新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出禁止令による食産業への影響(アメリカ)

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新型コロナウィルスの感染拡大により、アメリカでは42の州にて外出禁止令が発令されています。食品や生活必需品の買出し、出勤が不可避な仕事への通勤、必要不可欠な通院、および軽い運動などを除いて、原則市民は自宅にとどまらなければなりません。この外出禁止令により食産業も大きな影響を受けています。今回のコラムでは、外出禁止令による食産業への影響についてお届けします。(調査日:2020年4月22日)

売上げが増加した品目

アメリカで最初に外出禁止令が発令されたのは、3月19日(カリフォルニア州)のことでした。その週(3月16日〜22日)にアメリカではどのような食品が売れたのでしょうか。調査会社ニールセン(Nielsen)が発表したデータによると、パン用イーストの売上は前年の同じ週と比較して647.3%、ベーキングパウダーは193%の増加率となりました。(※1)Twitter やInstagram等のソーシャルメディアを通じても、外出禁止の期間に自宅でパンやケーキを焼く消費者が増えていることがわかります。(※2)また、乾燥豆は377%、米は234.1%、ツナは245.6%の増加率になっており、長期間保存が可能な食品の売上げが急増しています。このことは牛乳の増加率が52.6%に対し、消費期限が長いオートミルクが513.1%、粉乳製品が285.9%の増加率となっていることからも顕著にみてとれます。一方で、長期保存に適さない野菜や果物に関しては低い売上増加率にとどまっていることがわかります。例えばアボカドは29.8%、アスパラガスは28.6%、バナナは26.5%となっています。(※1)

外食産業への甚大な影響

当外出禁止令により、飲食店は非常に深刻な影響を受けています。飲食店は原則、店内での飲食は禁止、テイクアウトおよびデリバリーによる営業のみ可能となっています。筆者の近隣の飲食店では、3月下旬に外出禁止令が発令された後は、テイクアウトやデリバリー、カーブサイド・ピックアップ(店舗の駐車場に到着後、店員が車まで商品を運んでくれるサービ)で営業を継続する飲食店が多数ありましたが、4月に入り臨時休業する飲食店が増えてきました。多くの飲食店が、従業員の給料や食材費、家賃などの支払いにより綱渡りの経営を余儀なくされています。
全米レストラン協会(National Restaurant Association)は、新型コロナウィルスの拡大により3月の初めの22日間で、アメリカの外食産業では300万人の雇用と、250億米ドル(2兆7,000億円、1ドル108円)の売上が失われたと発表しています。ニューヨーク州レストラン協会(New York States Restaurant Association)によると、感染が最も深刻なニューヨーク州では、3月の最初の3週間で外食産業の25万人以上が職を失い、売上は平均で58%下落、合計19億米ドル(2,052億円)の売上が喪失されたとしています。また、全米レストラン協会は外食産業において6月中旬までに2,250億米ドル(24兆3,000億円)の売上、500〜700万人の雇用が失われる可能性があると予測しています。同協会は、今回の感染拡大により、3月末時点ですでに3%の飲食店が廃業に追い込まれているとしています。(※3)

オンライン・グロッサリー需要の急拡大

一方で、消費者の外出が制限される中、需要が急増している食ビジネスもあります。その一つが、オンライン・グロッサリーです。モバイルアプリ調査会社アップトピア(Apptopia)によると、ウォルマート・グロッサリー(Walmart Grocery)、インスタカート(Instacart)、シップト(Shipt)といったオンライン・グロッサリー・アプリのダウンロード数が、3月前半に2倍以上となりました。(※4)インスタカートやシップトは買い物代行サービスで、利用者がアプリを通じてスーパーマーケットの商品を注文すると、インスタカートやシップトに登録しているショッパーが買い物を代行し、利用者の自宅まで届けてくれるというものです。筆者が利用するスーパーマーケットでは、4月に入ってから、シップトの買い物代行ショッパー専用レジが設けられました。
また、モバイルアプリ調査会社アップ・アニー(App Annie)の分析によると、ウォルマート・グロッサリー・アプリのダウンロード数が過去最多となり、4月5日にはアメリカのショッピング・アプリの中で1位を獲得、アマゾン(Amazon)のダウンロード数を20%上回りました。同日のウォルマート・グロッサリー・アプリのダウンロード数は2020年1月の1日当たりの平均ダウンロード数と比較して460%の増加となりました。ウォルマートは、オンラインおよび実店舗の需要拡大を受けて新たに15万人の雇用を計画し、またインスタカートは30万人の雇用を計画しています。(※5)(※6)今後アメリカでコロナウィルスの影響が長期化した場合、オンライン・グロッサリーが一過性のものではなく、多くの消費者の生活に浸透していくのかもしれません。
一方で、一部の州では4月下旬から徐々に経済を再開するという動きも出てきています。現時点アメリカでの新型コロナウィルスの感染拡大がいつ終息に向かうかは不透明な状況ですが、長期化するほど既存の食産業への影響は甚大なものとなると考えられます。

(参考資料)
※1
https://www.npr.org/2020/04/03/826939405/whaddaya-knead-yeast-and-baking-powder-top-americas-shopping-lists

※2
https://www.nytimes.com/2020/03/30/style/bread-baking-coronavirus.html

※3
https://www.restaurantbusinessonline.com/operations/restaurant-damage-date-25b-sales-3m-jobs

※4
hhttps://www.foodbusinessnews.net/articles/15700-grocers-delivery-platforms-adjusting-to-meet-online-demand

※5
https://techcrunch.com/2020/04/09/walmart-grocery-app-sees-record-downloads-amid-covid-19-surpasses-amazon-by-20/

※6
https://www.usatoday.com/story/money/2020/03/23/instacart-hire-300-000-additional-workers-amid-coronavirus-demand/2901764001/

 

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