食事は、栄養を摂取するためとしても、楽しみとしても人生に非常に大切なものです。世界全体で高齢化が進み、特に高齢社会の最前線である日本では、高齢者が食事を楽しみ栄養をしっかり確保できるような工夫が社会全体として求められています。介護食は高齢者の食事に非常に重要であり、そのニーズも増しています。今回は、介護食の特性と介護食の開発にあたって重要なポイントをご紹介します。
目次
介護食は噛む力や飲み込む力が弱くなった方々にも食べやすいように工夫した食事となっています。高齢化が進む日本においては、75歳以上の人口が1936万人、要介護 (要支援)認定者も690万人に達しており 1)、介護食の需要は高まっています。実際に、介護食の市場規模も拡大を続けています。アサヒグループ食品が2022年に実施した「介護における食と調理意識」の調査 2)では、「介護を必要としている家族に、食事を楽しんでほしい」と69.9%が回答しています。また、「介護用のレトルト食品や飲料を、活用していきたい」という方が50.3% (2019年比+5.3pt)、「介護のための食事には、ホームヘルパーや配食などのサービスを活用したほうがよい」という方が42.6% (2019年比+16.4pt)、「介護のための食事は、家族が用意した方がよい」という方が33.3% (2019年比-12.8pt) となっており、市販の介護食や配食サービスを活用する意識が高まっています。
出典 : アサヒグループ食品 調べ
介護食の種類・区分のひとつとして、「ユニバーサルデザインフード」が存在します。「ユニバーサルデザインフード」とは、日常の食事から介護食まで幅広く使用可能な食べやすさに配慮した食品です。日本介護食品協議会が制定した規格であり、「かたさ」などの規格により分類された4つの区分を表示しています。
上記の区分表を参考に、介護食を作るにあたって、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。そのポイントを解説します。
介護食は噛む力が弱い高齢者や、身体に障害がある方でも食べやすいように工夫する必要があります。介護食にはミキサー食やソフト食、ゼリー食といった舌や歯茎でもつぶせるような、食材の形状をなるべく残さない工夫がされているものが多くあります。しかし、介護食を必要とする人の中でも噛む力には強弱があり、それぞれの噛む力に合わせた調整が必要になります。また、できることなら肉も魚も野菜もそのまま美味しく食べたいと思っており、噛むことは健康維持にもつながるため、ただ柔らかくするだけでなく、適切な“やわらかさ”とは何かを考えることが重要です。
やわらかさが重要であることは説明しましたが、柔らければ高齢者の誤嚥を防げるということではありません。誤嚥が起こりやすい食べ物の特徴としては、以下が挙げられます。
・食材の大きさや、カタチが揃っていない。
・水分量が足りずパサパサしている。(パンやいも、粉ものなど)
・ペタペタしていて喉に張り付きやすい。(餅やお米)
・とろみが少ない。(水やお茶、汁物)
・酸味などの刺激が強い。
このように、水などの液体であっても喉に入ってくるスピードが速いことで、誤嚥の原因となる場合もあります。そのため、介護食では適切な“とろみ”や、“食材の形状”、“刺激の少ない味付け”などを考慮した上で、レシピを検討することが重要です。
介護食において、①,②で紹介した食べやすさは非常に重要ですが、簡単にバランスの良い栄養を摂取できるということも重要なポイントの1つになります。
なぜならば、高齢者は食べられる量や、食材の種類が限られており、その中で健康を維持するための栄養を摂取する必要があるからです。
そのため介護食においては、高齢者に不足しやすい栄養素は何かを理解し、レシピを検討する必要があります。
特に、タンパク質や、ビタミン、食物繊維などは不足しやすいと言われています。
5大栄養素以外にもコラーゲンなど商品に付加価値を生み出す栄養素を配合したレシピを開発することで、他社との差別化を生み、高齢者の方にも喜ばれるポイントになるでしょう。
ハイドロコロイドは増粘多糖類の一種で、一般食品には、水分保持、増粘、ゲル化、安定化の目的で使われています。前段でご紹介した摂食・嚥下プロセスと物性要件は、ハイドロコロイドを使用することで満たすことができます。例えば、ハイドロコロイドが一般食品に水分保持作用の用途で使用される場合は、介護食では「離水がない」という要件を満たすことになります。
介護食における利用目的
●水分保持作用
・離水がない
●増粘
・適度な粘性
・適度な滑り性
・潰したものの粘性
●ゲル化
・再セット性
・適度な硬さ
・適度な弾力性
【関連情報】
介護食について解説してきました。かたさ、美味しさ、栄養など様々な要素を考慮して作ることを介護食に求められます。ますますニーズが高まる介護食ですが、商品開発にハイドロコロイドもぜひご参考ください。
参考文献
1) 令和3年度 介護保険事業状況報告 報告書の概要
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/21/dl/r03_gaiyou.pdf
2) 介護実態や意識の変化についての調査を実施https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000182.000059194.html
3) 日本介護食品協議会 ユニバーサルデザインフードとは
https://www.udf.jp/outline/udf.html
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