は、2024年の始めには一度落ち着きをみせましたが、再度上昇しております。高騰の要因としてどのようなものが挙げられるのか、見ていきます。
まずは直近の卵の価格推移を確認していきます。JA全農たまご株式会社では鶏卵相場 (円/kg)を公表しています。ここで東京全農のMサイズの推移は図のようになっています。2023年の6月には350円/kg前後になり、2022年の1月に比べて2倍以上に高騰しました1)。そこから、2024年の1月には200円/kg以下に下落しましたが、12月の時点では300円/kgに迫る価格まで再度高騰しています。
鶏卵の価格(円/kg)の推移 出典 : 参考文献1
卵は、ケージ飼いの推進、機械化の推進、飼料の改良などの努力によって、長年安定した価格で供給され、物価の優等生と呼ばれていました。しかしながら、下記に挙げる要因によって再び価格上昇の基調となっています。
2024年の夏は「最も暑い夏」といわれるほど、酷暑でした。酷暑の影響は鶏にも大きく、産卵率や卵殻質の低下につながります2)。酷暑の影響で、夏以降は卵の供給量が低下し、価格の高騰につながりました 3)。
①の酷暑が要因で、夏以降供給量が減る一方で、9月のお月見や12月のクリスマスなどで需要は高まります。そのような、需給のバランスの変化が、価格の上昇につながっています。
エッグショックをもたらした22/23シーズンを並ぶ、もしくは上回るようなペースで鳥インフルエンザが発生しています。今期は2024年10月17日目に国内1例目が発生し、12月10日時点で13事例が発生し、147.9万羽が殺処分になっております。更なる発生の恐れもあり、鳥インフルエンザによる価格への影響は今後により一層出てくると考えられます 4)。
近年価格変動が激しい卵市場ですが、より長期的な展望を見ていきます。一般社団法人 日本養鶏協会の「鶏卵の需給見通し (2024年9月)」によると、2030年時点で、需要は262万㌧、供給は273万㌧と供給量が需要量を約11万㌧上回ると見ており、鶏卵価格の低下及びそれに伴う生産基盤の弱体化、更には生産者の廃業等が予想されると言及しています。鳥インフルエンザへの防疫体制を強化するとともに、 今後加が見込まれる中食需要を含めた需要を増加させるための消費拡大を推進し、需要に見合った生産のあり方についての検討することが、将来的な人口減少が確実視されるなかでの国内鶏卵市場を維持して持続可能な産業へと発展させるために必要とまとめています。
現在進行中の卵の価格動向の変動の要因を見ていきました。また、長期的な卵の需給の安定化にむけての様々課題があることが浮かび上がってました。卵は加工食品に欠かせない食材であるため、今後の動向に注目です。
参考文献
1) JA全農たまご株式会社 相場情報
https://www.jz-tamago.co.jp/business/souba/graph/ (2024年12月10日閲覧)
2) 全国農業協同組合連合会 ちくさんクラブ21 「夏場対策のポイント」卵殻質の低下と暑熱対策
https://www.chikusan-club21.jp/article/3312 (2024年12月11日閲覧)
3) 農林水産省 令和6年11月 食肉鶏卵をめぐる情勢
https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/tori/r6_hpai_kokunai.html(2024年12月11日閲覧)
4) 農林水産省 令和6年度 鳥インフルエンザに関する情報について
https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/tori/r6_hpai_kokunai.html(2024年12月11日閲覧)
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