改善対策特集
本来は食べられるものであるのに関わらず廃棄されてしまうフードロス (食品ロス)は、環境負荷の軽減などの観点から世界的な課題に挙げられています。「持続可能な開発目標」(SDGs)においても、目標12「つくる責任 つかう責任」において、ターゲット12.3として「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる。」と掲げられています。喫緊の課題であるフードロス削減について、その現状と取り組み事例についてご紹介します。
目次
日本国内におけるフードロスの量は、2021年度で523万トンと推計されています1)。家庭での排出量が244万トン、事業からの排出量が279万トンとされています。外食産業における排出量は80万トンに上り、事業系の約30%に相当します。、環境負荷の軽減などの観点から世界的な課題となっています。2017年度のフードロスの総量は612万トン、外食産業は127万トンであり、2012年度はフードロスの総量が642万トン、外食産業は119万トンであることを踏まえると、近年は減少傾向です。しかしながら、日本政府は2030年度にフードロスの総量を489万トンまで減らすことを目標としており、より一層の取り組みが求められています。
フードロスは大きな問題となっておりますが、そもそもなぜフードロスが発生するのでしょうか。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの令和2年度食品産業リサイクル状況等調査委託事業報告書 2)では食品関連事業者に、フードロスの発生の原因のアンケートを実施しています。食品小売業、外食産業のフードロスの発生要因を確認すると、食品小売業では販売期限切れの商品が82.4%を占め、外食産業ではお客様の食べ残しが82.4%を占めております。そのためフードロスの削減には、賞味期限・消費期限を踏まえた仕入れの効率化、食べ残しを防ぐための適量での提供、お客様の持ち帰りや肥料などへのリサイクルの推進が求められます。実際に各企業の取り組み策を見ていきましょう。
コンビニ大手であるファミリーマートでは、店舗で廃棄される食品を生ごみ回収リサイクルシステムによって飼料、肥料、メタンなどへの再資源化に取り組んでします3)。2021年度では3,142店舗が取り組んでいます。
技術的な工夫も重要であり、ファミリーマートではガス置換包装を採用して商品の消費期限の延長にも取り組んでいます。
さらにファミリーマートでは、季節商品の予約販売強化による製造数の適正化や値下げシールの導入なども行っています。元気寿司株式会社では、回転レーンを廃止して注文を受けた皿を直接客席に届ける方式へ変更しています。
データを活用した予測も重要です。元気寿司株式会社では前述の注文皿を直接客席に届ける方式への変更とともに、データを活用した食材の在庫や鮮度を適正に管理したりすることで、店舗 (108店舗) で削減した「乾いて廃棄する寿司」の量は445トン (2017年度) と推計されています 4)。
持ち帰りも有効な方法となっています。黒豚しゃぶ鍋 八幡では持ち帰り容器を用意することで食べ残しが減少し、生ごみの量が1~2割削減されています4)。
フードロスの削減に向けて各社様々な取り組みを行っていますが、持ち帰りはより有効な手段です。外食産業のフードロスの発生要因の82.4%がお客様の食べ残しであることから、持ち帰りの習慣が定着すれば大きく削減できる可能性が高まります。しかしながら、持ち帰りを店側が導入するにあたっては
・持ち帰り容器の導入
・持ち帰って食べることを踏まえて調理の必要性
という障壁が存在します。
特に後者の課題は、お店で出された時点では美味しい料理だったとしても、家に持ち帰って食べたらお米がボソボソしたり、衣がふやけてしまったりして美味しくないということがあり得ます。それによってお店の印象が下がってしまったら、やるせない状況です。つまり、持ち帰りに対応するためには、時間が経過しても美味しさや見た目を維持する必要があるという課題が出てきます。そうした課題に対応するのが、増粘多糖類です。
・野菜からのドリップ防止
・あんかけのご飯への染み込み防止
・衣のサクサク感の維持
・レンジ再加熱による硬化防止
といった効果を発揮して、持ち帰りの料理の品質維持につながります。そしてそれが、フードロスの削減の機運向上にもつながります。
食品業界として、フードロスは逃げることが出来ない問題です。食品業界が持続可能的に回っていくために様々な取り組みが求められています。今回の記事をぜひご参考にください。
参考文献
1) 農林水産省 最新の食品ロス量は523万トン、事業系では279万トンに https://www.maff.go.jp/j/press/shokuhin/recycle/230609.html (2023年7月4日閲覧)
2) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 令和2年度食品産業リサイクル状況等調査委託事業 (2023年7月4日閲覧)
報告書 https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/attach/pdf/161227_8-88.pdf
3) ファミリーマート 食品ロスの削減
https://www.family.co.jp/sustainability/material_issues/environment/circulation.html (2023年7月4日閲覧)
4) 農林水産省 飲食店等の食品ロス削減のための好事例集 令和元年10月更新 https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/attach/pdf/170516-38.pdf (2023年7月4日閲覧)
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