新型コロナウイルス感染拡大の長期化に伴う外食産業への影響(アメリカ)

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先月の コラム(新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出禁止令による食産業への影響【アメリカ】)に引き続き、今月もアメリカにおける新型コロナウイルス感染拡大に伴う食産業への影響についてお届けします。5月に入り、多くの州が段階的に経済活動を再開し始めました。しかし、飲食店が従来通り営業を再開できるようになるには、まだ時間が必要とされています。今回のコラムでは、新型コロナウイルス感染拡大によって特に甚大な影響を受けている外食産業の今後について特集します。(調査日:2020年5月21日)

制限付きで店内飲食が再開

アメリカ国内での新型コロナウイルス感染者数は150万人を超え、死者数は9万人に上ります。各州政府は経済活動を徐々に再開させる段階に入っており、5月21日時点で38の州が、店内飲食を部分的に再開済み、あるいは近日中に再開する予定となっています。再開の方法は州ごとに異なりますが、例えば、店内の収容率は25%まで、テーブル間は6フィート(約1.8メートル)空ける、1グループ6人まで、事前予約が必要などのルールが各州政府によって定められています。(※1)
一方で、店内飲食が再開されたとしても、感染リスクを考える消費者心理から、飲食店の営業が新型コロナウイルス以前の水準にまで戻るためには更なる時間が必要になると予想されます。市場調査会社シビックサイエンス(CivicScience)が消費者を対象に実施した調査によると、「外出禁止令が解除された後、気楽に外食ができるようになるにはどれくらいの期間がかかるか」という質問に対し、41%が1〜5ヶ月と回答しています。39%が1ヶ月以内と回答していますが、20%は6ヶ月以上と回答しています。(※2)
今回のように前例のない出来事が起きた場合、飲食店を経営する上では消費者行動を理解することが不可欠であり、タコ・ベル(Taco Bell)のCEO、マーク・キング(Mark King)氏は、今後飲食店側は「安全」にサービスを提供することが最も重要で、その安全性を消費者に伝えていかなければならないと述べています(※3)今やアメリカでは、感染拡大を防止するために日常生活において、ソーシャル・ディスタンシングを守る(相手との距離を6フィート空ける)、マスクを着用することが新たな常識となっています。感染拡大防止策を取ることが標準となる中で、飲食店としては消費者に安心して利用してもらい、売上を増加させるためには、店舗の空間作りからメニュー内容、テイクアウト方法に至るまで、ビジネスモデルの再考が必要になるでしょう。

予想される外食産業の変化

新型コロナウイルスの影響により、今後アメリカの外食産業はどのように変化すると予想されているのでしょうか。ここでは次の3点を取り上げます。

1.安全なデリバリーおよびテイクアウトの継続
3月下旬以降、多くの州政府が店内飲食を禁止したことを受け、飲食店は経営を維持するためにデリバリーおよびテイクアウトにシフトせざるを得ませんでした。初めてドライブスルーやカーブサイドピックアップを導入した飲食店も多くあります。また、できるだけ接触を避けるため、注文と支払いをオンラインで済ませる、コンタクトレス化も進んでいます。店内飲食の再開後も、店内での飲食を好まない消費者も安心して利用できるようなデリバリー、テイクアウトシステムを継続させていくことが必要となるでしょう。(※4)

2.テクノロジーを利用したコンタクトレス化
店内飲食において、事前予約や順番待ちシステムをオンラインで行うことにより、客が混雑した店内で待つことを避けることができます。テーブルに着いた後は、スマートフォンからQRコード等をスキャンすることにより、メニューの閲覧と注文をすることが可能です。また、飲食後もスマートフォンで支払いができます。このようにすることで、メニュー表の使い回しや、現金・クレジットカードの受け渡しなどを避けることができ、最低限の接触で済むようになります。(※5)

3.新たなメニューの導入
外出禁止令によって営業が制限される中、飲食店は、食料品を販売したり、メニューにファミリー・ミール(4〜6人向けの料理)やミール・キット(食材セット)を加えたりと、これまでとは違う形でサービスを提供するようになりました。ミール・キットはこの4月から大手チェーン店でも導入が増加し、例えばタコ・ベルは6人分のタコスが作れる食材セットを25ドルで販売しています。この流れは今後も継続すると考えられていて、感染拡大が終了した後も、さらに新しい形でのサービスが定着するようになると予想されます。例えばケータリングでは、大勢でシェアして食べる料理よりも、分量を少なくして1人分ずつの料理に変更するなど、安全性と消費者の新しい需要を満たすためのメニュー開発を進める飲食店も出てきています。(※6)

リーマンショックによる外食産業への影響

アメリカ労働省の発表によると、今年4月の失業率は14.7%で、統計が開始された1948年以降最悪の水準となりました。失業者数は2,310万人(前月比1,590万人増)に上ります(但し、恒久解雇ではなく一時解雇が90%を占める)。飲食サービス部門における就業者数は3月から550万人減少となりました。(※7)
現在の景気後退は新型コロナウイルスの感染拡大という公衆衛生問題を要因としており、経済的要因によって引き起こされた2008年のリーマンショックとは性質が異なるため、一概に両者の状況を比較することはできません。しかし、経済の再開に時間を要し景気後退が長引くこととなれば、リーマンショック時の状況が、今後の経済的な影響を考察する上で参考になるのかもしれません。
今後の経済への影響を現時点で予測することは難しいですが、リーマンショックによる食産業への影響について少し触れてみたいと思います。アメリカ農務省の発表によると、全世帯の食費支出は2006年から2009年で7,260億米ドルから6,900億米ドル(実質値)に下落しました。特に、外食費に対する支出の減少幅が大きく、2006年から2009年で11.5%下落しています。同期間におけるフルサービスの飲食店の売上は4.5%減、ファーストフードなどの限定的なサービスを提供する飲食店の売上は2.6%減となりました。一方、家庭での食事に対する売上は1.3%の下落と減少幅が少なくなっており、消費者が外食を抑えていたことがわかります。(※8)一方で、不況をきっかけに成長した食ビジネスもあります。例えば、フードトラックです。当時、失業したシェフが、新たに飲食店を開店するよりも低いコストでビジネスを始めることができるフードトラックに着目し、ソーシャルメディアの力も相まって、近年のアメリカにおけるフードトラック・ブームのきっかけが生まれたのです。(※9)

新型コロナウイルスの影響が長期化し、アメリカの外食産業の完全な復活に時間がかかる中で、ファミリー・ミールやミール・キットの他にも、消費者が安心できかつ利便性が高いメニューやアイディアが生まれ、外食産業の新たなトレンドとなってくるのかもしれません。

(参考資料)
※1
https://www.eater.com/21264229/where-restaurants-reopened-across-the-u-s

※2
https://civicscience.com/comfort-leaving-lockdown-will-vary-by-age-income-and-choice-of-activity/

※3
https://www.nrn.com/quick-service/taco-bell-ceo-mark-king-covid-19-crisis-accelerating-future

※4
https://modernrestaurantmanagement.com/adapting-post-covid-whats-changing-for-restaurants/

※5
https://www.fsrmagazine.com/expert-takes/3-ways-restaurants-will-adapt-post-covid-world

※6
https://www.nrn.com/consumer-trends/groceries-virtual-cooking-classes-and-more-restaurant-menu-innovations-could-be-here

※7
https://www.bls.gov/news.release/empsit.nr0.htm

※8
https://www.ers.usda.gov/amber-waves/2011/september/food-spending/#sidebar

※9
https://prestigefoodtrucks.com/2020/03/history-of-food-trucks-and-how-theyve-shaped-america/

 

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