「環境再生型農業」を取り入れるアメリカの食品企業

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近年、企業の社会的貢献の重要性が増加し、サステナビリティが求められるようになってきました。そんな中、アメリカの食品企業において、地球温暖化対策の1つとして新たなキーワードになりつつあるのが、「環境再生型農業(Regenerative Agriculture)」です。今回のコラムでは、環境再生型農業を取り入れるアメリカの食品企業をご紹介します。
(調査日:2021年3月)

環境再生型農業とは?

「環境再生型オーガニック認証(Regenerative Organic Certified)」マークが付いているDr. Bronner’s社のココナッツオイル

アメリカではこれまで、単作農業や、合成肥料および農薬の多用、過度な耕作を含む大規模農業が広く普及してきましたが、これは同時に温室効果ガスの排出や、土壌の健康、水質、生物多様性の低下を引き起こしてきました。一方で、環境再生型農業は天然資源の価値を下げるのではなく、改善することを目指すものであります。その方法には被覆栽培、最低限の耕作、輪作、間作、輪換放牧などが含まれ、土壌が健康であればあるほど、土壌が空気中の炭素を多く吸収(隔離)するため、環境再生型農業は気候変動を解決する上で重要な役割を果たす可能性があると考えられています。また環境再生型農業では、土壌の健康に加えて、家畜に対する動物福祉の向上、そして農家や酪農家、労働者に対する社会的公正、および経済的な安定の提供も重要な要素となります。※1

アメリカではこのような環境再生型農業に注目が集まり、大手食品メーカーからスタートアップ企業まで、食品の原材料を生産する過程で環境再生農業を取り入れる企業が増えつつあります。例えばアメリカの大手食品会社ジェネラル・ミルズは、2030年までに100万エーカーの農地で環境再生型農業を展開すると発表しており、すでにパイロットプログラムが実施されています。※2

また、アメリカでは、石鹸やココナッツオイルを展開するDr. Bronner’s社や、アウトドア用品を取り扱うPatagonia社などの企業・団体が集まって環境再生型オーガニック協会(Regenerative Organic Alliance)が設立され、「環境再生型オーガニック認証(Regenerative Organic Certified)」という認証システムも始まっています。

環境再生型農業を取り入れるアメリカの食品企業

Alter Eco社

Alter Eco社のチョコレート

サンフランシスコを本拠地とするAlter Eco社は、オーガニックのチョコレートのビジネスを展開しており、企業ミッションとして、カカオ農家が環境再生型農業へ移行することを支援しています。環境再生型アグロフォレストリーという方法(同社の場合、カカオの木の周辺に、別の果実の木や穀物、材木用樹木などを植えること)によって、土壌の質の改善と害虫や病気の減少が促され、一方でカカオ農家はカカオ以外の農産物を売ることで収入を増やすことが可能となります。つまりこのアグロフォレストリーによって、農作物の健康を増加させ、かつ、農家にも経済的なメリットをもたらすという相乗効果を期待することができます。また同社の製品パッケージは、100%堆肥化可能もしくはリサイクル可能なパッケージになっています。

Force of Nature Meats社

Force of Nature Meats社の、環境再生型によって調達された牛ひき肉

テキサス州を本拠地とするForce of Nature Meats社は、環境再生型農業を導入して家畜を育て、商品ラインアップに牛ひき肉、豚ひき肉、鶏ひき肉、バイソンひき肉、ベーコンなどを展開しています。近年、食肉用の動物を育てるためには、膨大な量の飼料や水、エネルギーが必要となり環境への負荷が懸念されていますが、同社は、環境再生型農業を取り入れることが気候変動に対する解決策の1つになり得るとして食肉産業で新しいアプローチをかけているスタートアップ企業です。同社によると、適切に管理された家畜の放牧は、土壌の状態を改善し、深く根を張る芝を増やし、生物多様性を促し、土壌に酸素を供給し、そして大気中の炭素を土壌に隔離することにつながるということです。

Planet FWD社

Planet FWD社のMoonshotクラッカー

Planet FWD社はMoonshot Snacksというブランドを立ち上げ、2020年12月に環境に優しいクラッカー(Climate-friendly cracker)の販売を開始しました。同商品はオーガニックであり、原材料の一部に環境再生型農業で生産されたものが使用されています。主な原材料である小麦はワシントン州の農家によって環境再生型農業で生産され、そして、その小麦は農家から2マイル(約3.2キロ)離れた場所で製粉され、85マイル(約137キロ)離れた場所でクラッカーとして生産されます。このようにできるだけ原材料の近くで製品化することで、同社は輸送による二酸化炭素の排出を削減する取組みを実施しています。また、パッケージの外箱は堆肥化が可能な素材で作られています。なお、現在同社のクラッカーは3種類のフレーバーがあり、サワードウ・シーソルト、ローズマリー・ガーリック、トマト・バジルという展開になっています。

最近は、食品が生産される過程における環境への影響に関心を持つ消費者が増えつつあり、アメリカにおいては、例えば植物性の代替肉が人気になっているように、サステナブルな食品を目にする機会が随分と増えました。今回のコラムのテーマである「環境再生型農業」を利用した食品はまだほんの一握りですが、近い将来、より環境に優しい食品が増えてくるのではないでしょうか。

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