食のパーソナライズ化に取り組む世界のフードテック企業

近年、食品業界では「フードテック」や「食のパーソナライズ化」という言葉を耳にする機会が増えてきました。今回のコラムでは、顧客一人ひとりの健康や嗜好に合わせたサービスや商品を展開する世界のフードテック系スタートアップ企業を紹介します。
（調査日：2021年9月）

フードテックと食のパーソナライズ化
メニュープランニング
サプリメント
カプセル式スマートティーポット

フードテックと食のパーソナライズ化

フードテックとは、食（フード）と科学技術（テクノロジー）の融合を意味し、フードテックには新たなビジネスチャンスが数多く隠れていると言われています。生産、製造、物流、小売、外食、調理といった広範囲な領域において、人工知能や機械学習などの先進テクノロジーと、既存のビジネスが融合し、食品関連分野で新しいサービスや商品が次々に誕生しています。ここ数年、世界的に「植物性タンパク質」がブームとなっていることはこれまでのコラムでも何度か取り上げてきましたが、植物性タンパク質の開発もフードテックの一例になります。

また、テクノロジーの進歩によって、個々人の趣味や健康、嗜好などライフスタイルをより深く理解することが可能になってきており、消費者一人ひとりに合わせたサービスや商品の提供を目指す「食のパーソナライズ化」も進んでいます。すでに日本でも、腸内フローラ検査をもとに利用者それぞれに合ったサプリメントを提供するサービスや、オンラインで実施するアンケート診断をもとに一人ひとりの好みに合ったコーヒーを毎月届けるサブスクリプションサービスなど、あらゆるサービスや商品が展開されています。

メニュープランニング

アメリカを拠点とするPlateJoyは、利用者一人ひとりのライフスタイルと嗜好に合わせたメニュープランを作成するサービスを提供しています。利用者は最初にオンラインで以下のようなアンケートに回答します。

・家族構成
・糖質制限（低糖質、パレオ、糖尿病など）
・肉の制限（赤身肉なし、魚介のみ、ベジタリアン、ビーガンなど）
・避けたい食材
・旬の食材を好むか
・食費がかさんでも食事の多様性を好むか
・調理に費やせる時間
・所有する調理器具

など、上記のような細かな質問が並び、この回答をもとに、毎週、１週間分の食事メニュー、レシピ、そして食材の買い物リストがオンラインで届けられます。さらにオプショナルサービスとして、利用者がワンクリックすると、Amazonフレッシュ（Amazon.comが展開する生鮮食品配送サービス）または買い物代行サービスのInstacartを通じて、食材が宅配されるサービスも提供しています。同社のターゲットは、忙しいけれど健康的な食生活を送ることを望む人々で、利用者は健康的な食事を摂るだけでなく、メニューを考えたり、食材の買い出しに費やしたりする時間を削減することができます。

サプリメント

3Dプリンターで製造されたNourishedのサプリメント（写真同社提供）
https://get-nourished.com

イギリスを拠点とするNourishedは、3Dプリンターで作るパーソナライズ・サプリメントを展開しています。利用者が同社のウェブサイトで、体調、食事の嗜好、運動量、持病などのアンケートに回答すると、各個人に合わせて７種類の栄養素が提案されます。購入手続きを完了させると、同社が3Dプリンターで７層のグミのサプリメントを製造し、28日分のサプリメントを郵送する仕組みです。同社によると、サプリメントの材料には、ビーガンタイプのジェルが使用されており、野菜・果物、ビタミン類、鉄分、亜鉛、葉酸、冬虫夏草、マカパウダーなど28種類の食品・栄養素の中からカスタマイズされるとのことです。

また、アメリカのViomeは、腸内細菌を調べるマイクロバイオーム・テストを実施して、200種類以上の素材から、科学的に個人に合わせたサプリメントを調剤するサービスを提供しています。このサービスではテスト結果にもとづいて、食事に関するアドバイスもアプリで提供され、一人ひとりの体質に合う食材、合わない食材についての情報も確認することができます。個人に合わせたサプリメントを摂取し、体質に合った食生活に取り組むことで、消化不良、疲労、睡眠の質などの改善につながる例もあるようです。

カプセル式スマートティーポット

香港を拠点とするLify Wellnessは、IoTを駆使したカプセル式スマートティーポットを使って健康的なお茶を提供しています。当サービスでは、同社が販売するLify Smart Herbal Brewerという専用ティーポットマシンに、専用のカプセルをセットしてお茶を抽出します。Lify Wellnessの専用カプセルは、科学的な研究開発をもとに、茶葉と漢方薬、西洋ハーブを独自にブレンドしたもので、現在ホームページ上では14種類のブレンドが販売されています。例えば、免疫向上を目的とした「Revive」というカプセルは、プーアール茶と霊芝、陳皮、リコリスがブレンドされています。また、お茶は、緑茶、紅茶、ルイボスティーといった種類によって最適な抽出温度が異なります。そのため、当サービスでは、カプセルを専用マシンにセットすると、それぞれの茶葉ブレンドに最適な温度と抽出時間が適用され、美味しさと漢方薬やハーブの効用を最大限に引き出す形でお茶が注がれます。加えて、マシンとアプリを連携させることができ、飲み手がその日の体調や気分に合わせて抽出温度（65〜95 ℃）、量（100〜300ml）、抽出時間（5〜30秒）を指定してお茶を抽出できるパーソナライズ抽出機能も兼ね備えています。

近年目覚ましい勢いで進化するデジタルテクノロジーにより、10年前には考えられなかったような新しいサービスや商品が食品関連分野で登場しています。食のパーソナライズ化は、消費者の食生活をより豊かにし、また近い将来において生活習慣病の改善にも重要な役割を果たすことになるかもしれません。

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