2015年に始まった機能性表示食品制度では、様々な機能を謳う商品が届出をされています。近年に注目が集まっている機能として、睡眠の質の向上が挙げられます。2022年にYakult1000が大ブームになり、2022ユーキャン新語・流行語大賞のトップ10に入ったことも記憶に新しいです。Yakult1000が大注目されたこともあり、睡眠サポートサプリメントの商品が 次々発売されています。なぜ、こんなにも睡眠サプリメントが注目されているのでしょうか。その理由に迫ります。
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皆さんはよく眠れているでしょうか。現代社会の課題の一つとして睡眠は挙げられており、特に日本人は世界的に見ても睡眠時間が短いことが報告されています。経済協力開発機構(OECD)が2021年に発表した調査では、日本の日本の1日の睡眠時間(睡眠に充てる時間は7 時間 22 分と33か国中最低で、全体平均よりも1時間も短かという結果となっています1)。寝床で過ごした時間(床上時間)と実際に眠った時間の長さ(実睡眠時間)が区別されていない点は考慮する必要がありますが、世界的に見ても短い結果となっています。
加えて2019年の国民・健康栄養調査では、20歳以上の男女の21.8%が睡眠全体の質に満足できなかったと回答しております2)。このように、睡眠の量と質の両方で課題を抱えている中でここ数年ではコロナ禍もあり、ストレスフルで不規則な生活を強いられました。こうした背景が、睡眠サプリメントの購入意欲につながっていると考えられています。市場規模も伸びており、株式会社富士経済によるとストレス緩和・睡眠サポートサプリ市場は2018年では108億円だったものが、2021年は132億円、2022年は164億円 (見込み) まで拡大しています3),4)。
上記のここでは、実際に機能性表示食品として届出されたオーラルケア原料、また今後届出が期待される原料をご紹介します。
GABAはγ-アミノ酪酸という名称であり、主に抑制系の神経伝達物質として働いています。トマト、ジャガイモ、ブドウ、ミカン、チョコレートなど、様々な食品に含まれています。GABA 100mgを1週間摂取することで、睡眠の質が高まることが報告されています5)。
L-テアニンはお茶に含まれるアミノ酸の一種です。L-テアニン 200mgを6日間摂取することで睡眠時の疲労回復感が高まることや中途覚醒時間が短くなることが報告されています6)。
還元型Q-10 (コエンザイム10) は補酵素の一種でユビキノールとも呼ばれています。体内の抗酸化作用に関与する成分です。還元型Q-10 100mgを8週間摂取することでストレス度高めの方の睡眠の質が向上することが報告されています7)。
コラーゲンペプチドは動物の皮膚や骨などを構成するタンパク質であるゼラチンを加水分解・酵素分解して断片化したものです。分子鎖が短いため (分子量が数千程度) 水に容易に溶解します。美容向けの食品に配合されることが多いですが、近年では介護食やスポーツ栄養食でも注目されています。大手サプライヤーのRousselot (ルスロ社) のコラーゲンペプチドを使用した研究では、不眠気味の男性がコラーゲンペプチド 15g を7日間摂取することで、中途覚醒時間が短くなるとともに知覚機能が向上することが報告されています8)。
現代社会は、ストレス社会でありデジタル社会でありスマホ社会でもあります。そのような環境下では、睡眠を阻害する要因が様々潜んでいます。睡眠の重要性は近年改めて強調されていますが、発展する現代社会と生理的な身体の休息のせめぎあいの着地点の一つが、睡眠サプリメントの市場拡大なのかもしれません。今後も動向に注目です。
参考文献
1) OECD, Gender data portal 2021: Time use across the world
2) 国民健康栄養調査
第 3 部 生活習慣調査の結果 https://www.mhlw.go.jp/content/000711008.pdf
3) https://release.nikkei.co.jp/attach_file/0529975_03.pdf
4) https://release.nikkei.co.jp/attach/642254/02_202210171641.pdf
5) Yamatsu. et al. : Food Sci Biotechnol. 2016 Apr 30;25(2):547-551. doi: 10.1007/s10068-016-0076-9. eCollection 2016.
6) 小関他. : 日本生理人類学会誌/9 巻 (2004) 4 号
7) Morikawa.et al. : 薬理と治療 Volume 47, Issue 8, 1231 – 1244 (2019)
8) Thomas.et al.: Eur J Nutr. 2024 Feb;63(1):323-335. doi: 10.1007/s00394-023-03267-w. Epub 2023 Oct 24
営業本部営業戦略G所属 2018年入社。
ゼラチンの基礎研究業務や機能性原料の営業業務への従事歴を持ち、現在はそれらで培った情報分析能力を生かし、機能性原料販売の企画・立案業務に取り組む。
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