本年10月に予定される、消費税の8%から10%へのアップ。それに絡んで、話題になっているのがコンビニやスーパーなどで増えている「イート・イン」の扱いです。「テイク・アウト」の逆で、本来「買物」して持ち帰る商品を、店内で飲食すること。今回の引き上げでは食品(酒類を除く)は例外として税率が8%に据え置かれますが、「イート・イン」は「外食」と見なされ、軽減されない税率10%が適用されるのです。
このことが消費行動にどういう影響を及ぼすかは、「始まってみないとわからない」という声が多いようです。では「イート・イン」はそもそもどんな目的で使われているのか。いくつかの店舗で観察してみました。
A子さん(仮名・以下同じ)は、30代前半の女性。今日もいつも通り7時45分に都心の地下鉄K駅を出たところにあるコンビニに現れました。会社の始業は9時30分なのでずいぶん早いのですが、その目的の一つは過酷な通勤ラッシュを避けること。A子さんの自宅駅があるD線は一、二を争う混雑路線なのです。そしてもう一つは、その時差を使って勉強に充てる時間を作ること。A子さんは3か月後にある資格試験を受けようとしているのです。
レジでコーヒーカップを買い求め、マシンでセルフドリップ。最近「濃いめ」が選べるようになったのには密かに“Good Job!”と呟いています。そして朝食にパンを一つ。クロワッサンやワッフルを選ぶことが多いですが、今日は「最近おいしくなった」と噂を聞いた「たまごサンド」にしてみました。窓辺のテーブルに座り、まずはコーヒーをひと口、サンドイッチを半分。期待に違わぬ味でニッコリ。さてテキストを開き、イヤホンを耳に当てて集中、一時間あまりの勉強開始です。
B夫さんは、天気がいい休日は近くの川辺を自転車で走るのが習慣。自宅を出て15キロ下流の橋まで行き、戻ってきます。ターン地点で休憩を兼ねてランチをすることが多いのですが、最近までよく行っていた食堂で食べることがめっきり少なくなりました。理由は、川の土手沿いにイート・インのある大型スーパーができたから。そこで軽い麺類やパスタを買って、見晴らしのよい席で食べると、「ああ、これでいいんだよな」と思ってしまう。最近、そこが快適なもう一つの理由に気づきました。それは、当然ながら「禁煙」であること。前に行っていた食堂は、隣でたばこを吸われ嫌な思いをすることが時にあったのです。
C美さんは、現在転職活動中。会社では連絡したり応募書類を作ったりしにくいので、歩いて3,4分のコーヒー店をとても重宝しています。今日も別のビルにある部署での打ち合わせにかこつけて、ちょっと立ち寄りました。タブレット端末でメールを見ると、第一志望の会社から、ひとつステップが進んで「次は役員面接」という知らせが。うれしくなり思わず「自分にごほうび」でスイーツも付けてしまいました。ふと見ると、二、三席離れたところで大きく開けた口にホットサンドを押し込んでいるのは、同じ課のD也くんではありませんか。ランチ食べ損なっちゃったのかな?声を掛けそうになりましたが、すんでのところで思いとどまりました。自分がここにいるのは内緒だったし、D也くんだって、そんなところを人には見られたくないかもしれないし。
E郎さんは、缶チューハイとミックスナッツ、焼鳥を2本レジで買って、テーブルへ。早くもいつもの顔が並んでいました。コンビニのイート・インは、店内で買ったものでも「飲酒はお断り」としているところが多いのですが、このビル地下の店は逆に半分ほどのスペースにテーブルを並べ、なんでも飲食自由。サラリーマンが会社が終わって増えてくる時間の前に席を確保するのが秘訣。「最近のコンビニの焼鳥はバカにできないよ」「つくねは人気だから売り切れてることが多いね」などという会話を交わしながら、「常連さん」と一杯、また一杯。街の「千べろ」系は立ち飲みだから疲れる、この年齢になるとやっぱり座って飲める方が有難いな、と感じながら、きょうもいい気持ちになっていくのでした。
さて、こうして見てくると、「イート・イン」の、ファミレスなど純粋な飲食店にはない特色が明らかになってきたように思います。まず、飲食店にあってイート・インにないのは、食の場の「接客」です。そして待ち時間もない。人と会話するためでなく、一人の時間を作るために来ている、という人も多いようです。そのためにちゃんとした喫茶店に行くよりは、安上がりだからでしょうか。
そして、お話を聞いた多くの方が指摘したのが「コンビニの味がさらに上がっている」ということでした。激しい競争がそうさせているわけです。これはお惣菜など、買って帰るものにも共通しています。そしてチェーン店であるために、味に店独自の「特別」はありませんが、逆に知っている商品なら、ハズレもないということになります。
消費税が2%上がるからと言って、「持って帰る」ほうに動くことはあっても、飲食店に客が流れるというのは難しいように思います。そう考えると、飲食店は当然ながら、持てる強みで勝負していくしかありません。それは、イート・インの特徴の裏返しです。
自店にしかない味。接客のクオリティ。多少高くてもその価値あり、と思える雰囲気。
結局こうしたものがあれば、消費税10%時代も怖くない、と言えるのではないでしょうか。
最後に、余談ですが調査中に聞いたエピソードをひとつご紹介します。
F治さん夫婦は、コンビニのフランチャイズ店オーナーです。イート・インコーナーを設置してはどうか、という本部スーパーバイザーの提案に、店舗の売り場面積が削られるのはどうか、と思っていました。ところが、試しと思ってやってみると、来客数が明らかに増えたのです。イート・イン目当ての客だけではありませんでした。ある日、ふとその理由がわかりました。外から見えるイート・インコーナーに、ほとんどの時間帯、必ず人がいるのです。駐車場にあるクルマの数も増えているようです。つまり「にぎわい感」が演出され、それがまた人を呼んでいるのだとしたら……。「意外な効果があるものだね」と言うF治さんに、奥さんも「もしかすると夜中の防犯効果もあるかも」と頷くのでした。
今注目を集めている食品トレンド情報や
食品開発に関する資料を
無料でご提供しています。
是非この機会にご覧ください。
ペクチン、ゼラチン、キサンタンガム、
カラギナンなど
ハイドロコロイドに
ついて徹底解説。
ハイドロコロイドの概要から、
各種の特徴を全75ページにわたって
徹底に解説しています。
是非ご覧ください。
食品の企画・開発に関わる人のための専門メディア「食品開発ラボ」は、ユニテックフーズ株式会社が運営しています。
当社では創業以来独自の素材・製品で新しい食品の価値を創造することをコンセプトに、ペクチンをはじめとするハイドロコロイドの研究や素材を組み合わせたこれまでにない特性を持つ製品の開発、加えてお客様のご要望に応じた当社製品を実際の食品に用いた利用・応用技術の開発を行っています。
商品企画・開発において何かお困りごとがあれば、きっと当社がお役に立てると思います。
是非お気軽にお問い合わせください。