介護食開発のためのハイドロコロイドの活用

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介護食を開発するときに役立つ一つの情報をご紹介します。それはハイドロコロイドです。噛む力や飲み込む力が低下したご老人向けの食品には、工夫が必要になります。
そこで今回は、介護食開発のためのハイドロコロイドの活用法についてご紹介します。

介護食に求められること

年齢を増すごとに身体に衰えが現れてきて、免疫力の低下や筋力の低下などにより、身体のバランスが崩れて様々な疾患をもたらすことがあります。また噛む力や飲み込む力が衰えてしまい、通常食が食べられなくなることもあります。いわゆる摂食嚥下障害です。
このように老化によって噛む力や飲み込む力が低下してくると、高齢者一人ひとりの健康状態に適したお食事を用意する必要があり、介護食を用意する必要が出てくることもあります。
介護食として嚥下しやすい要件としては、主に次の4つがあります。

1.密度が均一
全体が均一な状態でなめらかなものが求められます。噛んだときに液が出るものについては、噛んでいる間に液体が咽頭に流れ込みやすく、むせやすくなります。また粒があると口腔や咽頭に残留し、誤嚥する人もいます。

2.バラバラになりにくい
適当な粘度でまとまり、ばらけないものが求められます。噛んだときバラバラになりやすいみつ豆の寒天のようなものやキザミ食は、食塊を作りにくく、口腔や咽頭に残留し誤嚥しやすくなります。

3.口腔や咽頭の通過時に変形しやすい
少しの力で変形するやわらかさと弾力性、なめらかさが求められます。塊として飲み込むものは、口腔から咽頭に送り込むときや、嚥下するときに変形しやすいものでないと通過しにくいためです。

4.粘膜にくっつきにくい
口の中でまとまりやすいものの、付着性のないものが求められます。粘度がありすぎて付着しやすいものは、口腔から咽頭へと送り込みにくく、咽頭や口腔内に残留しやすいことからそれが誤嚥につながります。

これらの4つの嚥下しやすい要件を踏まえて、介護食についての摂食・嚥下について掘り下げてみましょう。

摂食・嚥下のプロセスと障害

高齢者に取って咀嚼しやすく飲み込みやすい介護食は欠かせません。そこで一般的な摂食・嚥下のプロセスにおける障害と介護食の要件を解説します。
嚥下困難が重度か軽度によって、各プロセスの物性要件は次のようになります。

1.食べ物を取り込む
障害:口が閉じない
要件:こぼれにくい

2.かむ(咀嚼)
障害:噛めない、潰せない
要件:潰しやすい、潰さなくて良い

3.食塊をつくる
障害:まとめられない、唾液が出ない
要件:まとまりやすい、塊のまま

4.食塊を送り込む
障害:送り込めない、粒が残留する
要件:すべりが良い、流れの良い液体、均質、変形しやすい

5.飲み込む(嚥下)
障害:タイミングがずれる、嚥下反射が起きない、咽頭に残留する
要件:ゆっくりすべる、まとまりやすい、付着しにくい

これらのうち、「こぼれにくい」「まとまりやすい」「すべりが良い」「流れの良い液体」「ゆっくりすべる」「まとまりやすい」「付着しにくい」を実現するには「粘性」が求められます。
また「潰しやすい」「変形しやすい」を実現するには「硬さ」、「塊のまま」「変形しやすい」を実現するには「弾力性」が求められます。

嚥下困難者における各プロセスでの物性要件

特に、嚥下困難者における各プロセスでの物性要件としては、次の要件が求められます。

1.咀嚼または押し潰し
【軽度】
・舌でつぶせる、歯茎でつぶせる
→適度な硬さ、適度な弾力性

2.食塊を作る
【軽度】
・まとまりやすい、ばらけない
→潰したものの粘性、潰したものの再セット性

3.飲み込む
【軽度】
食塊が速く滑らない、食塊がばらけない、付着しにくい
→離水がない、適度な粘性、適度な滑り性

【重度】
スライス状ゼリーの丸呑み、濃いとろみの液体
→適度な弾力性(変形性)、適度な滑り性

各プロセスでの物性要件を達成するためには、ハイドロコロイドが適しています。

ハイドロコロイドの使用目的と分類

ハイドロコロイドは増粘多糖類の一種で、一般食品には、水分保持、増粘、ゲル化、安定化の目的で使われています。

前段でご紹介した摂食・嚥下プロセスと物性要件は、ハイドロコロイドを使用することで満たすことができます。

例えば、ハイドロコロイドが一般食品に水分保持作用の用途で使用される場合は、介護食では「離水がない」という要件を満たすことになります。

介護食における利用目的
●水分保持作用
・離水がない

●増粘
・適度な粘性
・適度な滑り性
・潰したものの粘性

●ゲル化
・再セット性
・適度な硬さ
・適度な弾力性

ハイドロコロイドの特性と用途

ハイドロコロイドは、種類によって特性と用途が異なります。種類ごとに解説します。

カラギナン

特性:カリウムイオンで最も強くゲル化し硬いものの、もろく離水のあるゲルのカッパタイプと、カルシウムイオンで最も強くゲル化し、弾力性があり離水しないゲルのイオタタイプ、低い粘稠性でゲル化しないラムダタイプがあります。

溶解温度は、カッパタイプは50~70度、イオタタイプは一部冷水可溶で、50度以上で完全溶解、ラムダタイプは冷水可溶です。カッパタイプとイオタタイプのゲル化温度はどちらも50~60度、ゲルの融点はどちらも60~65度です。

また、ラムダタイプは冷凍解凍耐性があり、pH6以上で耐熱性があります。乳タンパク下で増粘する特性もあります。

用途:
・カッパタイプ:ゼリー、プリン、アイスクリーム、ココア飲料、畜肉製品、水産ねり製品
・イオタタイプ:ゼリー、プリン、ホイップクリーム、コーヒーホワイトナー、植物性カプセル、グミ
・ラムダタイプ:クリームデザート、アイスクリーム、デザートへの粘度保形性付与、粉末飲料への粘度付与

HMペクチン

特性:固くスッキリした性状のゲルで、溶解温度は60~85度、ゲル化温度は60~95度、耐熱性ゲルです。

用途:高糖度ジャム、菓子ゼリー(パート・ド・フリュイ)、グミ、酸性乳飲料、果汁飲料、製菓・製パン

LMペクチン

特性:口溶けの良いなめらかなゲルで、溶解温度は60~85度、ゲル化温度は45~60度、ゲルの融点は40~45度です。カルシウムイオン等の存在で熱可逆性のゲルを形成します。また過剰のイオンで熱不可逆性のゲルを形成します。

用途:デザートベース、低糖度ジャム、耐熱性ジャム、フルーツプレパレーション、プリン、ヨーグルト、うわがけゼリー

ゼラチン

特性:離水がなく弾力のあるやわらかいゲルで、溶解温度は50~60度、ゲル化温度は25~30度、ゲルの融点は30度で口溶けの良い食感です。

用途:総菜・麺つゆゼリー、ゼリー、プリン、ヨーグルト、グミ、マシュマロ、低脂肪スプレッド、水産加工品、畜肉製品、たれ、カプセル

ガクトマンナン

特性:粘度の低い順に、ローカストビーンガム、タラガム、グァーガムの3種があります。

ローカストビーンガム…低い曳糸性、溶解温度80度、冷凍解凍耐性なし(再加熱により粘度復元)、耐熱性あり、カルギニンとの併用で強い弾力のあるゲルを形成、キサンタンガムとの併用で粘弾性の高いゲルを形成します。

タラガム…中程度の曳糸性、溶解温度は一部冷水可溶(80度で完全溶解)、冷凍解凍耐性あり、耐熱性あり、カラギニンとの併用で緩い弾力のあるゲルを形成、キサンタンガムとの併用で緩い粘弾性のあるゲルを形成します。

グァーガム…高い曳糸性、溶解温度は冷水可溶、冷凍解凍耐性あり、耐熱性はやや弱い、キサンタンガムとの併用で増粘します。

用途:
ローストビーンガム…スープ、ソースへの粘度付与、ゼリーの食感改良、弾力性付与、ベーカリーの乾燥防止、冷凍製品の氷結晶生成防止

タラガム…スープ、ソースへの粘度付与、ベーカリーの乾燥防止、冷凍製品の氷結晶生成防止

グァーガム…スープ、ソースへの粘度付与、総菜の離水防止、乳化安定性促進、冷凍製品の氷結晶生成防止

キサンタンガム

特性:擬塑性流動(シェードプラスチック性)を持ち、冷水可溶で、冷凍解凍耐性、耐熱性、耐塩性、耐酸性があります。ガラクトマンナンとの併用でゲルを形成します。またグァーガムとの併用でより増粘します。

用途:ドレッシングへの粘度付与、乳化安定化、デザートの食感改良、粉末飲料への粘度付与、冷凍製品の氷結晶生成防止

まとめ

介護食品において必要になるハイドロコロイドの特性や利用用途についてご紹介してきました。高齢者が咀嚼・嚥下しやすい商品開発のために、これらのポイントを押さえていると有意義になると思われます。ぜひ参考にされてみてください。

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