社会の高齢化が進む中、親の介護に直面し、初めてのことが多く困惑している方も多いと思います。特に今回は高齢者の「水分補給」に着目し、高齢者の脱水症、水分補給時の課題、“リセットゲル”による効果的な水分補給方法についてご紹介します。
一般的に脱水症とは体内の水分量が不足している状態を指します。脱水症に陥ると酸素や栄養を体中に運搬できなくなり、様々な生理機能に支障をきたし、最悪の場合死亡することもあります。
特に高齢者は以下の理由から脱水症になりやすいとされています。1)体液量が大人よりも10%ほど少ない、2)腎機能の低下により排尿量が多い、3)感覚機能の低下によりのどの渇きを感じにくい、などです。そのため高齢者は意識的に水分補給する必要があります。具体的な水分摂取量の目安は、食事以外で約1~1.5 L/日とされています。
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しかし高齢者には“誤嚥”という課題がつきものです。誤嚥とは、飲食物など本来胃へ運ぶものを誤って気管や肺に入れてしまうことです。感覚機能が低下している高齢者は誤嚥をおこしやすく、誤嚥性肺炎につながることもあります。特に水分に関しては、サラサラした液体は食道を通るスピードが速く、まとまりもないので誤嚥をおこしやすいとされています。
また、介護者が水分補給に気を使ってもなかなか飲んでくれないという課題もあるようです。理由は様々ですが、のどの渇きに気付きづらい、トイレが近くなる、飲みにくい・むせてしまうなどがあげられます。
誤嚥を防止できる水分補給飲料は日々開発されています。例えばキサンタンガムで液体にとろみをつけて嚥下速度を下げたり、寒天やゼラチンで液体をゲル化させてまとまりを持たせたりしています。しかしそれぞれデメリットもあります。キサンタンガムは口の中でまとわりつくような粘性があります。また寒天は喫食時の離水(ゲル化していない水分)が発生し、ゼラチンは風味が悪かったり口の中で溶けてしまったりする場合があります。いくら誤嚥防止に優れた飲料でも飲んでもらえなければ意味がありません。そのため、離水が少なくゼリー自体がばらけにくいという物性を持ちながら、すっきりと飲みやすい水分補給ゼリーが求められています。
・離水しにくい、べたつきにくい
離水が多いと誤嚥リスクも高まります。一方で粘度上げるとべたつき飲みにくくなります。誤嚥リスクと喫食のしやすさのバランスが重要です。
・再セット性がある
ゼリー状の場合、飲みこむ際にゲルが崩れてバラバラになってしまうと誤嚥リスクが高まります。咀嚼後もまとまり感のある物性が必要です。
このような物性を目標として生み出されたのが「リセットゲル」です。リセットゲルは静置することで再びまとまるゲルです。さらに崩したときの離水が少なく、飲みこむ際に張り付くことなく適度なスピードで滑り落ちていくという特徴があります。リセットゲルの物性を動画でご紹介します。
高齢者向け水分補給ゼリーの物性として適したリセットゲルですが、その物性づくりにはゲル化剤の調整や製造工程における調整が必要となります。ユニテックフーズではリセットゲル用のゲル化剤やその商品作りのお手伝いもしておりますので商品開発でお困りの際はお問い合わせください。
(参考文献)
・楠八重政明, 月間フードケミカル, 426, 37.
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