昨今のコロナ禍における外食機会の減少や、フードロス削減の観点から、冷凍食品の需要が拡大しています。冷凍は調理済み食品の冷凍による調理の簡便化であったり、微生物の活動を抑制できたりすることから、食品の保存期間を大きく伸ばせるといったメリットがあります。一方で、組織が崩壊し食感が悪くなる、水分が抜けて硬い食感になる等、品質が低下しやすいというデメリットもあります。本コラムでは冷凍による品質低下の要因と、それを抑制する増粘多糖類の活用方法についてご紹介します。
「冷凍解凍によって卵焼きの食感がボソボソする」
「野菜から離水が生じる」
「うどんが冷凍焼け等で硬くなってしまう」等
冷凍という操作は食品へダメージを与えます。
冷凍によるダメージは主に、氷結晶生成による組織の崩壊や昇華によるところが大きいです。特に、氷結晶生成は食感へ与える影響が大きくなります。
・氷結晶生成
氷結晶の生成は水の動きやすさの影響を受けます。食品成分中にしっかりと取り込まれた(結合した)水は凍りにくくなり、逆に、自由に動ける水は凍りやすく氷結晶が生成しやすくなります。氷結晶は周りの組織を破壊しながら大きく成長していきます。これを解凍すると、水を抱える組織が破壊されていることから、水が抜けてしまい、食感を維持できなくなってしまいます。
・昇華
また、昇華により食品から水分が抜けてしまうため、食感がパサついたり固くなったりといった現象が起こります。
この様に、冷凍は大きなメリットがありますが、上記ダメージへの対策が必須となります。
冷凍による食品へのダメージを軽減する方法の一つとして、増粘多糖類の使用が挙げられます。例えば、冷凍パン生地などでは、増粘多糖類が良く使われます。増粘多糖類が水の動きを抑制することで氷結晶の生成が抑制され、グルテンへのダメージを抑えることで、冷凍保存後にもしっかりと膨らむパンができるようになります。
このように、増粘多糖類は水との親和性が高いため、多くの水分子を抱え込みます。これにより、水分子の動きを抑制することができ、氷結晶の生成が抑制されます。
一方で増粘多糖類は粘性を発現することから、使用量が増えると作業性が悪くなったり、好ましくない食感になったりするため注意が必要です。また、種類によって増粘多糖類自体に冷凍耐性があるものとないものがあるので、増粘多糖類の選び方にも注意が必要です。下記に冷凍耐性のある増粘多糖類を列挙しました。
・キサンタンガム
・ネイティブジェランガム
・グァーガム
・λ-カラギナン
・トレメルガム
※冷凍耐性は条件によって変わりますので、こちらはあくまで目安としてお考え下さい
※トレメルガムは食品添加物ではなく「食品素材」に分類されます
トレメルガムは水分子の動きを抑制できるだけでなく粘性が低いため、食感への影響を抑えつつ冷凍による食品へのダメージを軽減することができます。実際の効果についてはこちらからご覧ください。
一方で、寒天やカッパカラギナン、脱アシル型ジェランガムなどは冷凍解凍によりその力価が大きく低下してしまいます。使用する際には注意が必要になります。
冷凍食品に増粘多糖類を添加することで、品質やおいしさが向上することが可能です。ぜひ商品開発にお役立てください。
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