近年eスポーツが盛り上がっています。2021年には賞金総額3億円のプロリーグが国内で発足しました。企業からの関心も高く、食品業界では日清食品や森永製菓といった大手企業がeスポーツ分野に参入しています。今後の成長が期待されるeスポーツ市場。食品会社も多く参入しそうですが、eスポーツにはどのような食品が求められるのでしょうか。eスポーツに必要な能力をもとに解説していきます。
eスポーツはエレクトロニック・スポーツの略です。コンピューターゲーム・ビデオゲームを用いて競うことからe (エレクトロニック) スポーツと呼ばれています。近年では日本国内でも高い関心を集めており、男子中学生のなりたい職業にプロeスポーツプレイヤーが2位に選ばれたり (※1)、優勝賞金が1億円の大会が開催されたりしています。eスポーツ市場も右肩上がりで成長しており、2019年時点では61.2億円である市場は2023年には153.3億円に到達することが見込まれています (※2)。
eスポーツで勝つためにどんな能力が必要なのでしょうか。集中力?精神力?反射神経?記憶力?いろいろなものが思い浮かぶかもしれません。近年ではeスポーツパフォーマンスに必要な能力が科学的に研究されています。Nagorsky et al (2020 ※3) ではeスポーツパフォーマンスに必要な能力の一つとして、戦略的認知能力を挙げています。この戦略的認知能力は経験や法則に由来する知識に基づいて戦略的に思考したり判断を下したりする能力です。eスポーツで高いパフォーマンスを発揮するには様々な要求に効率的に答える必要がありますので、戦略的認知能力は結果を出すために欠かせない能力です。戦略的認知能力は記憶、ワーキングメモリー、知識、創造性、問題解決、注意などから構成されています。また九州産業大学の磯貝浩久教授らが行った研究 (※4) では、認知能力のうち複数対象追跡スキル (MOT : 移動する複数の対象の動きを同時に眼で追跡すること) を鍛えることで、eスポーツのパフォーマンスが上昇する傾向を報告しています。このように認知能力はeスポーツのパフォーマンスに密接に関わっています。
リアルスポーツ界ではスポーツ栄養学の様々な知見をもとに、多くのアスリートがトレーニングとともに食事管理やサプリメントを用いてパフォーマンスアップに励んでいます。eスポーツ栄養学はまだまだ発展途上ですが、リアルスポーツ界同様に多くのeスポーツプレイヤーパフォーマンスアップに食品を活用することが今後期待されます。ではどのような食品であればeスポーツプレイヤーは積極的に活用するのでしょうか。その鍵は認知能力です。前述しましたように、認知能力はeスポーツのパフォーマンスに密接に関わり勝敗に直結します。まさにこの認知能力を補助することできればeスポーツプレイヤーに強く貢献できるのです。そのため認知能力のサポートする食品は、eスポーツへの展開が期待されます。もう一つ重要な点は、健康に害がなく毎日安心して摂取できることです。eスポーツプレイヤーの中にはカフェイン飲料や糖分を多量摂取する人が少なからずいます。覚醒作用があるカフェインやエネルギー源である糖分はeスポーツにおいて有効な面も確かにありますが、一方で中毒症状や健康を害する恐れもあります。大会当日限定でカフェインや糖分を使用することは有効ですが、日々のトレーニングから多量摂取していては体に悪影響で元も子もありません。そのため健康的な生活につながる、毎日摂取しても問題ない食品が望まれています。
認知能力に効果があり、安心して摂取できる食品素材の一つとしてクレアチンが挙げられます。
クレアチンは有機酸の一種でヒトの体内にもともと存在するものです。クレアチンは体内のエネルギーであるATP (アデノシン三リン酸) の供給に関与する物質であり、クレアチンを摂取することでより多くのエネルギーを供給しパフォーマンスを高めることが報告されています。筋力パフォーマンスの向上が知られており、1992年に開催されたバルセロナ五輪の男子100走の金メダリストが使用していたことをきっかけに、現在も多くのアスリートが使用しております。
安全性も高く認めてられおり、国際スポーツ栄養学会(ISSN:International Society of Sports Nutrition)は「クレアチン・モノハイドレートの摂取は安全であるだけでなく、乳幼児から高齢者までの健常者および患者の集団において、多くの有効性が報告されている。」としています。
このクレアチンですが、筋力だけでなく認知機能にも効果があることが報告されています。Cook et al. (2011 ※5) では睡眠不足であるラグビー選手にクレアチンを50mg or 100mg/kg・BW 摂取させてパスの正確性を評価する試験を行ったところ、クレアチンを摂取することで有意 (p<0.001) にパスの正確性が向上することが報告されています。 またVan Cutsem et al. (2019 ※6) では被験者にクレアチンを20g/日×7日間摂取させ、精神疲労を課しながら注意力と抑制力を評価する90分間のストループ試験を実施したところ、クレアチン摂取群ではプラセボ群に比べ試験の正確性が有意(p<0.05) に改善されたことが報告されています。他にもクレアチン摂取による脳機能への効果として、8g/日×5日間摂取することで計算テストである内田クレペリン試験による精神疲労を軽減すること (※7)や、5g/日×6週間摂取することで菜食主義者の知能テストにおける短期記憶と論理力を向上させること (※8)が報告されています。
以上のように、クレアチンは筋肉にだけではなく脳機能にも効果があり、eスポーツに役に立つことが大いに期待される素材となっております。eスポーツ向けの製品開発をお考えの方は、一度クレアチンをご検討してみてください。また今回はeスポーツ向けの食品について述べてきましたが、eスポーツの認知能力に効果がある食品はeスポーツプレイヤーだけにとって有効ではなく、例えば試験勉強に励む受験生や社内でアイデア出しに追われる会社員にも有効と考えられます。eスポーツを切り口に、認知機能・頭脳向け食品は様々な方向への発展が考えられます。今後の動向に注目です。
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