データから見る完全栄養食市場のこれから 「完全栄養食」のさらなる普及のために打破すべき壁とは

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近年注目を集める完全栄養食。「コスパ」、「ウェルパ」、「タイパ」が叫ばれる忙しい世の中において手軽に様々な栄養素を摂取できる完全栄養食は、現代人にとって便利な存在です。パン、クッキー、粉末飲料、カレーライスなど様々な種類の完全食が、コンビニやスーパーで販売されています。市場として盛り上がっているように見えますが、今後どのように発展していくのでしょうか。完全栄養食市場のこれからについて見ていきます。

完全栄養食とは

完全栄養食を謳って販売される商品は、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」や「栄養素等表示基準値」などの基準をもとに1日に 必要な栄養素を1/3以上含む、もしくはカロリー当たりの配合量が基準値を上回り、全般的な栄養摂取や 完全栄養であることを訴求した加工食品になります。大きく、1/3日基準型とカロリーベース型に分けられます。1/3日基準型は1食分の置き換えを主とし、1食換算の栄養素が1日に必要な栄養素の1/3となるように設計されている商品です。カロリーベース型はエネルギー(kcal)に対して栄養素の充足を謳っている商品(2,200kcalを1 日分の基準とした場合、220kcalの商品であれば各栄養素を10%以上含む設計)です。
主なメーカーの完全栄養食の定義は下記になります。

・日清食品株式会社(インスタント、スムージー、冷凍食品): カロリーベース型
見た目やおいしさはそのままに、カロリーや塩分、糖質、脂質、たんぱく質などがコントロールされ、日本人の食事摂取基準で設定された必要な33種類の栄養素をバランスよく全て摂取できる食事です。
・ベースフード株式会社 (パン、麺、クッキー) : 1/3日基準型 
1食で、栄養素等表示基準値に基づき、他の食事で過剰 摂取が懸念される、脂質・飽和脂肪酸・炭水化物・ナトリウムを除いて、すべての栄養素で1日分の基準値の1/3以上を含むみます。
・株式会社COMP(粉末、バー、グミ) : カロリーベース型
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」を参考に、三大栄養素(たんぱく質・炭水化物・脂質)とビタミン・ミネラルをバランス良く含んだ栄養モデルです。

完全栄養食の市場規模と今後の見込み

出典 : 株式会社富士経済 調べ

完全栄養食の市場規模ですが、富士経済の調査によると2019年には10億円程度の規模でしたが、2024年には約300億円に達すると見込まれています 1)。さらには、2030年には546億円までに成長すると予測されています 2)
国内市場は日清食品株式会社とベースフード株式会社の2社が引っ張っています。2022年の国内市場は約140億円ですが、日清食品株式会社が30億円 3)、ベースフード株式会社55.4億円 4)と2社合計でシェアの60%を占めています。

更なる普及に向けての課題-喫食経験とイメージ

徐々に世の中に根付き始めた完全栄養食ですが、更なる定着に向けて課題となる要因はなにがあるのでしょうか。ここでは消費者の意識調査を基に、その課題を見ていきます。

①喫食経験

出典 : 日本インフォーメーション株式会社 調べ

2024年3月に日本インフォーメーション株式会社が実施した調査 5)によると、完全栄養食の認知率は62.4%、喫食・飲用経験率は19.4%になります。男女年代別にみると、男性の10代、20代では喫食・飲用経験率が30%を超えるのに対し、女性10代と20代は18.1%と17.9%。女性50代では7.0%という値となっています。女性の各年代の喫食・飲用経験率はいずれも全体の平均値の19.4%に届いておりません。これは、料理をする頻度や自炊に対する意識の違いが、完全栄養食を口に運ぼうとする意欲の差につながっているのかもしれません。

②イメージ

上記と同様の日本インフォーメーション株式会社の調査では、完全栄養食のイメージについても集計しています。完全栄養食を知っているとした方の内、46.8%がバランスよく栄養が取れる、37.2%が栄養が豊富、26.1%が手軽とポジティブな回答をしています。一方で、23.6%が価格が高い、18.3%が人工的、11.7%がおいしくない、10.6%が原料がよく分からない、9.9%が何となく不安を感じるとネガティブな回答をしています。栄養面や手軽さが評価される一方で、価格や様々な栄養素が含むように設計されていることで生じるブラックボックスの要素に、心配が生じることが伺えます。今後の更なる拡大のためには、価格設定とともに製造面に関する情報開示や発信も重要と考えられます。


出典 : 日本インフォーメーション株式会社 調べ

まとめ

今回は完全栄養食市場のこれからについて見てきました。さらなる発展が期待されるとともに、価格やイメージ面でネガティブな印象を受ける人が一定数いることが明らかになりました。こうした消費者の評価を受けて、今後各社がどのように商品を展開していくか注目です。

参考文献
1)第24039号サプリメントや健康性を訴求する食品・飲料(H・Bフーズ)の国内市場を総括
https://www.fuji-keizai.co.jp/press/detail.html?cid=24039&la=ja
2)第23010号完全栄養食の国内市場は 546 億円(2030 年予測)
https://www.fuji-keizai.co.jp/press/detail.html?cid=23010
3) 日清食品株式会社2023年度 通期決算報告 https://www.nissin.com/jp/ir/library/financialresults/pdf/kes_2403_4q_01.pdf
4) ベースフード株式会社 2024年度2⽉期 通期決算説明資料
https://ssl4.eir-parts.net/doc/2936/tdnet/2421760/00.pdf
5) ~食のトレンドが消費行動に与える影響は?~代替食・完全栄養食に関する意識調査 https://www.n-info.co.jp/report/0060

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