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「離水」とは、加熱や冷凍解凍などのダメージによって、食材に含まれている水分が経時的にドリップとして染み出してくる現象のことを指します。
元々は弁当や総菜といった「中食」で離水は課題にあがることが多かったのですが、特に近年では新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で、需要が拡大するテイクアウトやデリバリー商品でもよく耳にする課題となりました。いずれも調理から喫食までに長い時間を要するため、食品の離水がより発生しやすくなっているといえます。
離水が起きてしまうと次のような問題が発生します。
品質面
・味や風味が薄くなる
・見栄えが悪くなる
・他の食品にも水分が移り、食感が悪化する
・微生物繁殖の原因となる
製造面
・歩留まりが減少し、コストが増加する
このように食品の離水は、味や見た目の悪化、食中毒の危険、といった品質面での問題にとどまらず、製造面でも仕上がり量が減少することで製造コストが増加するといった問題も発生します。
「食品の離水は加熱や冷凍解凍などのダメージによって引き起こされる」と上述しましたが、そのメカニズムを詳しく解説します。
食品が加熱や冷凍、冷蔵などの温度変化を受けると、野菜や食品の細胞や組織が壊れ、内部に留まっていた水が吐き出されてしまうのです。特にタンパク質が豊富な食品は離水しやすい傾向にあります。これは「タンパク質の変性」が関係しており、タンパク質が熱や酸・アルカリにさらされると、立体構造が破壊され、タンパク質が凝集し、水分が分離してしまう性質からです。
また、食品の保存期間が長いほど、水分が蒸発しやすくなり、これも離水の発生要因の一つです。
以上のように、食品の離水は温度変化や食品の性質などが原因で発生します。
では、食品の離水を防止するにはどうすればいいのでしょうか。
食品の離水防止に役立つのが「離水防止剤」です。離水防止剤は品質改良剤(食品添加物)の一種で、増粘剤・ゲル化剤が該当します。粘りやとろみを増加させる場合は「増粘剤」、液体をゼリー状に固める目的で使用する場合は「ゲル化剤」といった区別があります。特に増粘剤は、食品の粘性を高めるといった目的だけでなく、水分を保持する性質によって離水を防止する効果もあります。
では、実際に離水防止剤を使用してみた際の効果を確認してみましょう。以下の検証では、ユニテックフーズの製剤「UNet ビスホールド」を用い、モヤシ炒めとほうれん草ナムルで検証してみました。
【配合】
原材料名 | Control(無添加区) | Test (ビスホールド添加区) |
---|---|---|
醤油 | 34.5% | 34.5% |
液糖 | 20.0% | 20.0 % |
顆粒だし | 4.0 % | 4.0% |
加工デンプン | 1.5 % | 1.5 % |
UNet ビスホールド | – | 0.3% |
加水 | 39.7 % | 39.4 % |
※Test:UNetビスホールドを対調味液0.3%となるように配合
【効果】
もやし100gに上記配合の調味液を15g添加して炒めた後、6時間経過した際の様子
Control区では多量の離水が発生したが、UNetビスホールド添加区では離水はほとんど観察されなかった。
【配合】
原材料名 | Control(無添加区) | Test (UNet ビスホールド添加区) |
---|---|---|
ごま油 | 15 g | 15 g |
鶏がらスープの素 | 4.5 g | 4.5 g |
UNet ビスホールド | – | 0.6 g |
<作製方法>
茹でて水気を絞ったほうれん草180gに上記調味液を和える
急速冷凍(-40℃,30分)、冷凍保存 (-20℃,3晩)
①流水解凍後15分傾斜放置した際の離水量を測定
②600W 2分レンジアップ後15分傾斜放置した際の離水量を測定
【効果】
測定した離水量は下記の通りとなった。
測定項目 | Control(無添加区) | Test (UNet ビスホールド添加区) |
---|---|---|
ナムル総量(g) | 199.5 g | 200.1 g |
流水解凍後離水量(g) | 0.3 g | 0 g |
レンジアップ後離水量(g) | 1.2 g | 0 g |
合計離水量(g) | 1.5g | 0 g |
Control区では離水が発生したが、UNetビスホールド添加区では離水は観察されなかった。
UNetビスホールドは冷凍条件下でも離水防止効果を発揮する。
食品の離水を防止する方法として、離水防止剤が有用であることが分かりました。ただ、食品の離水を防止するには、食品ごとに適切な離水防止策を理解しておく必要があります。離水の原因でも上述したように、食品の特性が影響するためです。そこで、以下のような食品を例に、それぞれの離水防止策や離水防止剤のヒントをご紹介します。
・ジャム→ペクチン
・高糖度ゼリー(パート・ド・フリュイやグミなど)→ペクチン
・ホイップクリーム→ビドフィックス、またはトレメルガム
・プリン→キサンタンガム
・サンドイッチ/総菜パン→ノンドリップ
・冷凍総菜→ノンドリップ
・キムチ(漬物)→キサンタンガム
食品の離水は食品に対する温度変化、食品の性質などが原因で発生します。それに対して、食品別に適切な離水防止剤を付与することで離水を防止でき、見た目や風味、食感といった味わいの維持が可能となります。
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