本コラムから2回に分けて、ロシアとウクライナの衝突による、世界の食品・飲料への影響についてご紹介します。特にロシア・ウクライナにおいて生産量の多い小麦・トウモロコシ・ひまわり油、肥料・アルミニウムに着目し、それら原料に起因する食品・飲料の価格や供給への影響、消費者意識の変化をまとめました。1回目は食品原料である小麦、トウモロコシ、ひまわり油をピックアップし、想定される影響を考察していきます。
ロシアとウクライナは世界で流通する小麦の30%弱を生産しています。すでにアメリカにおける天候不順や、物流費・人件費の高騰による価格上昇に直面している小麦ですが、この度の軍事衝突により供給難に拍車がかかり、小麦の価格はさらに上昇すると見込まれています。この供給不足を見越してカナダの一部の地域では、この春の小麦の生産量を2~3%増やしています。しかし天候不順など供給に影響するその他の要因は排除しきれないのが実情であり、小麦の供給は引き続き不安定と予想されています。
この影響を最初に受けるのは、ロシア・ウクライナの小麦の最大輸入先であるエジプト、トルコ、バングラディシュ、ナイジェリア、イエメンです。これらの国ではパンの消費量が多く、小麦の供給難が危惧されています。これらのロシア・ウクライナの小麦輸出先以外の国(アメリカやカナダの輸出先など)においては、早急ではないものの、長期的には価格上昇は避けられないと予測されています。
穀類のメジャーサプライヤーであるウクライナは、トウモロコシでは世界の16%、大麦では18%を生産しています。ウクライナ産トウモロコシの主要輸出国であるエジプト、オランダ、スペインでは、他国より先んじて供給難に見舞われるでしょう。
トウモロコシは世界で販売されている食品・飲料の25%に何らかの形で原料として配合されています。トウモロコシが炭素源として使用されるアルコール飲料のほか、甘味料やでんぷん、コーン油などは多くの食品に使用されており、長期的には多くの食品の価格に影響が出ると予測されます。また、トウモロコシは畜産の飼料としても使用されることが多いため、食肉への影響も懸念されます。
トウモロコシはエタノールの原料としても利用されることが多く、アメリカでは生産されたトウモロコシの半量がエタノールの原料となります。食に限らず多くの産業ではトウモロコシ由来のエタノールが使用されており、今後の供給難は避けられません。
ウクライナは世界のひまわり油の約50%を生産している最大の輸出国で、ドイツやベルギー、フランスなどヨーロッパが主な輸出相手国です。ロシアも同様にひまわり油の生産国であり、ウクライナと併せると世界の約75%を生産しています。日本を含むアジアではひまわり油を使用した製品数は少ないものの、ヨーロッパではメジャーな食用油です。
ひまわり油、パーム油、大豆油、菜種油は四大食用油と呼ばれ、衝突によるひまわり油の供給難により、ほかの3つの食用油の価格が上昇すると見込まれています。
現状、インドネシアとマレーシアで主に生産されているパーム油はすでに生産国の人件費の高騰に見舞われており、大豆の生産国であるアルゼンチン、ブラジルは干ばつにより生産量が減少しています。また、菜種油の生産国であるカナダも同様に干ばつにより生産量が減少しています。このように食用油の供給はすでに不安定な状態であり、そこにロシア・ウクライナの衝突が重なり、さらなる影響が危惧されています。
ロシア・ウクライナは穀類の生産量が多く、今回の衝突は間接的な要因も含めると数多くの食品・飲料に影響を及ぼすことがわかりました。次回の記事では、ロシア・ウクライナで生産量の多い非食品原料にフォーカスし、それらが世界の食に与える影響をお伝えします。
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