消費者の相反する欲求は、食品開発の重要なヒント②

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2週目となる今回も、消費者の相反する欲求を融合させた3つの事例をご紹介します。大ヒット商品、ロングセラー商品を生むヒントにしていただければ幸いです。

1週目の記事はこちら

もやし炒めなのに一日中シャキシャキ

もやしは95%が水分。そのためもやし炒めは時間が経つとどんどん水分が出てしまい、もやしがしなしなになってしまいます。陳列時に見た目が悪いだけでなく、ドリップが他の具材にしみ出てしまい、商品価値も下がってしまいます。総菜のなかで最も必要とされるのに品質保持が難しい野菜炒め、そのなかでも最難関のもやし炒めの離水防止に取り組むことになりました。
製造ラインのスタッフが簡単に扱えるように、振りかけるだけで使えること=ダマやママコになりにくいこと、加熱してもねとつかないことを前提に素材探索スタート。離水の原因として塩分の浸透圧、加熱調理によるダメージが大きく影響していることがわかってきました。もやしの周りに薄く油をコーティングすることで加熱調理や塩による水分流出を防ぎ、野菜本来の食感を維持できるようになりました。しかし単に油をコーティングしただけでは効果が長続きしません。油コーティングの効果が長時間続き、ねとつきがない素材の選定や組み合わせ、さらに配合調整を繰り返し、もやし炒め、野菜炒めの離水防止を高いレベルで長時間可能にし、なおかつ食感をそこなわないベストな商品を開発、「もやし炒めなのに一日中シャキシャキ」を実現しました。

とろみ調整食品なのにのどごしスッキリ

飲み物や唾液などが気管に入ってしまう誤嚥により、高齢者が肺炎を引き起こしてしまうケースが増加、重大な社会問題になっています。肺炎は日本人の死因で上位を占める重篤な疾患です。加齢とともに喉の渇きが感じにくくなり水分補給は欠かせないのに、水のようなさらさらした液体は誤嚥リスクが高くなります。とろみ剤で粘度をつけて安全に飲み込めるように調整する商品が必要になってきます。とろみ剤は第1世代でんぷん系、第2世代でんぷん+グァーガム系、第3世代キサンタンガム系と変遷を遂げ、使いやすさなど徐々に改善されてきていますが、とろみ剤ゆえにのどごしはもったりしてしまいます。水分補給ゼリーも販売されていますが、重度の嚥下障害になると口腔内でばらけたゼリーが誤嚥の原因になる可能性があり使用できません。
QOLの向上という観点からも介護分野で熱望されているのが、のどごしすっきり美味しくて安全な水分補給ゼリーやとろみ調整食品です。美味しさという観点から誤嚥リスクのない水分補給ゼリー=次世代とろみ剤の研究に着手。水分補給ゼリーで最も重要なのは、ゼリーがクラッシュした後つまり飲み込むときの物性です。クラッシュしてもばらけないこと(再凝集性)、離水がないこと、べたつかないこと、ゆっくりと滑るように飲み込めること、とろみのような変形性があることです。べたつかないことと離水がないことは、技術的には完全に相反する現象です。さまざまなゲル化剤を試した結果、ペクチンの物性が最も理想に近いことが分かってきました。さらにペクチンの品番を比較検討し、誤嚥リスクを最小にした水分補給ゼリー用のゲル化剤を開発、
「とろみ調整食品なのにのどごしスッキリ」を実現しました。

グルテンフリーなのにふっくらパン

欧米ではすっかり浸透したグルテンフリー文化。小麦アレルギー、グルテン不耐性の方はもちろん、健康のためにグルテンフリー食を積極的に取り入れている方が増えていることで市場が拡大してきました。日本でもグルテンフリー文化が徐々に浸透し市民権を得つつあります。
農水省が米粉の普及を推進していることもあって、小麦粉の代替品として米粉を選択している方が増えていますが、米粉にはグルテンが含まれていないため、ふっくらとしたパンを作ることができないことが最大の難点でした。
グルテンフリーでも米粉100%でも、ふっくらしたパンをつくるための生地改良剤づくりがスタート。パン酵母の発酵によりガスが出て膨らみ、小麦などの胚乳のタンパク質で粘り気の強いグルテンが強力なネットワークでガスを閉じ込め、パンの膨らみが焼き上がり後も維持されます。ノングルテンではガスが抜けてしまうので、米粉100%パンはモチのようにぎっしり詰まった構造になってしまいます。グルテンフリーでは焼成時は膨らんでも取り出してみるとぺちゃんこになってしまいます。膨らんだ状態を維持できません。相乗効果によって粘度が出やすいグァーガムとキサンタンガムの組み合わせを試してみましたが、食感はやや改善されましたが膨らみは不十分でした。粘度発現が強いグァーガム&キサンタンガムでも焼成時の高温帯ではグルテンの代わりにはなりませんでした。そこで加熱することで固まる多糖類と他の増粘剤の組み合わせで検証しました。膨らみの良さに加えてしっとり感、食感の良さなど最適な組み合わせであることがわかり商品化、「グルテンフリーなのにふっくらパン」を実現しました。

いかがでしたか「なのに」式食品開発法

消費者の相反する欲求を融合させた事例を2週にわたってご紹介してきました。組み合わせ次第では、大ヒット商品、ロングセラー商品になり得る食品開発の重要なテーマです。もし製品化にあたって技術課題が発生するようでしたら、ご相談していただければ幸いです。お手伝いできることがあるかもしれません。
最後に、私たちにとって大変うれしかったエピソードをご紹介したいと思います。当社はBtoBの素材メーカーです。ふだん消費者と接触することはありません。しかし一部商品は通信販売しているため業務用であるにも関わらず購入される方もいらっしゃいます。あるときグルテンフリー向け改良剤を購入された方から電話がかかってきて「子どもが小麦アレルギー。朝食みんなはパンなのに、自分だけごはん。みんなと同じメニューを食べたいという。この商品を使ってふっくらした米粉パンを作れるようになった。ようやくみんなで食卓を囲むことができるようになった。正直、小麦のパンのようなふわふわ食感ではないが、それ以上の美味しさがある。」とのお声をいただきました。食品素材メーカーとして、こんなにうれしいことはありません。制限食への取り組みがいかに重要であるか、改めて実感させられました。

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ペクチンとは?~概要と種類を徹底解説

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食品の企画・開発に関わる人のための専門メディア「食品開発ラボ」は、ユニテックフーズ株式会社が運営しています。
当社では創業以来独自の素材・製品で新しい食品の価値を創造することをコンセプトに、ペクチンをはじめとするハイドロコロイドの研究や素材を組み合わせたこれまでにない特性を持つ製品の開発、加えてお客様のご要望に応じた当社製品を実際の食品に用いた利用・応用技術の開発を行っています。
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