アメリカで話題のお酒「ハードセルツァー」

このエントリーをはてなブックマークに追加

今アメリカで、「ハードセルツァー(hard seltzer)」と呼ばれるアルコール入り炭酸水の売上が大幅に増加しています。Boston Beer Company社のCEOである Dave Burwick氏は「ハードセルツァーへのシフトは、1970年代のライトビールの導入以来、最も大きなカテゴリーシフトである」と述べています。(※1)今回は、アメリカにおけるハードセルツァーのトレンドについてお届けします。
(調査日:2020年10月)

ハードセルツァーとは?

ハードセルツァーの原料は基本的に、炭酸水、アルコール、風味づけのためのフルーツであり、サトウキビの糖分による発酵で生み出されたアルコールが使用されています(麦芽大麦が使われることもあります)。「アルコール入り炭酸水」と言うと日本ではチュウハイをイメージしやすいですが、チュウハイはウォッカや焼酎などの蒸留酒を使用している点で、ハードセルツァーとは異なります。ハードセルツァーはアルコール度数が5%で、フルーティな味わいですが、甘さはなくスッキリとした飲み心地が特徴です。

全8種類の調査レポート

アメリカ市場調査レポート

~2020年調査~

ダウンロードはこちら

健康志向が高い若い世代で人気が広まる

ハードセルツァーは昨年もすでにブームとなっていましたが、2020年はさらなる売上増加を記録しています。今年は、新型コロナウイルス感染症の拡大により店内飲食が禁止となった地域も多くありましたが、その一方で、ハードセルツァーに関しては自宅での消費が販売を大きく促進させました。市場調査会社Nielsenによると、ハードセルツァーの2020年3月15日以降の週毎の小売販売における売上は、2019年で最高を記録した7月4日(アメリカの独立記念日)の週の売上を超えています。また、2020年3月1日から6月13日までの売上は、前年同期比4倍となり、9億米ドルの増加となりました。そして、2020年6月13日時点での1年間の売上は27億米ドルとなっています。なお、ハードセルツァーは、ビール/風味麦芽飲料/サイダーのカテゴリーに含まれ、同カテゴリーの10%のシェアを占めています。(※2)
ハードセルツァーは、健康志向が高いミレニアル以下の若い世代でとりわけ人気になっており、本製品の売上を伸ばしているキーワードは、「グルテンフリー」、「低カロリー」、「低糖質」、「低糖」になります。アメリカで現在最も売れているハードセルツァー、White Claw(ホワイト・クロー)は1缶(12オンス /355ml)で100キロカロリー、糖質は2グラムです。一方でビールの場合は一般的にグルテンが含まれており、たとえば、バドワイザーは1缶(12オンス)で145キロカロリー、糖質は10.6グラムとなっています。
また、アメリカでは、州によってはお酒の種類により購入できる場所に制限があります。ニューヨーク州を例にすると、ワインおよび蒸留酒は酒屋でなければ購入できませんが、ビールと同じ扱いであるハードセルツァーはスーパーマーケットやコンビニエンスストアでの購入が可能です。こういった点もハードセルツァーの売上を大きく伸ばしている一つの要因となっています。

ビール会社も市場に参入

ハードセルツァーの代名詞とも言えるほど、売上を独占しているのが、Mark Anthony Brands社のWhite Claw(ホワイト・クロー)です。そのシェアは圧倒的で58.6%に上ります。フレーバーは、マンゴー、ブラックチェリー、ライム、グレープフルーツ、スイカなどが展開されています。第2位がBoston Beer Company社のTruly(トゥルーリー)で、シェアは21.8%です。(※3)この2ブランドが市場の大部分を占めていますが、ビール離れが進む中で、昨年から今年にかけて大手ビールメーカーの参入が相次いでいます。バドワイザーが有名なAnheuser-Busch InBev社からは、今年に入りBud Light Seltzer(バドライト・セルツァー)が販売されています。そしてコロナビールを展開するConstellation Brands社もCorona Hard Seltzer(コロナ・ハードセルツァー)の販売を今年から開始しています。
また、2021年にはコカ・コーラ社も、傘下のTopo Chico(トポ・チコ)ブランドから、アメリカのハードセルツァー市場に参入することを発表しています。コカ・コーラ社は1980年代前半にワイン事業を行なっていましたが、アメリカでのアルコール市場の参入はそれ以来の40年振りの出来事となります。(※4)
アメリカで販売されているハードセルツァーは、2018年の初めは10ブランドほどでしたが、2019年初めには26ブランド、現在は65以上となっています。(※5)スーパーマーケットのアルコール飲料売り場では、ハードセルツァーの占める割合がますます高まってきており、人気は来年も継続すると思われます。

(参考文献)
※1
https://www.cnbc.com/2020/09/21/coca-cola-will-enter-us-hard-seltzer-market-in-first-half-of-2021-ceo.html
※2
https://www.nielsen.com/us/en/insights/article/2020/hard-seltzer-defies-categorization-and-limits-as-the-most-resilient-alcohol-segment-in-u-s/?utm_source=twitter&utm_medium=organicsocial&utm_content=nielsen&utm_campaign=Global+Connect
※3
https://www.thedrinksbusiness.com/2020/04/10-of-the-biggest-hard-seltzer-brands/11/
※4
https://www.cnbc.com/2020/09/21/coca-cola-will-enter-us-hard-seltzer-market-in-first-half-of-2021-ceo.html
※5
https://twitter.com/nielsen/status/1283082885361262593

全8種類の調査レポート

アメリカ市場調査レポート

~2020年調査~

ダウンロードはこちら

食品開発に関するお役立ち資料を無料進呈

無料!

今注目を集めている食品トレンド情報や
食品開発に関する資料を
無料でご提供しています。
是非この機会にご覧ください。

無料提供資料

今すぐダウンロード

ハイドロコロイドの基礎

無料ダウンロード!

~ペクチン・カラギナンなど徹底解説~

ペクチン、ゼラチン、キサンタンガム、
カラギナンなど
ハイドロコロイドに
ついて徹底解説。
ハイドロコロイドの概要から、
各種の特徴を全75ページにわたって
徹底に解説しています。
是非ご覧ください。

資料内容

  • ハイドロコロイドの概要 
    ~分類、由来原料、産地
  • ハイドロコロイド各論
    (ペクチン、ゼラチン、キサンタンガム、カラギナン、グァーガムなど)
  • 相乗効果、応用例 
    ~他の多糖類との併用
ダウンロードはこちら
ペクチンとは~徹底解説!構造や種類・ゲル化の仕組み

ペクチンの概要と種類、物性改良剤としての機能や使い方のコツについて解説します。

市場規模が成長を続ける完全栄養食。その現状と今後の展望、さらに拡大の壁になりそうな要因について紹介します。

世界的にブームであるグミ。今回はアメリカで市販されている注目のグミ5品をご紹介します。

令和4年「国民健康・栄養調査」の結果の概要が発表されました。日本人の栄養摂取や生活習慣から、商品開発の糸口を探します。

アメリカの自然派食品スーパー大手「Whole Foods Market(ホールフーズマーケット)」が10月16日に発表した、2025年の食品トレンド予測の内容をご紹介します。

食品開発ラボ 運営会社のご紹介

食品の企画・開発に関わる人のための専門メディア「食品開発ラボ」は、ユニテックフーズ株式会社が運営しています。
当社では創業以来独自の素材・製品で新しい食品の価値を創造することをコンセプトに、ペクチンをはじめとするハイドロコロイドの研究や素材を組み合わせたこれまでにない特性を持つ製品の開発、加えてお客様のご要望に応じた当社製品を実際の食品に用いた利用・応用技術の開発を行っています。
商品企画・開発において何かお困りごとがあれば、きっと当社がお役に立てると思います。
是非お気軽にお問い合わせください。

サイト内検索

人気記事ランキング

  • ペクチンとは~徹底解説!構造や種類・ゲル化の仕組み

    ペクチンとは?
    構造や種類・ゲル化の仕組みなどを徹底解説!

  • 白キクラゲ多糖~概要や効果・食品応用例など徹底解説

    シロキクラゲ多糖体とは?特徴から食品応用例、効果まで徹底解説

  • 「とろとろ」「ぷるぷる」美味しさを引き出す ゲル化剤・増粘剤

    ゲル化剤・増粘剤とは?種類や用途・利用事例をご紹介

  • アルギン酸とは~構造や製造工程、効果を徹底解説

    アルギン酸、アルギン酸類とは~基礎から徹底解説

  • アップサイクル食品とは?

    廃棄寸前食材を活用!サステナブルな社会の実現を目指す「アップサイクル食品」

基礎知識特集

  • ペクチンとは~概要と種類を徹底解説

    ペクチンとは~概要と種類を徹底解説

  • キサンタンガムとは~基礎から徹底解説

    キサンタンガムとは~基礎から徹底解説

  • カラギナンとは~基礎から徹底解説

    カラギナンとは~基礎から徹底解説

  • ガラクトマンナンとは~基礎から徹底解説

    ガラクトマンナンとは~基礎から徹底解説

  • メチルセルロース・HPMCとは~基礎から徹底解説

    メチルセルロース・HPMCとは~基礎から徹底解説

  • ゼラチンとは~基礎から徹底解説

    ゼラチンとは~基礎から徹底解説

  • コラーゲンとは~基礎から徹底解説

    コラーゲンとは~基礎から徹底解説

  • アラビアガムとは~基礎から徹底解説

    アラビアガムとは~基礎から徹底解説

  • ジェランガムとは~基礎から徹底解説

    ジェランガムとは~基礎から徹底解説

  • アルギン酸、アルギン酸類とは~基礎から徹底解説

    アルギン酸、アルギン酸類とは~基礎から徹底解説

  • 寒天とは~基礎から徹底解説

    寒天とは~基礎から徹底解説

  • グルコマンナンとは~基礎から徹底解説

    グルコマンナンとは~基礎から徹底解説