プラントベースフードとは?市場規模や商品事例・メリットを紹介

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『プラントベースフード』とは?と聞かれたとき、みなさんはどのように答えますか?
最近では、大手ファーストフードチェーンやスーパーにて、プラントベースフードが気軽に購入できるようになったこともあり、大豆ミートやアーモンドミルクといった、食材や具体的な商品名が先に思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。
今回のコラムでは、プラントベースフードの基本知識や市場規模について概観していきつつ、消費者及び企業の観点から、プラントベースフードを取り入れていくメリットとデメリットを紹介します。

プラントベースフードとは

「プラントベースフード」とは、植物由来の原材料を用いて肉や魚など動物性食品を再現した加工品を指します。これは、ベジタリアンヴィーガンの食のとらえ方とは異なります。
ベジタリアンヴィーガンが、動物性食品の摂生を『制限』する食の選択であるのに対し、プラントベースは、植物由来の食品を日々の食の選択肢のひとつとして積極的に取り入れていく、消費者の食に対する『自由度』が特徴です。実際にアメリカでは、代替肉購入者のうち98%が通常の畜産物も購入しているという調査結果もあります。※1
自身の食生活や嗜好を大きく変えることなく、プラントベースフードを選択できる『気軽さ』がベジタリアンヴィーガンよりも幅広い消費者層に受け入れられる由縁となっています。

プラントベースフードの国内の市場規模

海外市場として、EUの資金援助によって始動したプロジェクト「Smart Protein Project」のレポートによると2020年のプラントベースフードの市場規模(売上)は、ヨーロッパでは49%、アメリカでは27%増と驚異的な伸長率がみられます。※2
それでは、国内ではどれほどの市場規模となっているのでしょうか。

TPCマーケティングの調査によると日本では、2019年度の178億円から2020年度は246億円と38%の増加、さらに2010年度はわずか48億円の市場であったことを踏まえると、10年で5倍程度まで拡大していた市場であることがわかります。※3

マクロミル社の QPR™データより、プラントベースミートのカテゴリー単体で見ると、2020年度時点で昨年対比152%と市場が伸長しており、加えて購入率が140%、購入者当たりの購入金額が108%のアップ率であることを踏まえると、市場の高まりは購入単価よりも大豆ミートの購入者が増加していることが要因だと推測できます。※4
購入者層にも変容が見られ、女性比率が6割を占めており、例年女性からの支持が根強いものの、男性比率も2017年から2020年の4年間で1年毎に2%ずつ大きくなっています。男性の購買層の拡大は、購入場所の変化にも表れ、コンビニやスーパーでの購入が目立つようになってきています。

プラントベースフードの普及背景と、今後の伸び代

プラントベースフードの市場拡大の過程を、ブームの発端と現在、今後の展望の3点から考察していきます。

市場拡大のきっかけ

プラントベースフード市場の急速的な伸びは、海外、国内ともにコロナ渦における消費者の健康志向の高まりが発端だと考えられます。
また国内市場に限った話では、納豆や豆腐をはじめ、日本人は元来大豆食品との親和性が高いと考えられ、大豆由来のプラントベースフードは消費者に受け入れられやすかったという背景もあるようです。国連食糧農業機関の『大豆の食品あるいは飼料としての国別消費量比較』(2007年)によると、カロリーベースだと大豆食品を食べる量は日本が世界一といわれています。

エシカル消費の関係性

プラントベースフードが一時的なブームに終わらず、コロナ3年目となる今年度も継続的に市場の拡大が見られるのは、健康志向といった消費者の個人的嗜好にとどまらず、より大きな視点で個々人の食に対する態度変容が起因しているのではないでしょうか。

具体的には、人や地球環境、社会、地域に配慮した考え方や消費行動を指す「エシカル消費」への関心が、プラントベースフードの需要の高まりに比例している可能性が考えられます。
ネオマーケティング社の調査では、プラントベースフードを『実践』する理由として、体質改善や老化防止などの健康的理由が上位を占めるのに対し、『継続』する理由として、約6割が「世界の飢餓や貧困を減らしたいから」と回答しています。※5

それではプラントベースフードは、なぜエシカル消費といわれるのでしょうか。エシカル消費の選択は人や地球環境、社会、地域への配慮のうち特に持続可能性が判断基準となることから、動物性食品と比較して持続可能な食材原料と生産性が持続可能なプラントベースフードはエシカルな消費だと捉えることができます。一例としては、畜産物の生産に必要な穀物や水分などの天然資源も、プラントベースミートであれば牛肉の10分の1の水分量且つ、飼料不使用で生産することができるといわれています。

今後の伸び代

エシカル消費への継続的な注目度の高まりを背景に、プラントベースフードは日常的な食事としての「定番化」と商品展開の「多様化」を2軸として更に拡大していくことが予想されます。
大豆ミートを筆頭に既に認知度が高く「定番化」になりつつある、プラントベースミートは消費者のリピート購入及びロイヤリティー化が進んでいくと考えられます。マクロミル社の調査によると、植物肉の購入者をヘビーユーザー・ミドルユーザー・ライトユーザーと3段階に分けたところ、ヘビーユーザーの構成比が年々高まっていることが実際に数字に表れていることが判明しました。※4
オーツミルクなど市場への新たに参入していく、乳製品への代替など、プラントベースフードの「多様化」も見受けられます。オレンジページ社のアンケート調査によると大豆ミート以外に今後注目するプラントベースフードとして「アーモンドミルク」が69.6%、次点で「オーツミルク」27.4%があげられるなど、プラントベースフードの商品群の広がりに対する消費者の期待は高まっているようです。※6

プラントベースフードに取り組むメリット

消費者庁の調査によると、エシカル消費につながる商品・サービスの購入意向があると答えた回答者が全体の約8割を占めており、エシカル消費は消費者の意識の高まりだけではなく、購買意欲を伴うことが分かっています。※7
今後も伸びていくプラントベースフードの市場参入は、企業にとって商業的メリットがあるとともに、社会的な企業ブランディングにもつながっていくと考えます。

商業的側面

プラントベースフードは、ターゲットとなる購入層の広さと商品開拓の余地から、マーケットポテンシャルの高い商品カテゴリーだと考えられます。エシカル消費のトレンドというと、情報感度の高い若年層さらには女性がターゲット層としてイメージされますが、実際のプラントベースフードの購買層は男性比率が伸びていることや、男性の中でも50代60代の伸長率が大きいことから、幅広い消費者層が見込み層となります。

加えて、企業努力によっては、プラントベースフードの市場は更なる成長が期待できます。
プラントベースフードの認知が高まり、喫食経験がある又は頻度が増えた消費者が増えてきたことから、以前より動物性食品の置き換えとしての模倣性や完成度の高さが求められています。
例えば大豆ミートであれば、より畜産物に近づけるのに弾力性の付与と大豆臭の払拭が一般的に課題として挙げられます。大豆臭のマスキングに、大豆ミートを使用した料理自体の味付けを濃くしたり、大豆ミートの原料に玄米やサトウキビ抽出物、メチルセルロースを加えたりするのが一例として挙げられます。

▽プラントベースフードの食感改良素材「メチルセルロース」については、以下資料をご参考ください。

プラントベースミートやミルクの選択肢の多さに比べ、プラントベースのチーズは品ぞろえが少なく、プラントベースフィッシュやエッグにいたっては不足しているのが現状です。直近で弊社でもプラントベースエッグの実現を目指し、植物由来の増粘多糖類を使用したスクランブルエッグの卵不使用の再現レシピを開発しております。

社会的側面

消費者は商品自体の持続可能性だけでなく、企業としてのサステナビリティへの取り組み度合にも注目しています。食を通じた持続可能な社会実現として、サステナビリティへの取り組みを強化されている食品メーカーも多いのではないでしょうか。
プラントベースフードの商品開発はもちろん、食品卸や食品メーカーが共同でプラントベースフードブランドを立ち上げるケースも増えています。トゥーフーズやウェルビーンズが例として挙げられます。企業間でコラボすることで消費者によりインパクトのある露出が叶ったり、飲食店での提供と合わせて展開することで実際の喫食シーンの創出ができたりといったメリットが考えられます。

まとめ

このようにプラントベースフードはコロナ渦以降、急激に市場が成長し、これからも消費者のエシカル消費への関心の高まりとともに引き合いが強くなっていくと考えられます。
プラントベースフードへの市場参入は各社にとって、商業的価値が見込めると同時に、サステナブルな取り組みとして企業としての社会貢献とイメージ創出になると考えます。

【参考文献】
※1Plant Based Food Market by Size, Share, Forecasts, & Trends Analysis | Meticulous Research®
※2Plant-based foods in Europe: How big is the market? – Smart Protein Project
※3TPCマーケティングリサーチ株式会社「2020年植物性代替食品市場の最新動向と将来展望」
※4プラントベースって?購買データで人気急上昇中の植物肉市場動向を探る!/Weekly Topicセミナーレポート|マクロミル公式note|note
【Weekly Topic】購買データでみる!今注目の”プラントベース” 植物肉市場動向 – YouTube
※5全国の20歳~69歳の男女357人に聞いた「プラントベースフードで考える、これから。」 | リサーチならネオマーケティング (neo-m.jp)
※6新たなたんぱく源として注目の 「プラントベース食品」、興味がある人53.4% 大豆ミートの次にくるものは? |株式会社オレンジページのプレスリリース (atpress.ne.jp)
※7エシカル消費に関する意識調査 | 消費者庁 (caa.go.jp)

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