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開催まで残すところ1年となり、オリンピック会場のシンボル的な存在として注目を集めてきた新国立競技場も、いよいよ完成が近づいてきました。東京オリンピックに関連する動きはますます加速していますが、実は、食の世界でも、様々な変化が起こっています。
政府は、2020年の東京オリンピックまでに、訪日外国人4,000万人を目標に掲げていますが、2017年の訪日外国人観光客数は過去最高の2,869万人となり、2018年以降も、前年同月比+10~20%というペースで、推移しており、4,000万人という目標は、今や決して夢ではない勢いになっています。
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、2017年から、オリンピックに向けた飲食提供について検討する戦略会議を開催し、和食の魅力をアピールしていくことや、食の安全性に配慮することなどの基本方針を決定し発表しています。オリンピックは、日本ならではの食の魅力を伝える絶好の機会である一方、提供される食事の安全性についても、これまで以上に配慮が求められます。何しろ、選手村では、24時間営業のメイン食堂などで、一日最大およそ4万5千食もの食事が提供されるとのことですから。そして、こうした選手や関係者の滞在する施設だけでなく、一般のレストランなどでも、様々な変化や新たな対応が求められています。
たとえば、数年前までは、イスラム教の人たちが食事のできるレストランというのは、東京都内でもあまり見かけることはありませんでした。しかし、東京オリンピックでは、イスラム圏からも、選手や関係者など多くの外国人が来日します。最近の外国人観光客の増加もあって、この数年、急速にハラルと言われるイスラム教徒が食べられるメニューを提供するレストランが増えてきています。ハラル食のお店の目印であるサインも目にするようになってきました。今では、ハラルのラーメンを提供するお店まで登場して話題になっています。また、ハラルの食材を扱うお店や、ハラル対応の食料品も増えてきました。大手味噌メーカーからは、ハラル対応の味噌まで登場しています。もちろん、東京オリンピックの選手村でも、ハラル食が提供されます。
このほか、ベジタリアンやヴィーガンなど菜食主義者向けのメニューを用意するレストランも多くなってきました。そもそもヴィーガンとは、「完全菜食主義者」と言われるように、ベジタリアン(=菜食主義者)とは異なり、動物を搾取しないという動物愛護の精神に根ざしたライフスタイルのため、単に菜食主義ということだけでなくチーズやバターなど動物由来の乳製品を使った食品なども食べないのです。自由が丘では、2年ほど前にヴィーガン料理専門店が誕生して、今では人気店となっています。こうしたことも背景となって、ひよこ豆やレンズ豆などこれまでなじみの少なかった食材アイテムが、日本でも注目を集め、スーパーでも見かけるようになってきました。
東京オリンピック開催にあたり、政府は、参加国や地域とスポーツ、文化、経済などを通じて相互交流を図る自治体を「ホストタウン」として選定しています。2019年6月の政府資料によれば、その登録件数は323件にも及んでいます。ホストタウンでの活動としては、例えば相手国のスポーツチームの合宿を自治体が受け入れ、様々な文化交流も行うなどです。既に、2年ほど前から、多くの自治体で様々な交流事業が実施されています。例えば、埼玉県の鶴ヶ島市では、2017年にミャンマーからの訪問団を迎えた際に、ミャンマーの食材を使った料理を地元飲食店が協力して提供したり、鶴ヶ島産の狭山茶を飲み物として使ったりといった食の相互交流が行われました。また最近では、ポーランドのホストタウンである富山県高岡市で、ポーランド料理を給食で再現して子どもたちがポーランドの食文化を学ぶということも行われました。こうした食や文化の交流は、日本中のホストタウンで行われており、外国の食文化を地域の人が学び、また相手国の訪問団が、地域ごとに特色のある日本の食材の魅力を知る機会となるなど、静かな広がりと成果をもたらしているのです。
給食当日ランチルーム等で掲示された資料(抜粋)
(資料提供:高岡市)
選手の宿舎や、関係者の滞在先などでも、各国の料理とあわせて、日本食をきちんと提供しようとする動きも拡大しています。選手村のメインダイニングでは、各国の選手に合わせた料理が提供されますが、カジュアルダイニングと称するスペースでは、日本の食材も活用した日本食のメニューが提供されます。政府の基本方針にも、オリンピックは、日本食を世界に発信する絶好の機会であると明記されていることもあって、選手村やプレスセンターなどオリンピック関連施設での準備だけでなく、ホテル業界でも、各国のお客様に親しみやすい日本食の提供を目指して新たなメニュー開発など様々な取り組みが行われています。また、競技会場周辺の飲食店などでも、英語などメニューの多言語表記や、外国語のできる従業員を採用するなどの動きも加速しているようです。最近話題の電子翻訳機を導入してお客様対応に供えるお店も、確実に増えてきています。
政府や組織委員会の資料にも、「大会の飲食提供に日本の食文化を取り入れることにより、各参加者の期待する飲食を提供するのみならず、調達される食材については持続可能性に配慮することにより、併せて東京 2020 大会が掲げる持続可能性の高い大会を実現する。さらに、大会を契機に日本の食文化を世界に紹介するとともに、国内においても日本人自ら食文化の再認識と未来への継承を促進する。・・」と記されています。また、「日本食による「和のおもてなし」については、世界各国・地域から訪れる人々が、文化や宗教、習慣等の違いに起因するストレスをできるだけ感じずに過ごせる環境下においてこそ楽しめるものであることにも留意する必要がある。」とも書かれており、従来より一歩進んだ配慮に基づくおもてなしの仕方を目指しています。
東京オリンピックによって変化しているのは、建設ラッシュの続く街の景観だけでなく、新たな食のトレンドも拡がっているのです。
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