増粘多糖類の
基礎知識と効果
〜製パン〜
本コラムではパン作りに関わる方のために、製パンでよく用いられる増粘多糖類の基礎知識と効果を解説します。酵素や乳化剤に比べて知名度は高くないかもしれませんが、優れた保水効果や食感の付与など様々な効果が期待できます。多くの種類があり使い分けが難しそうな増粘多糖類ですが、その特徴を理解すれば目的の物性・食感のパンを作ることが可能です。
増粘多糖類を「増粘剤」と「ゲル化剤」に分け、前回は増粘剤の効果について解説しました。今回はゲル化剤の効果について解説します。ぜひご覧ください。
増粘多糖類は糖が鎖状につながった物質(ポリマー)で、食品開発には欠かせない素材です。用途としては、液体の増粘やゲル化、品質の改良や安定、食感の付与など多岐にわたっています。増粘多糖類の中でも、単独でゲル化するものを「ゲル化剤」、単独でゲル化しないものを「増粘剤」と本コラム内では分類し、特にゲル化剤について製パンにおける効果を検証していきます。
増粘多糖類の
基礎知識と効果
〜製パン〜
ゲル化剤と増粘剤は、製パンに与える効果が異なってきます。前回の「パン作りにおける増粘多糖類の効果とは?~増粘剤編~」の試験方法と同様に、ゲル化剤を対紛0.5%添加したパンを作製し、官能評価の結果とボリュームの観察結果をまとめました。
ペクチンは果物や野菜の皮から抽出されゲル化剤で、ジャムなどによく使用されます。酸性帯での安定性が高く、フレーバーリリースが良いのが特徴です。
製パンにおいて、ペクチンはグルテンネットワークと作用し、パンをふんわりとボリュームアップさせることが可能です。また増粘多糖類特有の保水性により生地にしっとり感を与えることができるほか、くちどけが良いのもペクチンの特徴です。さらにフレーバーリリースも良いため、素材の味を活かしたアレンジパンなどにも最適です。グラフからも、ペクチンはバランスの良い素材であることがわかります。増粘多糖類の中では、アルギン酸エステルやHPMC(後述)に次いでボリュームが出やすい部類に入ります。
アルギン酸エステルは海藻類に含まれる増粘多糖類です。その種類は多く、食品のほか化粧品や医薬品など様々な場面で活用されています。パン生地改良剤としても認知度が高いのではないでしょうか。
アルギン酸エステルを製パンに使用することで、歯切れの改善や高いボリュームアップ効果が得られます。一方生地がパサつきやすくなります。ボリュームアップに関しては、HPMC(後述)と同程度の効果が期待できます。
カラギナンも海藻類に含まれる増粘多糖類です。構造の違い(硫酸基の割合)により、カッパー・イオタ・ラムダに種類分けされます。それぞれ特性が異なり、増粘やゲル化など幅広い用途で使用されます。
製パンに使用することで、食感面ではアルギン酸エステルに近い傾向を示します。アルギン酸エステルのように生地がパサつかずに歯切れの良さとふんわり感を得られますが、アルギン酸エステルほどボリュームアップはしません。バランスの良い生地改良剤として、他の増粘多糖類と併用されることが多い素材です。
HPMCは、木のパルプから抽出される増粘多糖類です。低温時に液体で、高温時にゲル化・増粘する珍しい特性(熱ゲル化能)を持っています。また、乳化作用があり保水性に長けています。比較的新規性の高い素材で、製パンにおいて優れた効果を発揮します。高温時の粘性の違いなどから様々な番手があり、今回は特に粘性の低いHPMCをご紹介します。
HPMC(低粘度)を製パンに使用することで、グラフのように歯切れやふんわり感、しっとり感を改善することができます。一方生地内層はやや粗く、膜厚に仕上がります。また熱ゲル化能により、焼成時にグルテン骨格を補強するため、高いボリュームアップ効果が期待できます。ボリュームアップ効果はアルギン酸エステルと同程度になります。
製パンにおいて、ゲル化剤はふんわり感や歯切れ、ボリュームアップに効果を発揮する傾向がありました。一方、「パン作りにおける増粘多糖類の効果とは?~増粘剤編~」でご紹介したように、増粘剤は食感の付与やしっとり感の付与(=乾燥抑制)に効果を発揮する傾向があります。これらの効果を組み合わせることで、求める食感・物性のパンを作ることが可能です。弊社では長年の増粘多糖類の知識を活かし、様々な課題に対応した生地改良剤を取り扱っております。下記リンクにて生地改良剤をご紹介していますので、ぜひご覧ください。
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基礎知識と効果
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