多糖類の疎水性

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多糖類とはグルコース等の単糖がいくつも連なった物質の総称です。デンプン、寒天、ペクチン、キサンタンガム、カラギナン等が多糖類に分類されます。多糖類は水に溶かすことが大前提ですので親水性の素材ですが、一方で乳化用途でも利用されています。そこで今回は多糖類の「疎水性」をテーマにお話しします。

単糖の疎水性

多糖類には疎水性があると言われてイメージが湧くでしょうか?多糖類に詳しい方はメチルセルロースを思い浮かべるかもしれません。あるいは親水性であるはずの多糖類が疎水性をもつという相反する事実に困惑する方もいるかもしれません。

多糖類には基本骨格である単糖由来のヒドロキシ基(OH基)が多く存在するので、水分子に対して親和性があります。一方で上記ヒドロキシ基や糖の環状構造中の酸素は分子内や分子間で水素結合を形成します。

図1の様に椅子型配座で表した場合、α-D-グルコースとβ-D-グルコースは赤色のヒドロキシ基の結合している向きが異なります。α-D-グルコースは環状構造の垂直な向きに位置するのに対して、β-D-グルコースは環状構造と同じ平面に位置します。ゆえにα-D-グルコースに比べてβ-D-グルコースは環状構造の面側(図1では上下方向)は疎水的な性質を持つようになります。また、図2にグルコース以外の単糖の構造を示しました(図2は単糖の一例です)。

図2の5種類の単糖を比較した場合、疎水性が強い順にフコース>キシロース>マンノース>グルコース>ガラクトースとなります。これらの単糖はヒドロキシ基の向きが異なったりヒドロキシ基が脱離したりという程度ですが、疎水性の強さがわずかながら異なってきます。

多糖類の疎水性

さらに単糖だけでなく多糖類においても疎水性を示す場合があります。アミロースはD-グルコースがα-1, 4結合している多糖類で、らせん構造を形成します(図3)。らせん構造の外側(図3の青色)にヒドロキシ基が向くため親水的な性質を示し、内側(図3の赤色)は疎水的な性質を示します。皆さんも一度は耳にしたことのあるヨウ素デンプン反応にはこのメカニズムが関与していると言われています。デンプンの構成成分であるアミロースがらせん構造を形成し、その内側に疎水性分子であるヨウ素が取り込まれることによって呈色します。

D-グルコースがβ-1, 4結合しているセルロースの場合は、グルコースが交互に反対の向きで結合するためシート状の高次構造を形成します(図4)。この時、隣接するグルコースのヒドロキシ基間あるいはヒドロキシ基と環状構造中の酸素原子との間で水素結合を形成することによって親水性は弱くなり疎水性が強くなります。さらにシート構造同士の疎水的な結合によりセルロース分子は凝集し強固な繊維質となります。

このように多糖類は単糖の規則的な配列により高次構造を形成することから、単糖に比べてより疎水性が強くなる可能性が考えられます。

官能基による疎水性化

また、単糖のヒドロキシ基に注目してきましたが官能基の種類によっても疎水性を示すことができます。例えば、メチルセルロースや高メチルエステル化ペクチン(HMペクチン)が該当します。メチルセルロースはヒドロキシ基の一部がメチル化されていることで疎水性を示します(図5の赤枠)。HMペクチンはガラクツロン酸のカルボキシル基の一部がメチルエステル化されていることで疎水性を示します(図5の赤枠)。

ここまで疎水性について述べてきましたが油脂や炭化水素系の分子と比べると多糖類の疎水性ははるかに弱いことに注意する必要があります。したがって、油脂同士を混ぜたり有機溶媒に油脂を混ぜたりすることは出来ても多糖類ではそうはいきません。しかしながら、わずかに疎水性を示すおかげで乳化物を作製できたり、タンパク質に作用したりすることができます。
「疎水性」の要因は様々なので今回ご紹介したものがすべてではありません。また条件次第で疎水性の働きは大きく変わりますので、用途にあった条件の選定が大事になります。

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