嚥下困難者の食事には、正しく嚥下できるようにとろみをつけたりゼリー状にしたり調整した嚥下困難者向けの食事が必要です。今回は、嚥下困難者向けの食事の役割と作り方のポイントをご紹介します。
嚥下とは「何を食べるのかの計画から始まり、食物を口に運び、口腔内で咀嚼し、咽頭・食道を通して胃まで食物を運ぶ一連の動作」を指します。
1)この“認知し食べる”動作のいずれかにおいて問題が発生する状態を「嚥下機能障害」と呼び、高齢者を中心に問題となる場合があります。
嚥下に問題がある場合、例えば以下のような問題が生じます。
■誤嚥
誤嚥とは食べ物や唾液など異物が誤って気道に入ってしまうことを言います。脳機能などが弱まり嚥下機能障害になると誤嚥を起こし、誤嚥性肺炎につながる危険性があります。
■栄養不足、水分不足
嚥下ができなくなると、口から食べ物を食べることが難しくなってしまいます。この状態をそのままにしてしまうと、栄養不足や水分不足などに陥る危険性があります。
■QOLの低下
“食べる”という行為は人間の根本的な営みであり、それができなくなるとQOLが低下する可能性があります。
高齢化に伴い、嚥下困難者の増加も危惧されており、社会的な課題と言えます。
嚥下困難者の食事には、正しく嚥下できるように、とろみをつけたりゼリー状にしたり調整した嚥下困難者向けの食事が必要です。そのような食事には、以下のような性質をもったものが適しています。
※こちらに示す性質は、あくまで目安としてお考えください。正確な嚥下食の分類は、「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食 2021」等を参考にしてください。
■まとまりがあるもの
例えば水のようにサラサラとして液体はまとまりがなく、誤嚥などの危険性があります。そのため、とろみ剤を使用した液体のようにまとまりがあり、飲み込みやすい食事が適しています。ゼリー状食品の場合、離水が少ないものや咀嚼した後でもまとまりのあるものが適しています。
■柔らかいもの
固形の食事を食べる際には、咀嚼して食塊を作り、食道に送り込みやすくする必要があります。そのため、噛む力が弱くても咀嚼できるように、柔らかさが必要です。
■べたつかないもの
べたつくものは口腔内や食道に張り付き、誤嚥の恐れがあるため適していません。
嚥下困難者向けの食事を作るために必要なのが、増粘剤(とろみをつける素材)やゲル化剤(液体をゼリー状にする素材)などです。代表的なものをご紹介します。
■キサンタンガム
キサンタンガムは市販のとろみ剤にも使われることのある増粘剤です。少量の添加で、様々な食品へのとろみつけが可能です。溶かすときにダマにならないように注意する必要があります。
■ゼラチン
ゼリーやプリンなどに使われるゼラチンはもっとも身近なゲル化剤です。加熱冷却することで、お茶やジュースなどをゲル状に固めることができます。ゼラチンで作ったゼリーは離水が少ないという特徴がある一方、体温で溶けるため誤嚥の危険性もあります。そのため、毎回食べるときには誤嚥に配慮し少量から食べ飲み込み具合を観察することが大切です。
■寒天
寒天も身近なゲル化剤です。硬い食感のゼリーを作り、咀嚼するとバラバラの小さなゲルへと崩れ離水が多いのが特徴です。そのため食べるときには誤嚥に十分注意する必要があります。
■ミルキーリボン
ミルキーリボンは加熱冷却不要で、離水の少ないゲルを作れるゲル化剤です。ペクチンという植物由来の素材を使用しており、咀嚼してもばらけにくいのが特徴です。
増粘剤やゲル化剤を使用することで、嚥下困難者向けの食事をお好みのとろみや硬さに仕上げることができます。使い方についてご不明な点がありましたらお気軽にご相談ください。
1)日本神経治療学会、「標準的神経治療:神経疾患に伴う嚥下障害」、2014年。
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