商品開発を進めていく中で、サクッとした食感のゲルを作りたい、喉ごしのよい粘度を付与したいなどの課題を抱くことがあるかと思います。そんな時に出番になるのが、増粘多糖類になります。増粘多糖類は「増粘剤」、「安定剤」、「ゲル化剤」などの用途で食品に使用される食品添加物であり、食感形成や食品の美味しさに大きな役割を果たします。一方で、日常生活で増粘多糖類に触れる機会も多くはないので、「増粘多糖類はどんなもの?」、「増粘多糖類は何から出来ているの?」と疑問を抱いている方も多いかもしれません。そこで本コラムでは、各種増粘多糖類の起源原料について紹介します。
食品添加物は「体に悪いもの」というイメージを持つ人も多いと思います。その一つである増粘多糖類も、普段触れることが無い事から、同じように「体に悪いもの」とイメージする人も多いかと思います。しかしながら、実際に増粘多糖類の起源原料は、果実由来、種子由来、微生物発酵由来、海藻由来……など、天然の原料を由来として抽出しているものがほとんどです。そこで、次の項目から、各種起源原料について紹介していきます。
~ペクチン・カラギナンなど徹底解説~
果実由来の多糖類としてはペクチンが挙げられます。ペクチンはリンゴの搾汁残渣やレモンなどの柑橘類の皮から抽出されます。ペクチンは植物の細胞壁内に存在しており、細胞同士をつなぎ合わせるセメント的な役割を果たしています。ペクチンの主な用途としては、ジャムやゼリー・プリンのゲル化があり、他にも酸性乳飲料の安定化などあります。
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種子由来の多糖類としては、ローカストビーンガム、グァーガム、タラガムなどが挙げられガラクトマンナン類と呼ばれます。ローカストビーンガムはマメ科イナゴマメ(Ceratonia siliqua L)の種子の胚乳部分から製造されます。グァーガムはマメ科グァー(Cyamopsis tetragonolobus TAUB.)の種子の胚乳部分から製造されます。タラガムはマメ科タラ(Caesalpinia spinosa(MOL.)(O.KUNTZE))の種子の胚乳部分から製造されます。ガラクトマンナン類はスープ・ソースの他、様々なアプリケーションにおいて粘度付与などに使用されます。
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樹液由来の多糖類としてはアラビアガムが挙げられます。アラビアガムは
マメ科アカシア属の植物の樹から出る樹液の粘質物です。アカシアの木は、アフリカ大陸を横切る北緯10~20°の間のガムベルトと呼ばれる地域で育ち、中でもスーダンで最も多く生産されると言われています。食品用では主にセネガル種とセヤル種があります。コンパクトな分子構造を持ち、非常に低粘度であることが特徴です。また、優れた乳化安定能や膜形成能を持つことから、香料の乳化目的で飲料や、コーティング目的でチューイングガムなどに使用されています。
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海藻由来の多糖類としては、カラギナン、寒天、アルギン酸が挙げられます。すべて海藻から抽出されますが、海藻の種類により得られる多糖類が異なってきます。カラギナンは紅藻類から抽出されます。寒天はテングサ科、オゴノリ科などの紅藻類から抽出されます。カラギナンと寒天は紅藻類が原料の点では共通ですが、カラギナンの方が寒天に比べて多量の硫酸基を有する違いがあります。アルギン酸はコンブやワカメなどの褐藻類から抽出されます。カラギナンはゼリーのゲル化剤や飲料の安定剤寒天、はゼリーのゲル化剤、アルギン酸は小麦製品の品質改良剤などに使用されています。
微生物代謝物由来の多糖類として、キサンタンガムやジェランガムが挙げられます。これらの多糖類は、微生物がとうもろこしなどの澱粉を原料として菌体外に分泌した粘性物です。キサンタンガムは微生物(Xanthomonas campestris/キサントモナス キャンペストリス)の発酵の過程で産生される増粘多糖類です。ジェランガムはグルコースなどを栄養源にスフィンゴモナス・エロディア(Sphingomonas elodea)という微生物から産生され、脱アセチル化した多糖類です。キサンタンガムやジェランガムは発酵によって作られる多糖類「バイオガム」になります。キサンタンガムはドレッシングの増粘目的、。キサンタンガムはゼリーのゲル化やジャムの離水防止などに使用されます。
セルロース誘導体の多糖類としてメチルセルロースやヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)などが挙げられます。メチルセルロースはセルロースの骨格にメトキシ基がついた構造をもつ高分子多糖類です。ヒドロキシプロピルメチルセルロースはメトキシ基に加え、さらにヒドロキシプロピル基も導入されています。この二つの多糖類には加熱によりゲル化するという特徴があります。この特徴を活かし、フライ製品のパンク防止や衣剥がれの防止などに使用されるほか、グルテンフリーの製品にも応用されています。
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主な増粘多糖類についての起源原料について紹介してきました。増粘多糖類と一口に言っても様々な由来原料が存在し、それぞれが異なった特徴を持っています。それぞれの特徴を把握した上で、用途に応じて適切な多糖類を選択する必要がございます。弊社のこれまでの知見が、皆様の開発の一助となれば幸いです。開発する上で、課題や不明点がありましたら、何なりとお問合せ頂ければと思います。
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参考文献
國崎直道「食品多糖類」、2001年。
インフォーマ マーケッツ ジャパン株式会社「食品と開発 Vol. 58 No.4」、pp62-79、2023年。
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ペクチン、ゼラチン、キサンタンガム、
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